第15話「また、となりにいてくれる?」
夢の中、小さな手がもうひとつの手を握っていた。
「約束だよ。来世も、また一緒に生まれようね。」
「うん。……ずっと一緒だよ。」
その光景は、暗い病室の中だった。
二人の子どもが寄り添い、窓の外に夜空を見上げている。
星が流れる。願いをこめて、手をぎゅっと握った。
そして――
「さようなら、兄さん……。」
「夢を見るんです。何度も。手を握ってくれる、誰かの夢。」
放課後、屋上に佇んでいたのは、2年生の白瀬 結花。
儚げな雰囲気の、どこか距離を置くような女の子。
「声は聞こえるのに、顔が思い出せなくて。でも、何かをずっと探している気がして……。」
俺は、夢で見た光景を思い出していた。
結花はその中で、病室のベッドにいた。
そして隣には、手を握る少年――“兄”がいた。
「その夢、最後どうなる?」
「……お別れ、なんです。“また会える”って言ってたけど、ずっと、探しても、会えなくて……。」
「たぶん、君の“兄さん”は、今も君を探してる。」
結花は驚いた顔をした。
「“兄さん”……?」
「うん。夢の中で、君の隣にいたのは、双子の兄だったよ。君が先に逝って、彼は“また一緒に”って願ったまま、人生を終えたんだ。」
「……兄さん……。」
「最近、変なことがあるんです。」
そう話してくれたのは、1年生の男子、白瀬 柊真。
明るく、フレンドリーな性格で、誰にでも優しいけれど、どこかぽっかり空いたような寂しさを抱えていた。
「“もう一人の自分がいた気がする”って、ずっと思ってて。
……名前は出てこない。でも、手を握る夢をよく見るんです。夜空を見ながら、何かを誓ってて……。」
俺は確信した。
彼が、結花の“兄”だ。
でも、柊真は気づいていない。結花の存在も、夢の意味も。
「ちょっと、会ってみない? “お互いに似た夢を見てる”子がいるんだ。」
そう言って、俺は二人を引き合わせた。
屋上で再会した二人は、初めて言葉を交わした。
「……白瀬、って、同じ苗字なんだね。」
「うん、偶然だけど、なんか不思議な感じ。」
言葉は少しずつ、途切れながら重なっていった。
夢の話、夜空の話、手を握っていた話。
そして気づいた。
「……君が……。」
「……君、なの?」
沈黙。
でも、その瞬間、柊真は結花の手を取った。
その手は、ぴったりと重なっていた。
「また、会えた。」
「うん……また、となりにいてくれる?」
二人は笑った。
今度は、どちらかが先にいなくなることのないように。
加瀬透、高校生。
今回は、“再会を誓った双子”が、ようやくその約束を叶える手伝いをしました。
願いは、届く。
願い続ければ、きっと。
感想、レビュー、ブクマ、評価、待ってます!