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9. 魔力循環のすすめ

 グループ分けの話もあらかた終わって、今後の方針などの話をしていると、鐘の音が鳴った。授業時間の始まりだ。みんな雑談をやめて、それぞれの席に着く。 


「きょうからみんなに基礎魔術を教えることになった、コイシカワ・ミサキです。みんなよろしくね。」


 扉を開けて教室に入ってきたのは若い女性の先生だ。灰色がかったローブを着ている。


「魔法系の授業では座学、実習を問わず、ローブを着ることになっていますので着替えてください。はい、急いでね。みんなもう持ってると思うけど、もしまだなら次の授業までに購買で購入しておいてくださいね。」


 ああ、購買思い出した。そういえば昨日の割符の換金をしないといけないんだった。お昼休みにでも行って済ませよう。


 そんなことを考えながら、みんなに少し遅れて廊下に並べてある個人ロッカーに急ぐ。この個人ロッカーに防具やローブなどの荷物をしまってあるのだ。


 この魔法使いのローブ、魔力が増えるとか魔法が使いやすくなるとか、特にそういう特殊な機能はない、ただの布の服だ。単純に魔法の授業ではローブを着る『しきたり』になっているというだけのことだ。


 こうして全員が色とりどりのローブを着て集まっているところを見ると、魔法の勉強をしているっていう気になってくる。見た目から入るっていうのも案外アリなのかもしれない。


 俺のローブは白だ、清純な俺にぴったりの色だろう。ローブには様々な色があって自由に選べるのだ。俺が白いローブを着ていると、なんだかテルテル坊主になった気がしないでもない。もしかしたら天気魔法が使えるようになるかもしれない。


 全員が着替え終わって席につくころ、ミサキ先生は何やら星印が丸で囲まれたような絵が描かれた紙を配り始めた。何だろう、魔法の印か何かかな。


「今配ったのは魔法陣といって、魔力が流れた光るようになっています。これを光らせることが今日の課題です。」


 ミサキ先生は説明を続ける。


「魔法を使うのには魔力が必要で、その魔力を鍛えるためには体の中の魔力を感じ取って、それを循環させることが大切です。この紙を手に取りながら魔力を循環させると紙が光るので、正しく魔力循環できているかどうかが判別できます。」


 おお、魔力が見えなくても魔力循環できているかどうかがわかるのか。それはかなり便利だ。どうやらかなり最近になって発明されたらしい。


「入学試験のときにみなさんに魔力があることは確認済みです。でも例え魔力があっても魔力循環ができなければ、魔法が使えるようになりません。それに魔力が少ないとすぐに息切れしますので、しっかり鍛えておく必要がありますよ。」


 魔力はどんな感じがするものなのか、どうすればそれが動き出して循環するのかなどを口で説明しながら、ミサキ先生は魔法陣の紙を手にしながらゆっくりと魔力循環を始めた。


 紙が淡く光りはじめる。


 循環させる魔力の量は速度を徐々に増やしていくと、光もそれに合わせてだんだん強くなっていく。


 循環させている魔力量の判別もできるのか。これは優れものだな。


「それじゃ、各自でやってみてね。最初はゆっくり、あとから少しづつ強くしていく感じで。」


 そこかしこから淡い光が漏れている。よし俺も挑戦だ。最初は弱くゆっくりとだな。

 

 ピカッ!!


「ぐわぁ! 目がぁ、目がぁぁっ!」


 魔法陣の紙はすさまじい閃光を上げると、灰のようになって消えてしまった。


「ちゃんと弱くゆっくりしたのにぃ。目がぁ、目がぁぁっ……。」


 それでもかなり強すぎたようだ。


 アキコとハルコの双子が、俺と、あと俺の後ろの席で運悪く事故に巻き込まれたスケヨシの目を回復魔法で癒してくれた。見た目だけでなく実力も癒し系というのは素晴らしいものだ。まさに眼福だ、目も治ったし。


 ミサキ先生がきて、もう一枚紙を渡してくれた。


「ああ、キミがホソカワ・エイタくんね。魔力を絞って絞りまくって、もうこれ以上は小さくならないって思ったら、もう一度試してみて。魔力循環が強いのは良いことだけど、細かい制御ができた方が、幅が広がるからね。」

「わかりました、やってみます。」


 さらに小さくするのか、かなり難しそうだぞ。


「半分くらいがまだ出来てないかな。そうね、出来た子は出来てない子に助言してあげてくれるかな。教えることも勉強になるからね。」


 グループの仲間を見てみると、女子では、アキコ&ハルコの双子は当然として、三つ編みスレンダーなスバルも弱いながらうまく光っているようだ。男子ではキイチロウがきれいに光っている。


 あとはボルボか。一瞬強く光るんだけど、すぐ消えてしまってまったく継続していない。こいつは何をやっているんだ? ちょっと聞いてみるか。


「ボルボはなんですぐ消えるの? 流せるけど上手く回せない感じ?」

「いや、少し動かすだけで体がばらばらになりそうなぐらい痛くてな。一瞬気を失ってるんだと思う。たぶんそれで止まってる。」


 よく見ると脂汗をながしている。気を失っているのに続けているの? 何という根性だ。


「ん~、痛みが激しい子がいるみたいね。魔力循環には痛みや苦しみは必ずあるものだけど、痛みの強さには個人差があるかな。慣れてくれば我慢できるようになるから頑張るしかないわね。」


 頑張れと心の中で応援しつつ、俺は俺で小さく小さくゆっくりゆっくり魔力を循環する練習だ。まだ小さくできるな、もう少し、うん、このぐらいが最小じゃないかな。よし、試してみよう。


 ピカッ!


 先ほどよりは弱かったが、やはり閃光を上げて紙は灰になってしまった。

 

「あああ! 目がぁ、目がぁぁっ!」


 え? 後ろの席のスケヨシがまた事故を起こしていた。なんで俺の魔法陣見つめてるのよ。


 その後も挑戦を続けて、三枚目の魔法陣でやっと灰にならないぐらいの量で魔力循環できるようになった。あとはこのまばゆいばかりの光が薄暗くなるまで練習するだけだ。


「全員、次の授業までに出来るようになってくること。出来ない子には先生が無理やり外から魔力循環させるから期待しててね! たぶんあまりの痛みに漏らしちゃうことになるから、下着の着替えも忘れないでね。」


 クラス全員の前でお漏らしさせられるなんて、なんと恐ろしい話だ。


「出来るようになった子も、魔力循環は出来るだけ毎日つづけるようにね。」


 こうして魔法騎士学園の最初の授業は終わった。



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