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猪突猛進!豚魔法 ~デブでブサイクだけど、最強めざして突っ走ります!~  作者: 大沙かんな
余裕綽々!豚魔力編

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休憩:男女混合五人組の挑戦

 自分たちを救ってくれた級友たち十人組が魔法騎士になったと聞いたとき、そのあまりの眩しい所業にあてられてしまって目標を失いかけていたものの、男女混合組の五人はすでに立ち直っていた。


 その最速記録にはもう追いつくことはできない。しかしレベルならば追いつくことは可能なのだ。それに同じ年に生まれた者として、恥ずかしい結果だけは残すことはできない。絶対に魔法騎士にならねばならない。それも彼らに次ぐ早さで。


 彼ら十人以前の最速記録を調べたところ、十年ほど前に二回生に上がると同時に魔法騎士になった天才剣士がいたことがわかった。この記録が新たな目標だ。この記録を追い越すことで、彼らに肩を並べるとまでは言わないまでも、友として共に立つことが出来るのだ。五人の魂は熱く燃えていた。


 目を閉じれば、今でもあの戦いの光景がはっきりと浮かんでくる。敵を惑わせるような華麗な武技の数々、そして戦いを決定づける一瞬の集中力。現代に現れた英雄譚、それを間近に見ることができた幸福。


「具体的に決めよう。まずは月ごとの目標レベルだ。」

「最初は上がりやすいから、単純な月割りじゃダメだよね。」

「特に最初は上がりやすいっていうし、計算じゃ難しいな。」


 計算の問題だけではなく、トサーとの戦闘のおかげで五人のレベルは大きく上がっている。そのため普通に目標を計算するだけでは、四月の目標は簡単に達成できてしまう。


「俺、計算は苦手だけれど、一つだけ絶対にやりとげたいことがある。」

「マサシ、それは何なの?」

「トサー、レベル十以上のトサーの完全撃破だ。」


 ヨコヅナは特殊すぎて二度と出会うことは出来ないだろう。しかし普通のトサーとなら戦うことが出来るはずだ。トサーのレベルは七から十程度。それならレベル十のトサーを完璧に倒してから次に進みたい。それがマサシの思いだった。


「つまり四月の目標はレベル十ね!」

「それとトサー撃破な!」

「くぅ~~~、燃えてきたぜ!」


 五人全員の気持ちが一つになっていく。


 今月はレベル十以上、それ以降は夏休み明けまでは毎月三レベル、その後は毎月二レベル上げていくことに決めた。かなり大胆な目標設定だ。


「カズヒロ、鎧の修理はどうなの?」

「明日の夜には仕上げてくれるそうだ。明後日のダンジョンには間に合うよ。」


 明日からは十人組にならって、早朝に五人合同での練習も始める。一緒に鍛錬することで、お互いの得意なことや苦手なこと、癖などをしっかり把握して、グループでの連携に結びつけるためだ。



 一週間ぶりのダンジョン、すでにグループ全員がレベル五以上になっており、三人がレベル七に到達している。適性レベルを考えると妖獣アキータということになるが、五人は少々格下の妖獣キシューを狩ることにした。


「俺たちはレベルだけは上がったけれど、まだシバーとしか戦ってないからな。」

「そうですね、今日は実戦の経験値を上げましょう。」


 彼らは燃えてはいたものの、ただ突っ走るだけの馬鹿ではなく、堅実であった。


 その日の午前中はかなりバタバタしたものの、午後にはかなり安定するようになってきた。そしてその日の狩りを終了する間際、一人だけレベル五と出遅れていたミキのレベルが上がった。


「ミキ、おめでとう!」

「ありがとう、みんな!」


「連携もかなり良くなってきたかな?」

「俺、薙刀の間合いにまだ慣れ切ってないわ。」

「早朝練習で、当たらない距離で向かい合って素振りするのはどうかな?」

「おお、それ良さそうだ、頼むぜ!」


 レベルも上がり、士気も高い。これで明日は憂いを残さずにアキータに挑戦できるだろう。



 翌日、キシューの領域を抜けてアキータに挑戦した五人は、かなり苦戦を強いられていた。やはり剣と薙刀の間合いの違いから、うまく立ち位置が調整できないのだ。そしてその隙を妖獣に突かれるような形で、グループを引っ搔き回されてしまう。


 数回の戦闘の後、グループで話し合いが行われる。


「どうする? キシューに戻るか?」

「いや、このままアキータと戦おう。鎧のお陰で無傷だし、距離感は同格と戦いながら調整したほうがいい。」


 基本的には剣士が薙刀に近づきすぎることが問題なので、そこを調整するのは第一には剣士の役目になる。


「前衛と後衛の組み合わせを変えてみる?」

「いや、まだ安全な今、しっかり合わせて置きたい。」

「それもそうね、わかったわ。」


 戦いごとに反省点を出し合い、調整を繰り返していく。


「後ろから二匹!」

「とどめて置いて。」

「了解。」


 しっかり声を掛け合う。どういう状況でどう動くか、それが頭の中だけでなく、実戦の中で決まっていく。


 その日は連携が上手く取れないままだったが、翌日にはかなりマシになり、そして四日目の午前中にはしっかりと連携が取れるようになってきた。そして五人全員がレベル八まで上がっていた。

 

「次はトサーだね。あと半日だけど、行くよね?」

「当然!」

「望むところよ。」


 相手するのはまだ低レベルのトサーだが、五人にとっては特別な意味を持つ妖獣だ。全員に気合が入る。


「その前に、ちょっと深呼吸しましょうか。みんな固くなり過ぎよ?」

「ははは、ついつい力が入っちゃうね。」


 深呼吸して体を軽くほぐした後、五人は再度ダンジョンの中に入っていく。



 同じレベル七とはいっても、妖獣トサーは妖獣アキータよりも大きく、力強く、そして素早かった。そして頭も良かった。


 その狡猾な動作に、しっかり固めたはずの連携がいとも簡単にくずされていく。陽動や見せかけの行動に、いとも簡単にひっかかってしまう五人。まったく速度は違うものの、その姿はヨコヅナを彷彿とさせるものだった。


「くそ、当たらねえっ!」

「抜かれた! 後ろ、頼む!」

「きゃあっ! こ、こいつっ!」

「突っ込まないで、一度引いて!」


 なんとか偶然に一匹を仕留めることができたものの、ほとんどまともに戦うことはできず、五人はひとまずアキータのところに戻ることになってしまった。


「ちびヨコヅナってとこだな、あれは」

「オオゼキ、は言いすぎだし、セキトリってところかしら。」

「連携を強化して、来週は絶対に倒そう!」

「ええ、そうね。」

「絶対そうしようね!」



 そして翌週、しっかりと連携の練習を積んで迎えたセキトリ、つまりトサーレベル七との再戦だ。


 しかし世の中、そううまくは行かない。彼らが出会ったのはレベル七ではなく、レベル八のトサーだった。


 ひるむグループの仲間をマサシが鼓舞する。


「行くぞ! 相手にとって不足なし!」


 戦いを挑む五人組だが、やはり少し腰が引けているのか、敵をうまくさばくことができない。


 トサーと同格の妖獣はまだ他にもいる。別にトサーを倒さなくても、レベルを上げることは可能なのだ。ここで負けたら、仲間たちはトサーに挑む気持ちをなくしてしまうかも知れない。そしてもう二度とトサーに挑むことができなくなるかも知れないのだ。


「振るな、突け!」


 練習で繰り返した突きの動作を忘れ、剣を、薙刀を振り回す仲間たちに、マサシは大声で呼びかける。


「あの戦いを思い出せ! 噛まれても死なない、突くんだ!」


 仲間の士気が戻って来ない。


 俺たちはここまでなのか? この程度だったのか?


 マサシはふう~っと一つ大きく息を吐くと、剣を青眼に構えなおし、レベル八のトサーに向き直った。腹は決まった。


 ただ、まっすぐ突いて出る。


 そのことである。


 そして敵の真正面からのその突きは、見事にトサーの喉を突き破った。



 その戦いの後、徐々に仲間たちの動きも精彩さを取り戻してきた。マサシの一撃がヨコヅナの呪縛ごと敵を突き破ったのである。


 そしてその週、個人の動きだけでなく、連携も向上し、レベル九のヨコヅナを三匹同時に倒せるまでになっていた。レベルも大きく上がり、シノブがレベル九、他の四人はレベル十まで成長することができたのだ。


 あとは四月の最終週、目標は全員のレベル十到達、そしてレベル十のトサー討伐だ!



ここまでのレベル


エンドウ・ミキ Lv.10

オカモト・エリカ Lv.10

ヤナギハラ・シノブ Lv.9

マサキ・マサシ Lv.10

アンドウ・カズヒロ Lv.10


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