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猪突猛進!豚魔法 ~デブでブサイクだけど、最強めざして突っ走ります!~  作者: 大沙かんな
威風堂堂!豚魔術編

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2-39. 目指す未来

 トノサマの正体は解体場のおっちゃんにもわからないらしい。もしかすると完全な新種で、正式名称がトノサマになる可能性もあるそうだ。


「トリカエルーとか、そんな感じでしたけどね。」

「それじゃ、そっちにしとくか?」


 妖獣の名付け方は、かなり適当みたいね。


「しかし、こいつは立派な巨体だな。バラしてみたいが、出来ないのが残念だ。」

「なにか解体しちゃだめな理由でもあるんですか?」

「新種かも知れないだろう? こういうのは領主さまのお買い上げで研究室行きだ。先にバラすとかなりドヤされるぞ。」


 珍しい妖獣なので、解体される前に領主のおっちゃんが強制的に買い取って、いろいろ調べるってことか。ちなみにヨコヅナも領主のおっちゃんが買い取ったらしい。


「それって買い取りの価格はどれくらいになるんですか?」

「正直なところ、わからんな。今までの例からすると、それほど高くないぞ。」


 それは残念だな。首を一発で切り落としているので、とても綺麗な状態なのだ。普通に肉になるなら期待できたのに。とはいっても、モアーを大量に狩ったので売り上げの合計はかなり期待できる。


 モアーの数はもう少しというところで百羽に届かなかった。最初に狩った二羽が含まれているので、あの集団戦では九十六羽も狩ったことになる。これだけの群れはさすがに普通ではないらしく、おそらくトノサマの影響なのだろう。


 トノサマは俺の超加速に楽々とついてきただけでなく、それを上回りさえした。おそらくは超加速の能力を持っていたのだろう。妖獣の中にはそういうやつがいてもおかしくないそうだ。


 最近問題になっていた、ダンジョン内の怪しい動きの元凶はトノサマかも知れない、というような話も出てきていた。俺はヨコヅナのせいだと思い込んでいたけれど、たかがレベル十や二十の妖獣の話じゃないと笑われた。


 それもそうか。ヨコヅナの周りではそれほど大きな問題は起きていなかったけれど、トノサマはモアーを百羽近くの大群にするぐらいの影響力だったわけだし、その流れでヨコヅナが押し出されてきたと考える方が妥当だ。


 まあ、トノサマも何かもっと強いやつの影響で出てきたのかも知れないけどね。それが判明するかどうかは今後の状況次第というやつだ。



「モアーってかなりの高級肉だよね。どんな味なのかな?」

「少し売らずに食べてみる?」

「たくさんあるしね、そうしてみようか。」


 これだけ大量だと、数羽ぐらい取り置いたところで売り上げもそんなに変わらないだろう。


「この大きさだから、二人で一羽ってことで良いかしら?」

「寮なのに、そんなに大量に持って帰ってどうするんだよ。」

「こんな大きなもの、とても食べきれないよ。」


 もしかしたら同じ寮生でも、女子組は男子組には無い、これを簡単に料理して食べる技でも持っているのかな?


「馬鹿ねえ、そんなはずないでしょ?」

「寮の食堂に差し入れして、同じ寮のみんなにも食べてもらうのよ。」

「ええ? なんであいつらに……。」

「まあ、いらないなら私が貰うけどね。」

「いや、いるけど、あいつらにかぁ、なんか負けた気がする……」


 おすそ分けはしておいた方が良いぞ。うちも近所の人たちにするしな、母さんが、だけども。



 解体場で割符も貰い、取り置き分の配達もお願いした。あとはもう帰るだけだ。まだ時間はあるけれど、さすがに今日はお腹いっぱいだからね。


「みんな体は大丈夫そう?」

「私は大丈夫かな、昨日の状態に戻った感じ。」


 マコちゃんは一歩後退ってところだね。酷くないようなら問題ないと思う。


「俺も、今日の分が無くなって昨日に戻った感じだ。」

「まあ、そんな感じだね。」


 みんなもそんな感じなのか。どうやら大きな影響はなくてよかった。


「エイタはどうなんだ? 大丈夫なのか?」

「俺? ピンピンして……あっ!」

「ど、どうした!」

「……便所行ってくる!」


 超加速の使い過ぎで(もよお)してきてしまった。


 恥ずかしい……。



「エイタはいったいどこに向かっているんだろうね。」

「ん? トイレだろ?」

「そういう話じゃなくて……。」

「大か小かって話? そりゃ大だろ、大盛り弁当をあれだけ食ってたんだから。」

「キイチロウは平和だねぇ。」


 まだ魔法騎士学園に入学して三週間しかたっていないというのに、すでに憧れだった魔法騎士になり、そしてレベル三十どころか、倍近いレベルにまで成長した。もう伝説と言ってもいい。


 誰から見ても完全な成功者だ。普通に考えれば、ここで終わりにして薔薇色の人生を歩んでもいいはずだ。常識的にはそうすべきだと思う。でも、もしもその道を選んだとすれば、なぜか世間から馬鹿にされ、蔑まれる未来しか見えてこない。なんだか化かされている気分だ。


 途中下車が許されない、片道切符の馬車に飛び乗ってしまった気分だ。いったいぜんたい、どこまで連れていかれてしまうのだろうか。


「行けるところまで行く気なんじゃないの? あのデブは。」

「行けるところ、ねえ……。」


 いっそ上限を迎えて脱落した方が、すっきりするのかも知れない。


「もう少しついていってみるかな。」


 誰にともなくつぶやいたその言葉は、仲間全員の思いを代表するのかも知れない。


これにて第二章は終了です。

駄文をお読みいただき、誠にありがとうございます。もしもよろしければ評価をいただければ幸いです。

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