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猪突猛進!豚魔法 ~デブでブサイクだけど、最強めざして突っ走ります!~  作者: 大沙かんな
威風堂堂!豚魔術編

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2-32. 気合と根性

 俺は騎士団長に魔法騎士団の拠点に連れていかれ、特製の補修材で鎧の修理をしてもらった。


 鎧には防御の魔法が掛けられているので、針が通らないため修理することは困難だ。しかしこの補修材なら簡単だ。ぺたぺたと貼り付けるだけで穴は塞がり、千切れた部分も繋げることができるのだ。


 この補修材、見た目はただの革の切れ端なのだけれど、めちゃくちゃ高価なものらしい。今回は俺の鎧を壊したのが騎士団長だったので、騎士団の経費で修理できたけれど、自分でやるとなるとちょっと恐ろしい値段になりそうだ。


 まあ何とかなって良かった。



 練習場のみんなの所に戻ると、いつもの謎運動大会だったけれど、どうも体のキレが悪いように見える。聞いてみると相互魔力循環のやりすぎで体が痛むのだとか。


「気合入ってるなぁ。」

「相互だと二倍どころじゃ済まない効率なんだろ? それならやるしかないじゃないか。」


 その通りだ。最初の頃は二人で流せば魔力二倍で効率二倍、それぐらいに簡単に考えていたんだけれど、まったくそれどころの話ではないのだ。


 それともう一つ、ちょっと思ったことがある。


「もしかしたらだけど、楽しく魔力循環したら、痛くなくて楽しいのかも知れない。」

「エイタ、お前何言ってるの?」

「いや、本気なんだって。」


 マコちゃんは相互魔力循環を苦しいと思っていたはずだ。それがキサと、そしてルードラたちとの魔力循環大合戦を経たことで、痛みもなく、楽しく魔力循環できるようになった気がするのだ。


「ああ、そう言われてみれば、そうかも知れないわ。」


 ほら、本人もそう言っているでしょ。


「魔法の呪文を唱える時、心の中で思い描くことが大切だっていうのがある。それなら魔力循環にだってそういうのがあっても不思議じゃないでしょ?」


 表面魔力にだって、似たような感じはある。もっと踏ん張ろう!と思えば踏ん張れるし、飛ばされる!と思えば簡単に吹き飛ばされてしまう。だから空中を自由に動き回るには、ある程度、心の思いと体の動きを分離して、独立した状態で扱うような感じが必要になるのだ。


「よし、やってみるか! わははははははははは! 痛っ! 痛っ!」


 ユウジ、お前「わははは」って喋っているだけで、まったく笑ってないぞ?


「いきなり笑うのは無理だからな、まず形からだ。わはははははは! 痛っ! 痛っ!」

「よし、俺もやるぞ! わはははははは! 痛っ! 痛っ!」

「俺もだ! わはははははははは! 痛っ! 痛っ!」


 こいつらアホだ……。


 練習場が笑っているっぽい声でうるさくなってしまった。言わなきゃ良かったのかも知れない。



「えっと、言っとかないとダメなことがあるんだけど……、明日と明後日の午後の自由時間、俺はダンジョン行くけど、みんなはどうする?」

「ああ、やっぱり言ったね?」

「くそー、普通にそっちで良かったのかぁ!」


 あれ? 何か反応がおかしいぞ?


「エイタはそう言いだすんじゃないかと思って、みんなで賭けをしてたのよ。」

「俺がダンジョンに行くか、それとも行かないか?」

「いやダンジョンには行くだろうけど、一人で黙って行く可能性もあるってユウジが言い出して。」


 ああ、そういうことね。さすがに黙って行くなんてことは無いよ。


「で、どうする?」

「全員、行くに決まってるでしょ!」


 俺がみんなと別れた後、一体どんな相手と何をしてくるのかが話題になったそうだ。


「ショウ先生が斬れるなら斬って良い、って言ったんだから、相手は私たちよりもレベルがかなり上の魔法騎士ってことね。それならエイタは戻って来るなり、明日ダンジョンに行く、って言いだすと思うわ。」


 イスズの超頭脳による完璧予想で、全員の中で俺のダンジョン行は決定事項になったんだとか。


「それもあって気合いれてたってわけだ。」


 団長のオッサンには逆らうことになるけれど、やっぱりまだしばらくは、こいつらと一緒に進んでいこう。



 話の流れで、話題は俺が魔法騎士団長とやり合った話にうつっていった。


「ヨコヅナって、多分レベルが十ぐらい上だったよな? それよりはるかに上って……いったいレベルいくつだって話だよ。」

「レベル五十は軽く越えていそうね。」

「剣聖のレベル四十越え伝説って、いったいなんだったのかしら。」


 本当に良くわからない話だ。誰かが誤ってポロっと話してしまえば、それが噂として広まるはずだから、本当に誰もしゃべっていないのだろう。魔法騎士にだって我がままな人がいるはずなのに、どうしてそこまで統制できるのだろうか。


「それにしても、スパっとやられたなあ。綺麗な太刀筋だ。」

「レベルだけじゃなくて、腕もかなり上だと思うよ。」


 俺の鎧の修理跡を見て、剣術上級組が感想を漏らす。


「それだけ斬られて何ともないなんて、そっちの方が異常よね。」

「ああ、団長も驚いてたよ。」

「回生起死。」


 それって順番が逆じゃない? え? 逆でもいいの?


「俺ら上級なのに呼ばれてないってのが悔しいわ。」

「エーたんのなにが違うんだろう。」

「柔らかさ、かなぁ。」


 柔らかいって、それ、どういうことなの? 俺の剣ってどうしようもない『ぽよよん剣』なんだけど。


「普通の剣は、鋭くしなやか、とか、そういうのだろ?」

「柔らかいって、関節の動きとか?」


 わからないのは俺だけじゃなさそうだ。


「言ってる俺にもよくわかってない。ただ何かそう感じるだけだ。」

「ユウジにもわかってないのかよ……」


 そもそも、団長はどこで俺のことを知ったのだろうか。もしかしたら俺のぽよよん剣をどこかで見たりしたのだろうか。


「レベルだけじゃなく、技も、そしてそれを見抜く目も、養う必要があるってことかしら。」

「魔力もそうね。エイタが言う『見える』というのが、自分の魔力で相手の魔力を推し量っているのだとしたら、私たちにだって出来るようになるかも知れないし。」


 確かに。これは物心つく前から魔力循環に親しんでいるうちに身についた力だ。この力が自分だけの物だとは思えない。誰だって鍛えれば出来るようになるのかも知れない。


 なんといってもキサにだってルーシーたちは見えているのだ。



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