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猪突猛進!豚魔法 ~デブでブサイクだけど、最強めざして突っ走ります!~  作者: 大沙かんな
威風堂堂!豚魔術編

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2-24. 精霊のいる生活

<ぐおおおおおおぉぉぉぉぉおおおおっ!>

<むはっむはっむはっむはっ! くっふぅ!>

<どべべべべべべっ、どべえへっ!>


 補講が始まり、魔力循環しながら謎運動をしているのだけれど、ルーシーが思った以上に楽しんでいる。魔力の激流の中でぐちゃぐちゃにかき回されるのがお好みのようだ。


<きゃはははは、面白い、面白い、エイタもっと!>

<きょええええぇぇぇええよおおおおぉぉぉ!>


「エーたん、なんでニヤニヤ笑ってるの?」

「あ、いや、精霊さんと友達になってね。マコちゃんには見えない?」


 マコちゃんだけでなく、他の誰にも見えないようだ。


「……心労が(たた)ったんじゃないかなぁ。」

「エイタ、あなた疲れてるのよ、少し休んだほうがいいわ。」


 違う、そうじゃない……。



 学園では変なヤツ扱いになったが、家に帰ると少し状況は異なってくる。


「お兄ちゃんお帰り~って、なんで光ってるの?」

「お! キサには見えるのか?」

「なんか光ってるのが飛んでる? なになに?」


 魔力循環をほったらかしにして、飛んで逃げるルーシーを追いかけ始めた。<


<おおおおお! ボクが見えるの? おおおおおおー!>

「あれ、なんだろ、何か聞こえる?」


 ルーシーの言葉はちゃんと聞こえないのかな。


「その娘は精霊のルーシーだよ。学園で友達になったんだ。」

「精霊! すごい! こんにちはルーシー。私はキサだよ。」

<こんにちはキサ、ボクはルーシー。>


 聞こえてはいるみたいだけれど、やっぱりうまく聞き取れないらしい。


「キサにはまだ、お話するのは無理かな。」

「ええ! お話もできるの?」

<そりゃあもう。ボクはなんだって出来るからねっ!>


 魔法循環しながら通訳してやると、キサもルーシーもご機嫌になった。


「ルーシーは魔法循環してもらうのが大好きなんだよね。」

「おおー、キサと一緒だ!」

<ボクの仲間!>


 俺に合わせて、キサも魔法循環を始める。ルーシーはさらにご機嫌だ。


<きゃっきゃっきゃっ、キサも面白い!面白い!>

「ルーシーが喜んでるよ。キサもしっかり魔力を鍛えたら、お話できるようになるかもね。」

「えー、本当? よし、頑張る!」


 キサがガリガリと魔力を循環させはじめた。妹のこんなに全力での魔力循環を見るのは初めてだ。


<きゃおおおおお~っ! きゃあおおおっ! 面白い! 面白い!>

「何か楽しそう? 喜んでる?」

「うん、楽しそうだね。」


 言葉の意味は聞き取れなくても、気持ちはなんとなく伝わっているようだ。


 マコちゃんもやって来て、玄関先で魔力循環バトルが始まった。ルーシーはマコちゃんの参戦でさらに楽しそうだ。マコちゃんもそんなルーシーの存在を、魔力でなんとなく感じ取れたのだろう。


「精霊さんって、本当にいたんだ……。」


 信じて貰えていなかったらしい。


 この大魔力での魔力循環合戦は、さすがに今のマコちゃんには厳しすぎる。マコちゃんの固まった魔力を俺の魔力で強く覆って、崩れないように守るようにしてみる。


 周囲からの強い圧力と俺の防御が合わさって、すごい勢いで固まった魔力に浸透していくのがわかった。そしてみるみるうちにマコちゃんの魔力が溶けていく。


 なんじゃこりゃ。合体技のせいなのか、それとも魔力で覆ったのが良かったのか、あれだけ凝り固まっていたものが、もうどこにも跡形もなくなっている。


 バトルのほうはキサが無双状態で、マコちゃんではまったく歯が立たなかった。



 いつまでも玄関でこうしているわけにもいかない。俺はキサとルーシーをぶら下げながら居間に入った。おお、今日は父さんも家にいるな。


「ただいま。この娘は精霊のルーシー、学園で友達になったんだ。」

<ボクはルーシーだよ、よろしくね!>


 両親にルーシーを紹介したんだけれど、残念ながら二人には見えないようだ。俺だけでなくキサにも見えたので少し期待していたのだろう、ルーシーはとても悲しそうだ。


 ここで、母さんは一味違った。


「あらあら、ご丁寧なあいさつありがとう。私は二人の母親でヤワラよ、ルーシーちゃん、よろしくね。」


 まったく見えてないだろし、聞こえてもいないだろうに、しっかりルーシーに挨拶してくれたのだ。


「私はガンテツ、よろしく。私には姿を見ることができないようで、申し訳ない。」


 それをすぐに真似できる父さんも一味違う。


「ルーシーちゃんもご飯食べるでしょ?」

<ご飯! ボクも食べるう!>


 さて、どうしようかしら、などと言っている母さんと一緒に台所に入り、ルーシーに丁度良さそうな食器を見繕う。


「丁度良さそうなのは、そうね、おちょこを裏返しにしてお茶碗にして、爪楊枝で突きさすのはどうかしら。」


 大きさを比べてみると、ぴったりとはいかないまでも、何とかなりそうな感じだ。この人、本当に見えてないのか?


<ボク、ご飯食べるの初めて!>

「へえ、ルーシーはご飯は初めてなのか。」


 ご機嫌な様子で、上手に米粒を爪楊枝で突き刺しては口に運んでいる。


「ルーシーちゃん、お腹空いてるでしょ? いっぱいしっかり食べなさいね。」


 母さんは少し心配そうな顔だ。


<ボク、食べるの好きっ!>


 ルーシーによれば、精霊は何も食べなくても問題ないらしいが、楽しく食事ができるならそれに越したことはないよね。


 今日の夕飯は、ルーシーだけでなく、帰る機会を失ったマコちゃんも一緒だった。



 食事の後のお風呂は、非常に残念ながら帰る機会を取り戻したマコちゃんがいなくなったので、俺とキサ、そしてルーシーの三人になった。


 相変わらずキサとルーシーは魔力循環ごっこで遊んでいる。遊んでないで、ちゃんとお風呂につかりなさいと注意しても、まったく聞く耳持たずだ。お風呂からあがったあとも魔力循環ごっこは続き、挙句の果てに疲れ果てて一緒に眠ってしまった。二人ともよっぽど楽しかったんだろう。


 翌朝の練習の時も、そして学園に登校する時間になっても、二人は起きてこなかった。仕方ないので、そのままスヤスヤ寝かせたままで学園に行くことにした。



 学園から戻ってくると、二人まとめた突撃攻撃を食らった。


「お兄ちゃん、お帰り~!」

<エイタ、ボクを置いていくなんてひどい!>

「いや、二人とも良く寝てたし。」


 起こすのも良くないと思ったんだけど、起こしたほうが良かったのかな?


 魔力循環してやると、それに合わせてキサも魔力循環を始めたので、頭を撫でてやる。


 そこで俺は気づいた。あれ? ルーシーも魔力循環してる?


「ルーシーも魔力循環できたんだねぇ。」


 ルーシーの頭も人差し指の先で撫でてやる。


<むふーぅ! ボクは何でもできるからねっ!>

「昨日一緒にお布団の中で練習したんだよ!」

<今夜も戦いだよ!>


 これは明日の朝も寝ているんじゃないかな? 置いていってもいいけれど、一応聞いておこう。


「ルーシー明日はどうする? 一緒に学園に行く?」

<行くよ~っ! キサとも一緒にいるっ!>

「何言ってるの、キサと一緒なら学園には来れないぞ?」


 お昼ごろに学園まで一人で飛んでくるのかな? そう思って見ていると、ルーシーの体がボールのように膨らみ始めた。


<てーいっ!><てーいっ!>


 そして掛け声とともに、彼女の体が二つに分かれたのだ。


「おお! ルーシーが二人に増えた!」

「ああ! 本当だ! すごいすごい!」

<へっへーん、ボクは何でもできるからね!><ボクって天才だから!>


 二人に別れたけれど、どっちの名前もルーシーらしい。記憶や思考なんかも共有しているそうだ。どういう仕組みになっているのか良くわからないけれど、本人がそう言っているのだからそうなのだろう。


「見た目がそっくりで区別ができないな。」

<区別って必要なの? ボクはどっちもボクだよ?>


「区別が出来た方が便利なんだよ。」

<変なの~、でもわかった!>


 ルーシーのうちの一人が<てーい!>と掛け声をかけると、今まで肩までだった金髪が腰まで伸び、綺麗な縦ロールの髪型に変わっていく。


「おお! すごい! 変身だ!」

<ふへへへー、ボクって天才だからね!><ボクは何でもできるよ!>


 変身してないほうのルーシーまで偉そうに胸をはっている。まあ、どっちも同じルーシーだからそれでいいのか。


「呼び方も変えたいなぁ。」

<呼び方? ルーシーはルーシーだよ?><ボクはルーシーだよ?>

「ルーシーはキサとお留守番、ルーシは俺と学校ね、って言ったら、どっちのルーシーがどうするのか、わかりにくくない?」

<おお、呼び方!><呼び方、必要!>


 わかってくれたようだ。


「呼び方かぁ、可愛い名前がいいよね?」

<可愛いの!><可愛いの!>


「ルーシー二号っていうのはどうだろう。」

<可愛いくない!><可愛いくない!>

「お兄ちゃん、それぜんぜん可愛くない。」


 ダメだしされた。


 いろいろ案を出してお伺いを立てたところ、ルードラという名前に決まった。


<ルードラ!><ルーシー!>

「うん、ルードラ、可愛いね! ルーシーも可愛いね!」


 魔力循環合戦の参加者は、ルードラも増えて五人になった。


 こうしてルーシーは二人に別れ、元祖ルーシーはキサと一緒、そしてルーシー二号こと縦ロールのルードラは俺と一緒に学園に行くことになった。



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