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6. 学園とダンジョンと

 もっといろいろ話をしたかったのだが、入口の扉がガラッと開いて、誰かが教室に入ってきた。


「よーしそこまで、席について静かにしろよ? 俺がお前らイモどもの担任のオオナカ・ショウ、一応これでも騎士だ。」


 思いおもいに雑談していた生徒たちが一斉に口を閉ざして、空いている場所に座る。


「うん、とても良い傾向だな。説明を無視したら怪我どころか死ぬこともあるからな。今からは一切口を閉ざして俺の説明に耳を傾けろ。質問があれば説明のあとにしろ。」


 よし、その説明とやらを聞こうじゃないか。


 学園は週のうち三日出席、四日休みという週休四日制になっているそうだ。四日間遊んでいるのも良し、自分で自分を鍛えるのも良し。自分でどうするか決めろ、そういう考え方に基づいている。今日は入学式なので特別、明日から三日出て四日休む、この繰り返しになる。


 学園内では武器および魔法が免許される。つまり武器の携行や使用、魔法の使用や練習が許可されている。これらを積極的に活用して、鍛錬を積み重ねることが推奨されている。


 ただし爆発系の魔法や弓射など、危険な行為は結界の張られた練習場で行う必要がある。まあそれはそうだろう。


 鍛えるための施設として、武技練習場や魔法練習場がいくつも用意されており、休日でも自由に使って鍛錬することができるそうだ。武技練習場ではその場に集まった者同士で練習試合が積極的におこなわれており、また魔法練習場には攻撃用の的などの施設が用意されている。


 怪我をしたときの治療のために、学園には回復魔法が使える治癒師が複数詰めているほか、そういった練習場にはまわりに被害を与えないように結界が張られており、安全性が保たれているのだ。



 学園の必修科目には、歴史、地理のような座学の他、基礎体術、基礎魔術のような実習科目があるが、それほど多くはない。選択科目は年間一つ、五年で五つ以上の単位を取れば卒業できる。そのため卒業自体はそれほど難しくはない。大切なのは結局、自分が何をするか、そのことだ。


 一日の授業は午前中は必修で二枠、午後は選択で二枠だが、午後の二枠は連続して行うので、時間が二倍の一枠のようなものだ。週三日なので一週間単位で行動すると考えて、選択科目は三つまでにとどめるのが普通だ。


 放課後にも二枠ほどは時間がとれる。自己鍛錬に当てるもよし、クラブ活動をするもよし、自由にしてよい。


 武技の選択科目には剣術、槍術、体術、弓術などがあり、それぞれ、初級、中級、上級、超級と、低ランクから高ランクまで用意されている。これらの武技は卒業までに必ず一つ取らなければいけない決まりがある。


 魔法には、呪術、妖術、神聖術、精霊術などがあり、武技と同様に初級、中級、上級、超級のランクに別れている。


 呪術とか妖術とか言われると、なんだかとても怪しい気がするし、神聖術なんてどんな崇高な術なのかと思ったが、呪術は単に呪文で火や水などの魔法を使う術、妖術は魔法陣などの道具で魔法を使ったり、その道具をつくったりする術で、特に怪しい物じゃないみたいだ。


 神聖術も特に崇高で近寄りがたい術ということはなく、回復魔法や結界魔法など、神殿御用達の魔法をまとめて、神聖術とか神聖魔法とか呼んでいるということらしい。


 ランクは下から順番に上がっていく必要があり、初級剣術、中級剣術、上級剣術、というように一つのことを極めていくことができる。また、初級剣術、初級槍術、初級弓術、というように広く様々な技を身に着けることも可能だ。


 俺は道場で慣れている剣術の他に、神聖術、妖術、時空術、を選んでみた。一年で全部習得できるわけがないのだけれど、途中であきらめたり、違う授業に変更したりもできるみたいだし、気楽に決めてしまおう。


 マコちゃんは剣術、槍術、柔術の三つを選ぶようだ。魔法の系統は必修の基礎魔術の習得具合で考えるそうだ。同じ学校に通っていてもほとんど別の授業になってしまうね。ボルボは槍、弓、剣か。


 魔法騎士学園の授業には、これら以外にもう一つある。それはおそらく最も重要であり、魔法騎士学園を魔法騎士学園たらしめるものだ。


 魔法騎士になるためには、自分と同等かそれ以上の妖獣を討伐し、実戦を重ねてレベルを三十まで上げなければならない。そのためには効率よく妖獣と戦い、経験を積む必要がある。そのための場所に挑む授業、それが『ダンジョン実習』だ。



 町の南東の外れに一つの非常に大きな洞穴がある。『ダンジョン』と呼ばれる謎の洞穴だ。入口も大きければ、中もとてつもなく広い、そんな謎だらけの洞穴だ。


 ダンジョンは珍しいものではあるが、ここ以外にも世界各地で見つかっている。古くは妖巌洞などと呼ばれたその洞穴では、なぜなのかわからないが、まるで無限のように妖獣が湧いて出てくる。それも奥に行けば奥に行くほど高レベルの化け物が。


 それだけではない。この洞穴で湧いた妖獣は、なぜか洞穴から外に出てくることがない。いや、ここ以外のダンジョンでそういうことが起こったという記録があるが、ここでは今のところ起きたことはなかった。


 黄泉の世界への道だとか、別の世界につながる穴だとか、いろいろなことが言われているが、本当のところは誰にもわからない。誰も最奥に辿り着いたことはない謎の洞穴、それがダンジョンだ。


 普通、妖獣なんていうものは町や村の近くに大量にいるようなものではなく、辺境の深い森や、誰も登ることができないような高い山々に住んでいるものだ。それがなぜこんなところにいて、無限に湧きだすのだろうか。本当に不思議だとしか言いようがない。


 妖獣というのは魔力を持ち、強力な魔法を使う怪物のことで、きわめて危険な存在だ。そして同時に、倒すことができればレベル上昇という強い恩恵が得られる、そういう存在だ。


 ダンジョンに潜って妖獣を倒せば、レベルが上がって強くなれる、つまりそういうことだ。ここにダンジョンがあったからこそ、魔法騎士学園が作られ、神殿が建てられ、そして大きな町になったのだ。


 妖獣の肉はどれも普通に食べられるし、種類によっては高級食材として珍重される。皮はもちろん皮革の原料になる。妖獣には魔力があるからなのか、普通の動物の皮よりも丈夫で長持ちする。


 妖獣は無限に湧き出すので、牛や羊のように育てる手間もいらず、エサも必要としない。こいつらを狩ればそれなりに良い生活ができるのだ。


 またダンジョンの中では妖獣以外にも、魔宝石と呼ばれる魔力を含んだ宝石が採れることがある。そしてこれが非常に高値で取引されるのだ。


 ダンジョンは、魔法騎士学園の訓練場であり、町の食糧庫であり、一攫千金を狙える賭博場なのだ。


 ダンジョンは非常に危険な場所なので、入るためには神殿が発行する免許が必要だ。そして免許は特別な場合でもないかぎり、未成年には発行されることはない。その特別な場合というのが魔法騎士学園の生徒になることだ。


 魔法騎士学園の生徒であれば誰でも、ダンジョンの中に入って武器をふるい、魔法を駆使して、妖獣を討伐することができるのだ。



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