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猪突猛進!豚魔法 ~デブでブサイクだけど、最強めざして突っ走ります!~  作者: 大沙かんな
前途洋洋!豚魔法編

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32. 頼もしき仲間たち

※ かなり痛々しい表現があります。

 その後も何度かヨコヅナの体に傷をつけることには成功したが、まだ大きな痛手を与えるには至っていなかった。


 待てよ、傷から血を流している、それならばいけるかもしれない。俺は試しにヨコヅナに何発か魔法を撃ちこんでみた。お、嫌がっているぞ、少しは堪えていればいいんだが。


「エイタ、何をやった?」

「血抜きの浄化魔法を撃ちこんでやった。」


 手ごたえがないわけではないが、おそらくそんなに効いてはいないだろう。だが止まりかけていた血がまた大きく流れ始めている。流血を続けさせれば体力は少しづつでも落ちていくはずだ。決め手にはならないだろうが、積み上げていくぞ。


 だがそれを機会にして、ヨコヅナの動きが活発化した。大きく飛び回り、俺たちの連携を阻害し、蹂躙していく。マコちゃんが、そしてボルボが大きく吹き飛ばされた。


 俺はさらに前に出て、二人に回復魔法を投げる。幸いにして大きな怪我はなかったようで、二人ともすぐさま自力で立ち上がった。そんな安心した俺の目の片隅で、ヨコヅナの目が笑うように細められる。


 しまった、これ、誘いだされた?


 右前足を振り上げたヨコヅナが一瞬で目の前に現れた。これは逃げられない。下手に逃げると爪の餌食だ。


 ここは、前に出る!


 俺は前に出ながら浄化魔法を連射した。連射、連射、連射、連射!


 ヨコヅナはそんな俺の魔法を物ともせず、叩きつけようとしていた右前足を横に払った。左半身に衝撃が走る。意識が飛びそうだ。


 吹き飛ばされて転がる。上下左右がわからなくなる。起き上がろうとしたときにはもうヨコヅナは目の前だ。すでに前足を振り上げている。誰かが何かを叫んでいるのが聞こえる。俺は腰の短剣を抜いた。


「グガアアアアァァァァァアアアッ!」


 その前足は俺の体から少し逸れ、左腕のあたりに振り下ろされた。左手で短剣を握り、地面に立てるようにしてその足の下に入れてやる。


「ガアァァアッ!」


 短剣は完全にヨコヅナの右前足の裏に突き刺さって埋まった。俺の左半身はズタボロになったが、回復魔法の循環で治りかけている。


 しかしこいつ、なぜ俺を外した?


 見上げると、ヨコヅナの左眼に一本の矢が生えていた。


「お呼びじゃなかったかしら?」


 俺たちが振り返った先には、弓を持った美少女を先頭にした見慣れた五人組の姿があった。



「スバル、助かった!」


 俺は再び剣を取って立ち上がり、ヨコヅナの情報を簡単に共有する。第一班の五人はすぐに俺たちに混ざるようにして散開した。


 ヨコヅナは刺さった短剣に酷く堪えているようで、走り回るときも飛び上がる時も前足をかばっているのがよくわかる。これで今までよりは有利に戦えそうだ。


 仲間が合流して全体の厚みは増え、ヤツの機動力も奪った。とはいえ、まだ大打撃を与えるような攻撃力が得られたわけではない。


「しかしまあ、とんでもないのと戦ってるねぇ。」

「何か良い手ない?」


 軽口を叩くユウジに、軽口で良い案が無いか尋ねる。それに対してイスズが声をあげた。


「ちょっと思いついたけど、ヨコヅナはここまで噛みついてきていない。口の中を怪我しているのか、それとも誰かに刺されたことがあるのか、理由はわからないけれど。」


 その通りだ。シバーもキシューも噛みつき攻撃が多かった。だがこいつは前足で殴ったり爪をふるったりで、あまり口を開けようとはしていない。


「弱点の口を開けないから、正面から突いて倒すのも難しいわ。だから……、」


 イスズは続ける。


「後ろの穴をつっついてやりましょうか。」


 なんかお尻がヒュンってなった。学園最高の頭脳、怖い。


「了解した。そうか、前足を一本封じたから、後ろ蹴りの威力が大きく落ちているわけだな。」


 ボルボの理解が正しかったのだろう、イスズ大きく口角を上げた。ヨコヅナは怪我をさせられた怒りからか、尻尾を立てる時間が増えている。それも好都合だということだな。


「半分ひしゃげてても復活する姿を見せて貰ったことだし、あんまり怖いものはないよね。」

「さて、反撃と行きましょうか。」



 ヨコヅナは怒り狂っていた。傷を刺激してくる黒くて丸いヤツを仕留めたと思ったら、目を射抜かれて前足に大きな怪我を負わされた。その後も集団でチクチクと嫌な攻撃を続けてくる。


 たかがエサの分際で生意気なっ、こいつら全員食い殺してやる!


 特にあの黒くて丸いヤツだ。アイツは念入りに嚙み殺してやる!



 荒々しく暴れるヨコヅナを、マコちゃんとユウジが華麗な剣捌きで翻弄する。頭に血が上ったヨコヅナが、クワッと残された片目を大きく見開いたその時、


 バシュッ!


 ボルボの鬼の一突きがヨコヅナの臀部の中央に炸裂した。


「グワアアァァァァアオオッ!」


 叫び声をあげて振り返り、ボルボを襲おうとするヨコヅナ。しかしイスズがそれを許さない。


 ザシュッ!


 学園最高の頭脳が繰り出した突きが、ボルボがえぐった部分を再度、深々と刺し貫く。


「グガアッ、アッーーーーーー!」


 たまりかねて跳んで逃げるヨコヅナ。そこにハルコが追撃を入れようとするが、それは避けられた。しかしこれでかなりの痛手を負わせたはずだ。


 それでもまだヨコヅナの戦意は衰えていない。その片目は爛々と俺を睨みつけている。


 こいつは俺のことを狙っている。それが痛いほどによくわかる。俺はニヤっと笑いながら浄化魔法を連打する。もっと怒れ!怒って俺に噛みついてこい!


 俺は剣を青眼に構え、ヨコヅナを正面から睨みつけた。


「グオォォォッ!」


 ヨコヅナは一声吠えると、まるで足の痛みを忘れたような踏み込みで俺に向かって突進してきた。牙を突きたてたくてたまらないのだろう、俺の目の前で大きく口を開いた。鋭い牙の並んだ(あぎと)が俺に迫る。


 超加速。


 俺は自己強化を最大に循環させて一歩踏み込み、その口内を狙ってまっすぐに突きを放った。


 ぽよよ~~~ん!


 切っ先がヨコヅナの口蓋を突き破り、そのまま頭骨を貫く。


 俺はそのまま跳ね飛ばされ、洞窟の岩壁に叩きつけられていくのをゆっくりと感じていた。


 あ、これ、痛くないんだな。


 超加速の元で、痛みを感じる前にどんどん全快していくのが、とても不思議に思えた。



 俺は超加速を解いて立ち上がった。ヨコヅナは俺の剣を口から生やし、ピクピク痙攣しながら倒れている。


 俺はミキたちの魔獣結界を解き、全員をそばに呼んだ。気絶していたシノブも意識が戻っているようだ。急いでね? レベル上がらなくなるよ?


「それより、大丈夫なのかよ!」

「ああ、回復魔法のおかげでなんともないよ。」


 心配してくれるのは嬉しいけれど、それより早く集まってほしい。


 全員が集まってきたところで結界を張ると、ヨコヅナの死体から濃密な魔力の霧が湧きだして中を満たしていく。霧が濃すぎて跳ね返っているかどうかなどわからないが、俺の中に吸い込まれていくことだけはわかった。


「本当かどうかは知らないんだけど、倒した魔獣の近くにいたほうが、レベルが上がりやすいって話があるんだよね。まあ、おまじないみたいなものだね。」


 普通に狩っていればただのおまじないだろうけど、結界を張っていれば話は別だ。そこまで詳しくは話さないけど。


「ああ、そういうことか、呼ばれたから何事かと思ったよ。」

「眉唾な話だけど、たしかに聞いたことがあるわ。」


 マサシだけでなく、ミキたちも納得した様子だ。


「で、みんなどうだった?」


 聞いてはみたが、実は俺には全員のレベルが見えていたのだ。俺はこの中では最高のレベル十三まで上がっていたのだから。ヨコヅナのレベルが十三以上だったということでもある。


 俺以外はというと、マコちゃんとイスズがレベル十二、ボルボ、エイジ、スバルがレベル十一、残りの仲間がレベル十まで上がっていた。


 レベル十以上というと、一部の民衆からは『戦士』などと呼ばれるほどの高いレベルだ。学園に入学してまだ一週間もたっていないというのに、まさかこんなに早くレベル十以上になるとは思っていなかった。


 ミキたちのグループも、もとはレベル一からレベル二だったものが大きく上がっていて、マサシ、カズヒロの男子と気絶していたシノブはレベル七、エリカはレベル六、ミキはレベル五になっていた。


「何もできなかったのにレベルだけ上がるのか。」

「体張って仲間守ってたやつが、何もできなかったもくそもあるかよ。」


 マサシとカズヒロが青春の会話をしているのを、ちょっとうらやましく思う。


「最後の突き、あれ一体なんだよ。動き変だったぞ?」

「私はまた、ぺったんこにつぶれる作戦かと思ったわ。」

「豚剣術?」


 だってこっちはこんな会話だしね。


 折角倒したヨコヅナだけど、皮は傷だらけだし、腸が傷ついてて肉の買い取りも安くなりそうなのが悲しいところだ。


現在のレベル


ホソカワ・エイタ Lv.13

ツルギ・マコト Lv.12

オニガワラ・ボルボ Lv.11

マツダ・ユウジ Lv.11

ホンダ・キイチロウ Lv.10

トヨダ・スケヨシ Lv.10

タカナシ・スバル Lv.11

ヤマナ・イスズ Lv.12

ヒノ・アキコ Lv.10

ヒノ・ハルコ Lv.10


エンドウ・ミキ Lv.5

オカモト・エリカ Lv.6

ヤナギハラ・シノブ Lv.7

マサキ・マサシ Lv.7

アンドウ・カズヒロ Lv.7


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