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21. お買い物

 自主練習のために貸し切り練習場を確保してから購買の前まで行くと、すでに何人か集まっているのが見えた。


 キイチロウとイスズだな。こっちに気が付いたのか手を振っているのが見えたので俺も手を振り返した。


「呪術は合格者なしだったよ、時空術はどうだった? 次から中級?」

「いや、呪文を覚えるところからになったよ。」

「あらら、神聖魔法とは何かが違うのかな。」

「よくわからないんだよね、あ、ちょっと待ってて。」


 せっかくなので自己強化と回復の魔力循環をしながら、二人に回復と浄化をかけてみよう。かなりの集中が必要だけど、立ち止まっている時ならいけそうだ。


「あら、これ何?」

「回復と浄化。疲れただろうと思ってね。」

「おお、これいいな。ありがとうな。」


 そんな話をしているところに、徐々に全員が集まってきた。


 何事も練習だ。みんなにもやってみるか。声をかけながら一人づつ回復と浄化をかけて回る。


「弓はどんな感じだった?」

「呪術と同じく合格者は無しだったよ。とほほだ。」


 スケヨシは合格する気満々だったらしいのだが、もう少しだと言われてダメだったそうだ。


「残念ながら、柔術も合格者は無しね。そもそも初心者ばかりだったし。」


「また私を除いて全員合格じゃなくて良かったよ。」


 そうなっていたなら、さすがに泣いていいと思う。


「これから頑張ろうぜ!」

「全部合格なら、そもそも学園にくる意味ないもんね。」

「そうそう、それに目標はレベル三十、魔法騎士だ!」


「全員集まったことだし、そろそろ購買に入りましょうよ。」

「そうだね、そうしよう。」


 みんなで揃って購買の中に入っていく。


「初心者セットもあってお買い得ではあるんだけど、不要なものも入っているから、しっかりした物を必要な時に買ったほうが良いんだって。」


 イスズの言葉に他の寮生たちもうなづく。それは一理あるな、と俺も思う。


「武器は借りられるから不要として……、」

「学園からダンジョンまで持ち運ぶ用の袋は必要ね。」


「矢は?」

「私は上級になったから、学園支給が受けられるから買わなくてもいいわ。予備の弦も支給ね。」

「そんな制度があったのか、なら問題ないな。とすると短剣だな。」

「俺、折り畳みのやつ買ったわ。」


 昨日買った物が今もポケットに入っている。


「それも悪くはないけど、解体にも使うし、長く使うことになるから、予算があるなら良い物を買ったほうがいいわね。」

「予算次第かぁ。」


 かなり良さげな短剣の値段を見て、キイチロウが情けない声をだしている。


「ねえ、必須なものから決めたほうが良くない?」

「それもそうだ。んじゃ、まずはしっかりした大きめの背負い袋と、小さめの腰袋。破れて中身がこぼれたら最悪だし、できるだけしっかりした物がいい。体の大きさに合ってるやつね。」

「さんせ~い!」

「最悪でも、あとは折り畳みの短剣があればなんとかなるから、そこは妥協しないほうがいい。」


 先輩たちからのありがたい助言に従って、俺たちは背負い袋と小袋を選んだ。


 購買には粗悪品は置かれていないけれど、良さそうな物でも実際に背負ってみるとあまり良くないこともあるし、高ければ良いというものでもないらしい。あまり大きいと戦いのたびに地面に置くことになるので、その辺りも考慮する必要がある。


 俺はいろいろ試してみて、かなり大きめの物を選んだ。また腰につける革袋と、それ以外にも安い布の袋を数枚選ぶ。


「ボルボは思ったより小さ目のを買うんだな。」

「ああ。大きすぎると槍が当たって取り回しに問題が出るからな。」

「言われてみれば、そういう心配もあるのか。」


 女子はやはり小振りの物を購入するようだ。中でもスバルはかなり特殊な形のものを選んでいる。


「布の袋なんてどうするの?」

「背負い袋の中の荷物を小分けしておくと便利かと思ってね。切り開けばそれなりの大きさの布にもなるし。」


 俺の選ぶものを見て、スケヨシが不思議に思ったらしい。理由を聞いてくるので答えておく。


「あとはこの大きい麻袋を数枚。狩った獲物を入れる用ね。」

「それと、あとは短剣か。」

「水筒もね。」


 それだけでも結構な値段になりそうだった。


「あれ? エイタは折り畳み買ったって言ってなかった?」

「ああ、折り畳みは学園用にすることにしたんだ。」


 救急治療に必要なことがあるので、学園では短剣を持ち歩いているほうが良いし、背負い袋に入れておかないと持って行くのを忘れそうなので、もう一本買おうと思ったのだ。キイチロウも理由を聞いて納得していた。


 ふと横を見ると、ユウジが二本の短剣を並べて唸っている。


「どうしたの?」

「いざというときの予備武器にもなるから、少し大振りのやつにするか、それとも使い勝手のいい小振りのやつにするか。」

「両方?」

「それは無理。」

「学園で小太刀は借りられないの?」

「あ、その手があるか。」


 問題は解決したらしい。どうやら小振りの物を選んだようだ。


 スバルは矢筒をいくつか購入するようだ。


「背負う形の矢筒は持っているんだけど背中に袋を背負うから、腰につける矢筒が必要なのよ。あと予備の矢を入れて置くものも。」


 素早く取り出すには慣れが必要なので、腰の矢筒を使う練習も必要らしい。


「あっ!」


 スバルの話を聞いていたマコちゃんが声を上げた。


「剣帯……。」

「それだ!」


 みんな慌てて買いに行った。


 ふう、買い忘れなくて良かった。あとはグループ用だな。


「裁縫セットはあまり使い道がなくて、革を縫えるような太い針と糸のほうがいい。いくら丈夫な背負い袋でも穴が空くことはあるからね。」

「グループに一つでいいね。(あか)りは?」

提灯(ちょうちん)とろうそく、火つけ道具ね。それもグループでいいかな。」

「グループの道具を入れるのに布袋を買っておこうか。」

「ああ、それはいい考えかも。」


 その他にも細いロープなど、グループで必要になりそうなものを二つづつ選んでいく。


「とりあえず、これは俺が払っておくね。こないだのダンジョンでちょっと収入があったし。」

「おお、さすがに太い!太っ腹!」

「豚バラ。」


 それは微妙に違うというか、微妙にあっているというか。


 購入したグループ袋はユウジとイスズに渡して、量の先輩にチェックしてもらうように頼んでおいた。足りないものがあったら、また明日買いに来ることにしよう。



こんな作品を評価してくださる読者さまがいらっしゃることに、激しく感動し感謝しております。

ありがとうございます!


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