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3-24. お手上げ状態

 妖獣たちに蹴り飛ばされるのにも少し慣れてきた。と言っても上手くさばけるようになったわけではなく、単純にこの状況に心が慣れてきただけだ。


「きゃぁっ!」


<きゃははは~!>


 具体的に言えば、女の子の柔らかそうなものに頭を突っ込んでいるっぽいのはわかるんだけど、だからと言ってうまく避けることは無理ということだ。


「ぐおっ!」


<きゃははは~!>


 具体的に言えば、男子の臭そうなものだからって、避けたくても避けられないということだ。


 ルードラは楽しそうにはしゃいでいるけど、これは遊びじゃないからね?


 誰にとは言わず、目についた仲間にひたすら回復魔法をかけていく。鎧があるので斬撃は通らないが、衝撃は吸収しきれない。たとえ抜き身の薙刀にぶち当たったところで切れることはないが、激しい衝撃が打撲や骨折につながるのだ。


 どうやら妖獣たちは俺が張り、双子が強化した物理結界を壊すほどの力は持っていないようで、すぐに何とかしないといけない状況ではなさそうだ。とはいえ何度も結界の壁にぶつけられる衝撃自体はそんなに優しいものではなく、そのうち大きな怪我につながるだろう。


「アッーーー!」


 ああっ! キイチロウの股間にボルボの槍がっ! そんな悠長なことは言ってられない、これは早くなんとかしないと!


「エーたん、瞬間移動は?」

「やってみる!」


 俺は顔の上に乗ったマコちゃんのお尻をどけつつ、ダンジョンの外に瞬間移動の移動先を設定しようとした。


 むう、動いていちゃだめだ、移動先がまったく定まらなくて設定できない!


「止まってくれるまでは無理みたいだ。」


 どうやら長距離の瞬間移動は、こちらが大きく動き回っていると移動先が設定できないようだ。そういえば相手が動いている時も上手く使えなかったな。


 短距離の瞬間移動なら、おそらく問題なく使えるだろう。しかし、それでは仲間を連れて逃げることが難しい。


 一人で外に出て妖獣を殺しまくるか。この妖獣たち、まだ何かありそうで、結界から出るとグループから引き離されそうで怖い。


 それならいっそのこと、この結界の中から瞬間結界で外の妖獣を切りまくる方が良いかも知れない。よし、そうしよう。経験値も肉も何も手に入らなくなるけど、今はそんなことを言っている場合じゃないのだ。



「他に手はない?」

「ここから魔法で攻撃してみる!」


 俺は周囲が判断できる状態の時を狙って、この結界から離れたところに瞬間結界をどんどん出していく。


 スパッ! スパッ! スパッ! スパッ! スパッ!

 スパッ! スパッ! スパッ! スパッ! スパッ!


 大きめの結界なので、一発で数匹づつ血祭りになっていく。それでも妖獣の数が多すぎて、まったく減った気がしない。

 

 スパッ! スパッ! スパッ! スパッ! スパッ!

 スパッ! スパッ! スパッ! スパッ! スパッ!


<おお~~! すぱっ! すぱっ!>


 少しは足止めする効果があることを願って、地面の下に潜るように結界を出していく。

 

 スパッ! スパッ! スパッ! スパッ! スパッ!

 スパッ! スパッ! スパッ! スパッ! スパッ!


<すぱっ! すぱっ! すぱっ! すぱっ! 切れ~切れ~!>

 

 スパッ! スパッ! スパッ! スパッ! スパッ!

 スパッ! スパッ! スパッ! スパッ! スパッ!


<すぱっ! すぱっ! すぱっ! すぱっ! もっとやっちゃえ~!>


 いったい何匹切ったのかわからない。ルードラは大喜びだが、こんなことを続けていても、焼け石に水のようにしか思えなくなってきた。


 地面に埋めた結界は簡単に吹き飛ばされてしまうし、かなりの数を切り倒したはずなのに、妖獣はまったく減ったように思えない。それどころかむしろ増えているような気さえしてくる。


「おい! こいつら増えてないか!」


 いや、違うぞ。そうじゃない。


「違う、回復してるんだ!」


 そうだ、こいつら回復してやがる。


 大量の妖獣で視界が遮られていて良く見えないが、切られて倒れたはずの妖獣が、むくむくと起き上がって合流してくるのが、たしかに見えたのだ。


 やっぱり外に出て、確実に首を斬りまくるしかない。


 そう考えた矢先、俺たちの入った結界がさらに吹き飛ばされた。今までとは違った衝撃が伝わってくる。そして衝撃と同時に幾分かの浮遊感。


「キャーッ!」

「なっ!」


 大きく吹き飛ばされた?


 周りを見ると、妖獣たちも姿勢を乱しているようだ。何かもっと巨大な妖獣に吹き飛ばされたのか? それに落下している?


 ズガーーンッ!


 大きな衝撃とともに、結界の中に轟音が響き渡る。何かに激突したのだ。


 もしもその様子を遠くから観察している人がいたとしたら、こう言っただろう。『ダンジョンの床が抜けた』と。 



 俺たちの結界は何かにぶつかって止まったようだ。そしてその衝撃を受けても、結界自体は無事だった。仲間たちは怪我を負っているものの、みんな生きている。


 怪我人を治療しながら周囲を見回すと、妖獣たちが結界の周りにひしめき、もがいている。そして中には動きを止めてしまうものもいる。そして霧の魔力が周囲から結界の中に流れ込んでくるのが分かった。


 うごめいていた妖獣たちも、上から押さえつけられているのか、どんどん潰されて霧の魔力を出していく。これって、もしかして圧死?


「どういう状態だよ、これ……」

「多分だけど、結界ごと穴に落ちたんじゃないかと……」


 そんなことより、この状況だといつ結界が壊れるかもわからない。もしもそうなったら周囲の妖獣と同じ運命だ。


「すぐ外に出るよ。考えるのは後にして、みんな集まって。」


 移動が止まってさえいれば、長距離の瞬間移動は簡単だ。俺は急いで仲間たちをダンジョン外に送り出し、そしてすぐにその後を追った。



「しかし酷い目にあったな。いったい何が起こったんだか……。」

「妖獣に出会ったと思ったら、ここに居る、そんな感じよね。」


 ダンジョンに入ってから、もう三時間は経っているのだけれど、一体何をしていたのかよくわからない。まさしくそんな感じだ。


「それはそれとして、私たちのレベル……上がってない?」

「うん、そうだね。」


 俺は良い顔をしながら、白い眼をして呆けているみんなに向かって親指を立てた。


 そう、ダンジョンに入る前はレベル八十一だったが、今の俺たちはレベル百二十以上に上がっていた。俺はレベル百二十六、マコちゃんと双子はレベル百二十四だ。


 そりゃ霧の魔力を見たら、反射結界を張って吸収するよね?



現在のレベル


ホソカワ・エイタ Lv.126

ツルギ・マコト Lv.124

オニガワラ・ボルボ Lv.121

マツダ・ユウジ Lv.121

ホンダ・キイチロウ Lv.122

トヨダ・スケヨシ Lv.120

タカナシ・スバル Lv.121

ヤマナ・イスズ Lv.122

ヒノ・アキコ Lv.124

ヒノ・ハルコ Lv.124


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