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4-3 あたしたちっ、結婚しますっ!(4)

「なにしやがんだっ! そのイチゴはっ!」

 聖弥くんが、お母さんに怒鳴った。

 聖弥くん、もういいよ。

 聖弥くんを好きになった、あたしが悪かった。

 聖弥くんが好きになってくれたことを、喜んだあたしが悪かった。 

 ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶあたしのせい。

 あたしが居なければ……、あたしさえ居なければ……。

「ちょっとっ、あんたたちなにすんのよっ!」

 お母さんの怒鳴り声。

 同時に、ドドンとあがりかまちが鳴る。

「セイヤ兄ちゃんをいじめるなっ!」

「セイヤにいたんをいじめりゅなっ!」

 ハッと見ると、ホウキを持った陽介と、絵本を持った光輝が、聖弥くんの前に立ち塞がって、お母さんを押し返していた。

 ちょっと後ろへさがった聖弥くんが、慌ててふたりの後ろ襟を掴む。

「こら、ちょっと待てっ」

「なんなのっ? この子たちっ! 聖弥っ、ママの言うとおりにするのっ! ママがあなたを育て間違えたって言われたらどうするのっ?」

 ドドンと陽介と光輝を押しのけたお母さんの手が、聖弥くんの胸倉を掴んだ。

 同時に、陽介が居間の畳に転がって、光輝がドサリと土間へ落ちる。

「光輝っ!」

 思わず光輝に駆け寄った。

「うわぁぁぁーーーんっ!」

 泣き出した光輝。

「光輝っ! 大丈夫かっ!」

 晃も駆け寄る。

 もう、なんなの?

 いい加減にして?

 いい加減にしてほしいのは、こっちのほうよっ!

 聖弥くんのためって言いながら、自分のことばっかりっ!

 もう、あたし許せないっ!

「ちょっとっ! 聖弥くんを放してっ!」 

 お母さんに飛び掛かる。

 続けて、聖弥くんの胸倉を掴んでいたその手に思いきり抱き付いて、それからドンと居間のあがりかまちを蹴飛ばした。

「きゃあっ!」

 お母さんの悲鳴。

 次の瞬間、あたしごとドサリと土間へ倒れ込むお母さん。

 あたしはすぐに飛び起きて上がりかまちに飛び上がると、それから茫然としている聖弥くんの横に並んでその手を握った。

「お母さんっ! 聞いてくださいっ!」

 いままで、主旋律を歌いたいなんて思ったことは一度もない。

 ずっと副旋律がいい、みんなを支える『アルト』がいいって、そう思ってきた。

 でも、今日からそんなこと言わないっ!

 聖弥くんの主旋律の人生。

 その横で、あたしも一緒に主旋律を歌いたい。

 めいっぱい、元気よく。

 めいっぱい、あたしらしく。

 さぁ、みんな聴いて。

 あたしにしか歌えない、あたしの『ソプラノ』をっ!

「聖弥くんっ! あたしっ、高校三年の一月十五日で十八歳になるのっ! そのとき、聖弥くんはいくつ?」

「え?」

 ポカンとする聖弥くん。

 あたしはもう一度、大きな声で尋ねる。

「あたしは十八歳っ! そのとき聖弥くんはいくつっ?」

 ギューッと手を握って、聖弥くんを見上げる。

 目を大きくしてあたしを見下ろしていた聖弥くんは、すぐにハッとしてギュッと手を握り返した。

「なるほど。十九歳だな。そして、四月には二十歳はたちになる」

「そうっ! 高校卒業するとき、あたしは十八歳、聖弥くんは十九歳っ! ふたりとも大人っ」

 土間に尻もちをついているお母さんが、あたしと聖弥くんを見上げた。

「お母さんっ! あたし、高校の卒業祝いが欲しいですっ! 聖弥くんをあたしにくださいっ!」

「はぁ?」


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