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4-2 もうっ、いっぱい抱きしめてやるっ!(2)

 お母さんが持ってきた話?

 そうか……。

 きっとお母さんは、聖弥くんが農園の手伝いしたいなんて言って、もう名門大学を目指すつもりもないんだって分かったから、また芸能界復帰のほうへ引き戻そうって思ったんだ。

 はぁ……、お母さんがかわいそうだよ。

 きっと、三条くんが『UTA☆キッズ』に出てたときみたいに、キラキラ輝いている姿をもう一度見たいんだよ。

 その夢、叶えてあげて?

「どうでもよくない。変な気の迷いで、お母さんを悲しませないで? ね?」

「気の迷いなんかじゃない。いまの俺の夢は、お前を幸せにすることだ」

「だから、あたしは幸せだって――」

「日向」

 あたしの言葉を、ちょっと強めの三条くんの声が遮った。

 ちょっとだけ彼がこちらへ顔を向ける。

 どうして?

 本気で、本気の本気で、そんなこと言ってるの?

 あたし、そんな大した女の子じゃない。

 三条くんに幸せにしてもらっていいような、そんなこと許される女の子じゃない。

「あたしに、そんな資格ないもん」

「それは俺が決めることだ」

「横暴」

「なんとでもいえ。俺はもう決めたんだ」

「知らないよ? 後悔しても」

「後悔なんてするか」

「はぁ……」

 あたしは膝立ちになって上げた腰を、もう一度そっと下ろした。

 雪見障子の外、縁側のさらにその向こうから、激しく瓦を叩く雨音が鈍く響いている。

 掛布団にくるまれた、彼の大きな背中。

 あたしはなにも言葉が出なくなってしまって、ただただその背中を眺めた。

「日向、ちょっと聞いてくれ」

 そう言って、ゆっくりと仰向けに戻った彼。

 そして彼は、噛みしめるようにその物語をあたしに語り出した。

「いつか話したっけ。教会の聖歌隊を辞めさせられて、俺が初めてテレビに出されたのは小学校三年生のとき、番組は『UTA☆キッズ』っていう、全国から集まった小学生が歌唱力を競うやつだった」

「まぁ、俺はトーナメントの真ん中くらいで敗退……、当然だ。その程度の実力だったんだ」

「なのに、次のトーナメントが始まると、なぜか俺は準レギュラーとしてそのまま番組に出演することになった。耳を疑ったよ。なんの成果も残してないのに」

「そうやって、小学生の間、俺はキッズアイドルとしていくつかの番組に出演枠をもらっていた。そして、中学生になる直前……」

『三条さん、今年度いっぱいで契約の更新はしないことになりまして――』

「突然の契約打ち切り……。ちゃんとした理由は告げられなかった」

「でも、共演していたひとつ年上の子が俺に教えてくれたよ」

『俺、ディレクターが話してるの聞いたんだ。お前、態度が悪いから降ろされたんだよ。それにお前の母親もウザいんだってよ。なんの実力もない息子をゴリ押ししてくるから』

「俺が番組に出られていたのは、ぜんぶ母さんの強引な押しがあったからだったのさ。なのに、俺はそうとう思い上がっていたんだと思う」

「そして、俺は夢見るようになったんだ。いつか自分だけの力でもう一度ステージに立ちたいってな」


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