4-1 なんで心配させんのよっ!(4)
三条くんのクラスは隣。
昨日の月曜日、確かに一度も三条くんの顔は見ていない。
休んでたなんて、まったく知らなかった。
どうしたんだろう。
風邪かな。
熱を出して寝てるのかな。
ご飯、ちゃんと食べてるかな。
あの部屋で、ひとりで動けなくなっていたらどうしよう。
最後にメッセージで話したのは、日曜日の夜。
お母さんの病気が『脳腫瘍』で、手術が終わったあともしばらく入院が必要かもっていう話を、ほんのちょっとだけした。
三条くんの最後の返事は、【手が要るときは遠慮なく言え。ひとりで無理してなんでもやるな】だった。
昨日の月曜日は、まったくメッセージのやり取りをやってない。
大丈夫かな。
放課後になったらすぐアパートへ行ってみないと。
「……なた? おい、日向?」
「あ? え? なに? ごめん、考えごとしてた」
「ふん。三条のことになるといつもそんなだな。小夜がどうしてもお前の卵焼き、ちゃんと作り方を教えて欲しいってさ。今度、時間をつくってやってくれよ」
「え? う、うん」
うわ、翔太ったら、『小夜』だって。
もう、そのまま付き合っちゃいなさいよ。
まぁ、そうとう大変だと思うけど。
「あ、そういえば日向、天気予報見たか? 今夜から大雨みたいだぞ? 風も強いらしい。週末までずっと台風並みの集中豪雨が断続的に来るってよ」
「え? そうなんだ。早く帰ってハウスの補強しとかないと」
【学校休んでたんだね。具合悪いの? ご飯、ちゃんと食べてる?】
校門を出てすぐ送ったメッセージには、結局、我が家に帰り着いても返信はなかった。それどころか、既読にもならない。
どうしたんだろう。
まさか、倒れてるんじゃ……。
なんだか胸騒ぎがする。
風が強い。
玄関戸がガタガタと鳴っている。
「ただいまっ、行ってきます」
あたしは、家に入ってすぐ土間から居間へ向かってバッグを放り投げると、それからまた外へと引き返した。
左を見る。
雑木林がザワザワと葉を鳴らして揺れている。
庭の向こう、温室の先、石垣の上。
三条くんのアパートは、いつもと同じ。
真っ黒な雲が、アパートの横の揺れる雑木林の上を、まるで煙のように流れている。
思わず駆け出した。
雑木林のトンネルをくぐる。
卵の自販機越しに、『星降が丘』から下ってくるメインストリートが見えた。
信号待ちしている、たくさんの車。
三条くんが、あたしをおぶって運んでくれた道。
びゅうびゅうと耳をかすめる風。
見上げると、もういまにも雨が降り出しそう。
雑木林が切れたところで、アパートへ続く砂利道へ駆け入る。
砂利が弾かれる音。
見えた。
三条くんのアパート。
二階へと続く、象の鼻のような鉄製の外階段は、相変わらずボロボロだ。
でもなぜか、今日はぜんぜん怖くない。
あちこち開いているサビだらけの穴なんか目もくれず、あたしは足がちぎれるくらい力いっぱい階段を駆け上がった。
「三条くんっ!」




