4-1 なんで心配させんのよっ!(3)
実は、お父さんは養子だった。
お母さんは、宝満養鶏場のひとり娘。
お父さんとは高校の合唱部で出会ったらしい。
お父さんのほうが、お母さんより一年先輩。あたしと三条くんと同じ。
お母さんが高校を卒業するちょっと前に、お母さんのお父さんが病気で亡くなってしまって、お父さんはそれから養鶏場の手伝いをするようになったって。
そして、お父さんは大学を中退して、お母さんと結婚して養鶏場を継いだらしい。
お父さんは、本当にお母さんのことが好きだったんだと思う。
でも、イチゴ農園に切り替えたことで、歯車が狂ってしまった。
ぜんぶ、あたしのせい。
お母さんは、お父さんと同じそんな思いを三条くんにさせたくないって、そんな必要ない苦労をさせたくないって、そう言ってるんだ。
「このままじゃ三条さんがかわいそうだって思う。せっかく日向を好きになってくれたのに。だから、日向。農園のことなんか忘れて、女子高生らしく、三条さんと素敵な恋をして。もしかして、十八歳になったとたん、プロポーズされるかもね?」
もうされてます。
めっちゃはぐらかしましたけど。
「いやー、それはないでしょ。お母さん、この話はまた今度ね? 今日はもう休んで?」
お母さんを驚かせないように、ゆっくりとベッドから離れる。
「日向……」
「あたしも彼の夢を奪いたくない。あー、でも、どうしてあたしがOKすることが前提で話が進んでるの? あたしにも選ぶ権利があるんだけどっ?」
そう言ってあたしが唇を尖らせると、お母さんが口を押えてププッっと吹き出した。
「日向、おやすみ。気をつけて帰ってね」
「うん。お母さん、おやすみなさい」
音を立てないように、静かに閉めた病室のドア。
農園は絶対に閉めない。
お母さんができなくなったら、絶対あたしがやる。
悪いけど、三条くんを巻き込むわけにはいかない。
これは、あたしの夢。
あたしだけの、あたしのための夢。
だから、三条くんがどんなにあたしを好きだって言ってくれても、あたしはそれに応えられない。
ごめんね、三条くん。
ありがとう、三条くん。
「え? 小夜ちゃん、野球部のマネージャーになったのっ?」
「ほんと困っちゃうわっ。ちょっと練習を見に行っただけなのに、あのジャガイモの集団から懇願されたのよっ?」
週明け、小夜ちゃんは学校に出て来た。
どういうわけか、昨日の月曜の朝、小夜ちゃんのお家まで翔太がお迎えに行ったらしい。
そして、小夜ちゃんは一日中、翔太にベッタリ。
放課後は野球部の練習を見に行くと言って、翔太とふたりで早々に教室を出て行ったけど……。
火曜の今朝、意気揚々とあたしに野球部のマネージャーになったことを話す小夜ちゃんは、なんともハレバレとした顔。
「どういうこと? 翔太」
「俺もよく分かんねぇけど、顧問の先生からの発案だったんで、おそらく立ち直り支援ってぇやつだな。水城先生の差し金だろ」
「ふうん。あんた、ほんとは小夜ちゃんのこと好きなんでしょ」
「バッ、バカ言うなっ! 俺は日向ひとすじっ……、あああ、いや、なんでもない。そっ、それより、三条が昨日も今日も休んでるらしいけど、お前、なにか知ってるか?」
「え? 三条くんが?」




