4-1 なんで心配させんのよっ!(1)
「脳……腫瘍?」
「うん。良性だから、切れば良くなるんだって」
あのあと、小夜ちゃんはなぜかバッティングセンターへ行くと言い出して、翔太を引っ張って宝満農園をあとにした。
卵焼きのことはすっかり忘れてたみたい。
でも、あのふたり、けっこうお似合いかもね。
ふたりが帰ったあと、あたしは弟たちの夕ご飯の用意をして、それからお母さんの病院へ。
もう面会時間ギリギリ。
病室の窓の外、ちょうど同じ高さの街路灯がちょっとだけ寂し気に灯っている。
「ただ、腫瘍ができている場所があんまり良くなくて、もしかしたら手術でぜんぶ切れないかもって。 そのときは、手術のあとも放射線治療が必要になるんだって」
起き上がらなくていいって言ったのに、ベッドの上で半身を起こしたお母さん。
やっぱり今日も辛そう。
「でも、心配しないでいいから。突然、死んじゃうような病気じゃないからね?」
「うん。手術はいつ? 手術が終わったらすぐ退院できるの?」
「手術は、まだはっきり決まってないけど、六月下旬だって。そして、退院は――」
お母さんがちょっとだけ手元に視線を落として、小さく息を飲んだ。
どうしたの?
お母さん、ぜんぶ話して?
あたし、もう小さな子供じゃないよ?
「――退院は、まだ分からないの。稀にだけど、手術が成功しても手足に麻痺が残ったり、言葉がしゃべれなくなったりすることがあって、そういう場合は退院まで時間が掛かってしまうって」
そうなんだ……。
「それでね? 農園のことなんだけど……」
「農園は心配要らないよ? あたしと晃たちでしっかりやるから!」
「うん……、でもね?」
分かってるよ?
お母さんが言おうとしていること。
でも、それじゃお母さんが夢を諦めてしまうことになっちゃうもん。
「お母さん?」
「日向、お母さんはもうこれ以上、日向やみんなに迷惑を掛けたくないの」
「でもっ」
思わず、ベッドのお母さんに顔を寄せた。
お母さんは静かに微笑んでいる。
「あのお家はしばらくはそのままで、農園だけ閉めてしまおうと思う」
「お母さん……」
「難しい話だけど、イチゴに切り替えてからずっと借り重ねてきたお金、すこしずつ返しているけど、もう……、無理かもしれない」
苦笑いのお母さん。
それも知ってる。
どれくらいのお金を借りているのかは知らないけど。
「大丈夫。あたし、高校辞めて働くから。お昼は農園をやって、夜は――」
「ありがとね……、日向。でも、それはあなたがすることじゃない」
思わず、上を見上げた。
天井がゆらっとする。
お母さんが、そっとあたしの手を握ったのが分かった。
「もし、お金が返せなくなったら、あのお家と土地を代わりにあげる約束になってるから、なんにも心配は要らない」
「あたしは……、あたしは……」
「吉松のおじさんにも相談したけど、もう頑張らなくていいんじゃないかって……」
突然、頬を暖かい雫が伝った。




