3-4 意外にお似合い!? おふたりさん!(4)
あたしが聴きに行ったのは、たった一度だけ。
保育園の『クリスマスお遊戯会』のちょっと前で、本物の合唱を聴きに行こうって感じで、教会の催しに年長さんみんなで参加させてもらった。
『日向ちゃんは、花束を渡す役ね。先生が「はい」って言ったらまっすぐ歩いて行って、一番前の真ん中に居る男の子に、この花束を渡すのよ? いい?』
真っ白な服を着た聖歌隊の男の子たちが、マリア様の像の横に並んで、とっても素敵な歌声を聴かせてくれた。
もしかしたら、あの中に三条くんも居たのかも。
「だから、もう一度、両耳で彼の歌を聴きたいっていうのが、小夜の夢なのね」
言葉が出ない。
小夜ちゃん、それで三条くんの応援をしてたんだね。
「でも、やっぱり小夜は難しいわ。喜怒哀楽がハッキリと読み取れたり、正義感が強いところはすごくいいんだけど。お金を拾ったりしたらすぐ交番へ駆け込むし」
あ……、その節はお世話になりました。
「今日は来てくれてありがとう。実はね? 学校に行かなくなってからずっと、小夜が一番楽しそうに話をするのは、あなたと、あなたの弟さんたちのことだったのよ?」
へ? あたしのこと?
「あなたが作った夕ご飯が美味しかったとか、弟が可愛かったとか……。自分も料理を覚えたい、イチゴや野菜を育てたい、美味しいジャムを作りたい……、そして、その続きが、あのニワトリ小屋」
うわぁ、非常に申し訳ない……。
「単純よね。そして、ニワトリの次はイチゴ作り……。鶏小屋の横に温室を作って、そこでジャムにするイチゴを作るんだって」
眉をハの字にした、小夜ちゃんのお母さん。
「いつも小夜はいろいろと理由をつけて、できないんじゃない、たまたまできなかっただけだって言い張るんだけど、なぜか今度は言わないのよね。自分もできるようになりたいって、そればっかり言うのよ」
お母さんがすっと目を上げて、まっすぐにあたしを見た。
「たぶん、あなたに会ったから。きっと、あなたがすごいんだと思う」
「えっと……、あたしはそんな」
そう言って肩をすくめて首を振ると、お母さんは今までで一番の満面の笑みになった。
「だって、聖弥くんがプロポーズした女の子だもんね」
い?
どどど、どうしてそれを。
思わず、ハッとして下を向く。
どぎまぎとして言葉を捜していると、お母さんはクスクスと笑いながら、そっとあたしの顔を覗き見上げた。
「ふふふ。小夜が、あなたになら聖弥くんを任せられるって、そう言ってたわ。日向さん? これからも、小夜のこと、よろしくお願いします」
「は、はい」
思わず背筋を伸ばした。
お母さんはニコリと笑ったあと、ドアのほうへ目をやる。
「もう、紅茶まだかしら」
その瞬間!
ドドンと激しく開け放たれたドア。
一瞬、ドアの外に、茶器を乗せたトレイを持ったまま、泣きじゃくっているお手伝いさんの姿が見えた。
そして、その手前に突然飛び出してきた、彼女。
「ひなっ! お待たせっ! さ、行くわよっ?」
うわ、なにその格好。
ひらひらが付いた、レースのカーテンみたいなワンピース。
お料理するにはちょっと邪魔かも。
お母さんがまた、深いため息。
「はぁ……。やっぱり分からないわ」




