3-4 意外にお似合い!? おふたりさん!(3)
勢いよく開け放たれた応接室のドアの向こうに、ポカンと口を開けているお手伝いさんが見えた。
お手伝いさんの手には、とっても上品なポットとカップ。
目を戻すと、小夜ちゃんのお母さんが頭を抱えていた。
「まったく意味が分からないわ。家どころか部屋からも出たがらなかったのに、日向さんに会ったとたん、自分から外へ行くって言い出すなんて。ごめんね? いつも小夜があんなで」
「いいえ。あたしは、その……」
「小夜ね、実は……、ちょっと理解と支援が必要な子なの」
理解と支援?
お母さんが、少し言葉を詰まらせて、ゆっくりと息を吐く。
「ちょっと難しい話だけどね? 小夜は、他人がどう感じているかを読み取れなかったり、興味や怒りが抑えられなくて他人と協調できなかったり、そういう社会性の一部が少し欠けている子でね」
お母さんはそう言いながら、「お菓子をどうぞ」ってあたしに手のひらを差し出した。
どう返していいか分からなくて、あたしは小さく「はい」と口だけ動かす。
「すごく情緒が不安定になったときは、もうどう話してもダメでね。あとは欲しいと言ったものを買ってあげて、やりたいと言ったことをやらせてあげるしかなくて……」
あたしは下を向いたまま、ぎゅーっとスカートを掴んだ。
「私が悪いんだけど、それを小さいときから繰り返してきた結果がこれ。高校だって、とうてい受かるはずもない名門私立高校を、受けたいって言うから何校も受けさせたけど……、当然、どこにも受からなくて」
顔を上げると、お母さんがちょっと顔を傾けて口の端をゆがませていた。
「でもね? なにを考えているか理解に苦しむけど、思い描いた夢がいつもハッキリしているのだけはいいのよね。いつも、その夢に向かってまっすぐ」
「素直ですよね。そしてすっごくアツくて」
「そうね。そこだけは感心。ここのところずっと変わらないのは、聖弥くんの歌をちゃんと両耳で聴きたいってことかしらね」
両耳?
三条くんがもう一度ステージで歌うために、めいっぱいその応援をしているって話は聞いてたけど。
「あら、大親友なのに話してないのね。小夜、右耳が聞こえないの。そして、左耳もだんだん聞こえなくなっててね。だから声が大きいのよ?」
えっ?
あっ、だから耳鼻科で「様子を見ましょう」って言われて怒ってたんだ。
「聖弥くん、UTA☆キッズに出る前は、教会の聖歌隊に入っててね? あそこの、緑の屋根の教会、知ってるかしら」
「え? あ、知ってます。あたしも保育園のとき、あそこの聖歌隊の歌を聴きに行ったことがあります」
「そう。小夜も幼稚園のとき聴きに行ったんだけど、そのとき、聖弥くんがソロをやったの。小夜ったらその歌に感動したみたいでね」
三条くんがやってた聖歌隊って、あの教会の聖歌隊だったんだ。
「幼稚園でちょっといじめられて不登園になりかけてたんだけど、聖弥くんの歌に勇気をもらったみたいで、それからはとっても元気に登園するようになって」
小夜ちゃん、いじめられてたの?




