3-4 意外にお似合い!? おふたりさん!(2)
「で、小夜? なにを飼うって言ったっけ?」
「……リ」
「聞こえないわね」
「……トリ」
「なんですって?」
なに?
なにかを飼おうとしたの?
突然、ガバッとお母さんのほうへ顔を向けた小夜ちゃん。
うわ、すごい顔。
「ううう、うるさいわねっ! ニワトリよっ! ニワトリっ!」
え? ニワトリ?
下唇を噛んで、「ううー」っと言いながら顔を真っ赤にしている小夜ちゃん。
「日向さん、聞いて? 小夜ったら、突然、『ニワトリを飼う』って言い出して、何度もダメだって言ったのに、勝手に芝を掘り起こして鶏小屋を建て始めちゃってね。大工仕事なんてできもしないくせに」
あたしがポカンと口を開けていると、小夜ちゃんがさらに身を乗り出してお母さんに喰って掛かる。
「小屋を建てるくらい楽勝よっ! ちゃんと動画で観たんだからっ!」
おでこに手をやって、さらに深い深いため息をついたお母さん。
「まったく意味が分からないわ」
「ふんっ! ひなのニワトリよりもっと美味しい卵を産ませて、もっともっと美味しい卵焼きを作るのよっ! そして、聖弥くんに食べてもらうのっ!」
うわ、そういうこと。
これも、あたしのせいだ。
うちのニワトリが産んだ卵の卵焼きだなんて、言わなければよかった。
鼻の穴を大きくして、プイッとあっちを向いた小夜ちゃん。
ソファーの背もたれに体を沈み込ませながら、呆れ顔で口を尖らせるお母さん。
「あのね? 小夜。こんな住宅街でニワトリなんて飼ったら、ご近所さんからどんな苦情が来るか分からないって言ったでしょ? 臭いだって出るし、朝の鳴き声だってものすごいのよ?」
「わ、分かってるわよっ! それでもアタシの卵焼きには必要だって思ったのっ!」
ガタガタとソファーを揺らす小夜ちゃん。
すごいトンデモ理論。
でも、ものすごく小夜ちゃんらしい。
もしかして、二週間も休んでたのって、このため?
「えーっと、その、小夜ちゃん? それなら、まず先に美味しい卵焼きを作れるように頑張ったらどうかな? あたし、卵焼きの作り方、教えてあげる」
「えっ? ホントっ?」
小夜ちゃんの動きが止まった。
瞳をキラキラさせて、ポカンとあたしのほうを見ている。
「うん。でも、あたしのは我流だから、小夜ちゃんが思う卵焼きと違うかもだけど。だから、ね? お庭でニワトリを飼うのは――」
「ひなっ! 女に二言はないわねっ! 今から行くわよっ!」
うわっ!
突然、立ち上がった小夜ちゃん。
眉をカモメみたいに吊り上げて、これ以上ないくらいの笑顔で思いきりあたしの腕を引っ張る。
「え? 行くってどこへ?」
「宝満農園に決まってるじゃないっ! アタシっ、準備してくるっ!」
バチッとあたしの腕を放って、小夜ちゃんがバタバタと応接室を出て行く。
いや、卵焼きの作り方なんて、ここでも教えられると思うけど。




