3-3 突撃! 小夜ちゃんち!(3)
『さぁ、みんな手伝ってー』
あたしが台所から居間へ向かってそう声を掛けると、三条くんが晃と陽介の背中をポンと押した。
光輝もさっと立ち上がる。
小夜ちゃんは、なにが起こったのかと目を丸くしている。
そして、あっという間に、食卓はあたしのお料理でいっぱい。
『ジャム子、これ、ぜんぶあんたが作ったの?』
『うんっ。これね? うちのニワトリたちが産んでくれた卵で作った卵焼き。サラダやお味噌汁のお野菜もぜんぶうちの畑で採れたものよ? いっぱい食べてね』
あたしがよそったご飯を両手で受け取ると、小夜ちゃんはしばらくそれをポカンと眺めていた。
『小夜、日向の卵焼きはマジ旨いぞ? 店で出してもいいレベルだ』
うわ、三条くん、それは褒めすぎ。
小夜ちゃんは、『貧乏人のご飯なんて食べられない』って言うかと思ったけど、なぜか、ずっと大人しく箸を口に運んでくれていた。
「……ふぅん、まぁ、そうとうムカつくけど、やっぱり若いっていいわね。あんたがそこまで三条聖弥と仲良くなってるなんて思わなかったわ」
「いやいやいや、お母さん公認の農園スタッフという位置づけなので。あれは、お給料の代わりです。それにもうお手伝いは終わったので、特に顔を合わせることもありませんし」
「ふぅん」
ニヤリとする水城先生。
なんですか、その顔。
「と、ところで、あたしに用件ってなんですか?」
「あ、そうそう。あんた、鷺田川さんと仲いいんでしょ? 家に上げてご飯食べさせるくらいだし」
「え? いや、あれは成り行きで」
「そう? ま、いいわ。その鷺田川さんの仲良しのあんたに、ちょっと手伝ってもらいたいことがあんのよ」
「手伝う?」
『明日の土曜日、鷺田川家に潜入して、小夜の不登校の原因を調査せよ』
それが水城先生からの指令。
なんであたしがっ?
当然、そう聞き返しますよね?
そうしたら、耳を疑うような答えが返ってきたのです。
『鷺田川さん、誰にも会いたくないって先生の家庭訪問を拒絶しているみたいなんだけど、「宝満日向になら会ってあげていいわ」って言ったらしいのよ』
なんなのよ、それ。
それで、昨日の夜、三条くんにメッセージしたら、【よほどこの前の晩メシが美味しかったんじゃないか?】って返してきて、それっきり。
三条くん、最近ちょっとそっけない。
オーディションが近いからかな。
いつかあたしと一緒に出ようって言ってたオーディションは受けないことにしたらしいんだけど、なぜか先週、『どうしても受けないといけないオーディションができた』って、難しい顔をしていた。
なんだか、『自分では受けたくないのに、受けさせられる』って感じ。
でも、自分の実力で芸能界復帰を目指すって言ってたのに、それって自分から望んでるオーディションとは違うの?
ちょっと心配。
え?
ちょっとだけよ? ちょっとだけ。
小夜ちゃんが聞いたら、きっと小夜ちゃんもすごく心配すると思うな。
あ、もしかして、小夜ちゃんが二週間も休んでいるの、三条くんのオーディションとなにか関係あるのかも……。
でも小夜ちゃん、ちゃんとあたしに話してくれるかな。




