3-3 突撃! 小夜ちゃんち!(2)
『あ、聖弥さん、ちょっと遅かったぜ。もう、今日のぶんは終わったよ。箱詰めはメシのあとしよう』
『あー、セイヤ兄ちゃん、お友だちつれてきてくれたのー? うわぁ、かみがながーい』
『ねぇ、えほんよめる?』
頬を引きつらせてのけ反る小夜ちゃんに、わらわらと寄っていく弟たち。
なに?
小夜ちゃん、子供が嫌いなの?
『小夜さんっていうんだ。俺、晃。こいつは陽介、こっちは光輝』
『へ? あ、そっ、そう』
『小夜さんも手伝いに来てくれたんだろ? 姉ちゃん、俺、腹減っちまった。メシ先にできる? 小夜さんも一緒に食べなよ。箱詰めはそのあとだから』
『……はい?』
動揺する小夜ちゃんは、晃のペースに乗せられてあれよあれよと我が家の中へ。
晃のやつ、三条くんを連れて来たときにはすごく反抗的だったくせに、女の子を連れて来たらまったく反応が違うんだからっ。
土間に入って、目をくるくるさせた小夜ちゃん。
居間に上がってもらって、あたしがバタバタと夕ご飯の支度をする間は、三条くんに小夜ちゃんのお相手をお願いした。
すごく嫌そうな顔にちょっとウケたけど。
すると三条くんは、小夜ちゃんから三つ離れた座布団に腰を下ろして、すぐに弟たちを呼んだ。
『晃ぁ、陽介ぇ、宿題持ってこーい』
『はぁい』
台所からちょっとだけ様子を窺ってみると、小夜ちゃんは完全に放心状態。
どうも、三条くんが我が家に馴染んでいるのが理解できない様子。
しばらくして、晃と陽介が三条くんの両側に座って、テーブルの上に宿題を広げた。
小夜ちゃんがそれをポカンと口を開けて見ていると、奥の仏間から可愛い声がした。
『こうきもいれてぇ』
両手いっぱいに絵本を抱えた光輝。
どうするのかと見ていると、光輝はタッタッとなんの迷いもなく小夜ちゃんのところへ駆けてきて、ニコニコしながらストンとその隣へ座った。
ギョッとする小夜ちゃん。
じっと彼女を見上げる光輝。
『な……、なんなの? アタシに絵本を読めとでも言うの?』
唇の端をぴくぴくさせて小夜ちゃんがそう言うと、瞳をキラキラさせた光輝が絵本を両手で差し出しながらうんうんと頷いた。
しばらくの沈黙。
小夜ちゃんは、なにやらじっと考えている。
光輝はただただ、ニコニコして小夜ちゃんを見上げている。
しばらくして、小夜ちゃんはチッと舌打ちすると、頬を真っ赤にしてバッと光輝の手から絵本を取り上げた。
いまにも光輝を弾き飛ばしそうな勢い。
思わず、居間へ踏み出しそうになった。
しかし……、なんと意外なことに、光輝から絵本を取り上げた小夜ちゃんは、じとりと三条くんへ目を向けたあと、すーっと彼に背中を向けて座り直し、それから光輝に顔を寄せて小声で絵本を朗読し始めた。
思わず笑ってしまった。
小さな声で、光輝に耳うちするように絵本を読んであげている小夜ちゃん。
それから、あたしのお料理ができ上がるまで、とってもとってもゆったりした時間が居間を包んでいた。
夕ご飯ができ上がったのは、小夜ちゃんの朗読が六冊目になったとき。




