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3-2 それって、もしかしてプロポーズっ?(3)

 それにしても、三条くん、もうちょっと小夜ちゃんの相手してあげたら?

 小夜ちゃん、ずっとひとりで三条くん相手に話してるよ?

「だいたい、聖弥くん、おかしいわ。聖弥くんはスターなのよ? そのスターが農園のお手伝いなんて」

「聖弥くん? あなたは天才なのよ? アルトの音域まで軽々と歌う天才テノール。アタシたち『ガオカ』のエリートの中でも、さらにすごいカリスマなんだから」

 うぇぇ、エリートとか自分で言うんだ。

「アタシたちは選ばれた人間なの。そうね。イチゴに例えるなら、アタシたちは、『あまおう』や『とちおとめ』。ひと粒いくらで売られるような、高級イチゴ」

「その中でも、聖弥くんは、高級中の高級、超超超高級なブランドイチゴなの」

「アタシの夢は、その聖弥くんの超高級ぶりをみんなに分かってもらうことよ。そして、聖弥くんがまた素敵な衣装を着て、眩しいステージに立って歌う素敵な声を、この耳でちゃんと聴くのっ。それが、アタシの夢っ」

 ふうん。

 小夜ちゃん、そんなに三条くんのことが好きなんだ。

 もう一度、三条くんを見上げた。

 うわ、なんて怖い顔。

 三条くんの夢、もう一度、自分の実力でステージに立ちたいって言ってたから、小夜ちゃんの夢はそのまま三条くんの夢と同じだと思うんだけど。

 あんまり嬉しくなさそう。

「日向」

「え? は、はい」

「帰ったら、ちょっと温室を見せてくれないか」

「はい?」

 

 それから、我が家に着くまで三条くんはずっと無言。

 途中で小夜ちゃんに、「お前の家はあっちだろ」とだけ言ったけど、それ以外はずっと黙ってた。

 なにか、すごく真剣に考えている様子で、あたしもどんな顔していいか分からなくて……。

「うわ、まだあったの? この卵の自動販売機」

 『ガオカ』に住んでいる人ならみんなこの前を通るし、中に入ったことはなくても、森の中に宝満農園があることを知っている。

 そして、あんまりよく思っていない。

 その昔、あたしが小学校低学年のとき、農園の北と南にある丘を切り開いて、『星降が丘』っていう新しい町ができるって聞いた。

 あたしたち古い町の人たちは、みんな大反対したって。

 新しい道と区画が整理される関係で、一部の古い町の人が引っ越さないといけなかったんだけど、町長さんが、この古くて暗い町を、明るくて素敵な町にするために頑張っているんだって、そうみんなに話して、すこしずつ諦める人が増えたらしい。

 そんな中、うちのお父さんだけはずっと諦めなかった。

『宝満農園は絶対に立ち退かない』

 そう言って、古い町の人たちの先頭に立って、開発反対を訴えた。

 本当は、南と北のふたつの丘に、『星降が丘南』と『星降が丘北』のふたつの新しい町ができるはずだった。

 そして、そのふたつの町を結ぶメインストリートが走るはずだったのが、ちょうど我が家の母屋のあたり。

 我が家が立ち退かなかったから、『星降が丘』は未完成。

 本当は、ここにもっとずっと都会的で素敵な町が生まれるはずだった。

 だから、我が宝満農園は『ガオカ』の人たちから、あまり良く思われていない。

「小夜、この自販機は現役だ。元養鶏場だから卵も旨い。新鮮でお買い得だぞ? どうだ? ひとネット」

「いやよっ。こんな雨ざらしの機械の中に置いてある卵なんて不衛生じゃないっ! ハッ? もしかして聖弥くん、鶏小屋で卵集めまでやらされてるんじゃないでしょうね?」

「やらされてない。自分でやってる。たまにだけどな」

「はぁ?」


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