3-2 それって、もしかしてプロポーズっ?(1)
「――いや、すまなかった。看護師さんからキミが制止してくれたことを聞いたよ。ありがとう。キミ、この前の宝満農園の子だよね? お金の封筒を落とした」
「え? あ、はい」
「キミたち、友達だったのか。それなら彼女、直接キミに言えばよかったのにな」
直接? なんのこと?
エントランスホールの一番端っこのソファー。
あたしの隣には、下唇を突きだして腕組みに足組みまでしている、ふて腐れた小夜ちゃん。
もうひとりのお巡りさんが、その小夜ちゃんに目を向けながらちょっと呆れた感じで言う。
「どうして暴れたの? キミ、あのときこの子の封筒を届けてくれた子だよね?」
え?
どういうこと?
もしかして、あのお金、小夜ちゃんが交番へ届けてくれたの?
「うるさいわね。だったらなんなのよ。もういいでしょ? 警察は帰んなさいよっ」
「分かった分かった。とにかく、もう一度同じようなことしたら、今度は警察署に来てもらうからね?」
「ふん」
苦笑いのお巡りさん。
もう小夜ちゃんが落ち着いたし、特に事件でもないので、お巡りさんはすることがないらしい。
「ただ、親御さんには連絡をとらせてもらうよ? キミ、鷺田川病院の娘さんだったよね」
「はぁ? 勝手にすればいいでしょ」
お巡りさんが、スマホでどこかへ電話をかけている。
たぶん、小夜ちゃんのお父さんお母さんのところかな。
あたしの隣に座っている小夜ちゃん。
下唇を噛んで、じっとつま先を見つめている。
なにがあったんだろう。
「ねぇ、小夜ちゃん。なにかあった? どうして診察室で暴れたの?」
「ジャム子には関係ない」
「病院って、耳鼻科だったんだね。どこか悪いの?」
「ジャム子には関係ない」
「あ、お金拾ってくれたの、小夜ちゃんだったんだね。なにかお礼させて? ほんとにありがとね」
「ジャム子には関係ない」
だめだこりゃ。
小夜ちゃんはときどき、こんなふうにまったく手がつけられない情緒不安定に陥る。
どうしたらいいのかな。
お母さんと三条くんを待たせてるのに。
このまま、彼女を置いて戻れない。
「――ええ、もう落ち着いているんですが、ちょっと困惑しているみたいなので、電話、代わってもらえますか? 鷺田川さん? これ、お母さん。ちょっと電話代わって」
お巡りさんがスマホを差し出す。
すると、小夜ちゃんはバッとそれをひったくって、タタタとエントランスの端の壁まで行くと、そこでしばらく電話で話をしていた。
お巡りさんは、さっきよりもっと苦い顔。
「キミ、大変だな。いつもあの彼女の発作に付き合わされているんだろ?」
「え? いや、あたしは……」
発作?
「じゃ、あとは頼むね。僕らはあの電話が終わったらそのまま引き揚げるから」
お巡りさんたちはそう言うと、壁に向かって背中を丸めている小夜ちゃんのほうへ歩いて行った。
小夜ちゃん、なにか病気なのかな。
「おい、日向、こんなところでなにしてんだ。警察まで来て」
え?
ハッと顔を上げると、そこにはすごく心配そうな顔をした、三条くん。
「えーっと」




