3-1 あたし、逮捕されちゃうのっ?(3)
「お母さんっ、具合はどうっ?」
軽くノックしたあと、お母さんの返事が明るい声であることを確かめて、それから元気よく病室のドアを開けた。
学校からそう遠くない、お母さんが入院している病院。
「日向、ありがと。あ、三条さんも、ありがとね」
「いえ」
お母さん、やっぱり顔色が良くない。
連休明けに検査だって言ってたから、もうそろそろだと思うけど。
「お母さん、下の売店に田中さんとこのサクランボ売ってたよ? 買ってこようかと思うけど、食べられる?」
「うん? そうね。明日からいくつか検査を受けないといけないから、夜9時以降はお水も食べ物もだめって言われたけど、時間的にまだ大丈夫ね。食べようかな」
「よかった。じゃ、買ってくる。三条くん、ちょっとここで待ってて?」
さっき売店で見つけた、二丁目の田中さんが作ってるサクランボ。
とってもキレイで美味しそうだったんでお母さんに買ってあげようと思ったら、三条くんから「検査前は食べられないこともあるから、ちゃんと確認してからのほうがいい」って言われた。
そういうとこ、やっぱお兄さんって感じ。
三条くんはたぶん、あたしなんかよりずっと大人なんだろうと思う。
きっと、小さいときに芸能関係のお仕事してたとき、大人に混じってずっと気を遣ってただろうから。
「おい、ちょっと待て」
病室を出ようとしたところで、三条くんから呼び止められた。
あ、ちょっと怖い顔。
「な、なに?」
「俺が買ってくる。お前はお母さんと話をしてろ」
「え? でもっ」
「限られた面会時間だ。少しでも一緒に居て話せ」
「えーっと」
それはそうだけど、三条くんはお客さまだし、お遣いに行ってもらうなんてできないよぅ。
思わず固まる。
すると、三条くんがあたしの肩にそっと手を置いて、ベッドのほうへ押しながらドアの取っ手に手を掛けた。
「ほら、ちょっとそこどけ」
あのう、なにをそんなに怒っていらっしゃるのでしょうか。
「三条さん? いいの。日向に行かせて」
お母さんの声。
ハッと声のほうへ目をやると、肩を震わせながらお母さんがゆっくりとベッドから体を起こそうとしていた。
思わず駆け寄る。
「お母さんっ!」
「日向……? 売店に行くなら、三条さんに飲み物を買ってきてくれない? お金はそこのお財布持って行って。サクランボのぶんもそれから出してね」
「ちょっと、お母さんっ、起きちゃだめっ」
背中に手を回して支えると、お母さんが大きく息を吐いた。
辛そうな顔。
すごく頭が痛いらしい。
早くなにが悪いか調べて、お薬をもらえればいいのに。
床頭台へ手を伸ばしたお母さんを見て、三条くんもあたしの横に来て手を差し出した。
「いや、俺はなにも要りません。俺が居るせいで気を遣わせるんなら、日向だけ残して俺は先に農園へ行ってます」
なに? ひ、ひなたって。




