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3-1 あたし、逮捕されちゃうのっ?(2)

「ちょーっとぉ、ジャム子っ! なに、聖弥くんと馴れ馴れしく話してるのよぉ!」

 次の瞬間、ババーンと激しい音がして翔太がひっくり返った。

「うわっ!」

 おお、でたっ! 小夜タックルっ!

 転げる翔太を飛び越して、ササッとあたしと廊下の三条くんの間に駆け入る小夜ちゃん。

 両手を広げてあたしをギョロリと睨みつける。

 うわぁ、見得を切る歌舞伎役者さんみたい。

 次の瞬間、彼女はパッと笑顔になって彼のほうを向いた。

「聖弥くぅん、一緒に帰ろうっ?」

「お前は合唱部だろ。俺は用事があるんだよ」

「アタシ、今日は病院なの。一度帰ってから行くのよ? ね、一緒に帰ろうっ?」

「そうだ、小夜。いいものがあるぞ?」

 あ、もしかして、いつも持ち歩いているという、『小夜除け』?

 三条くんが、財布の中からなにやらチケットのようなものを取り出した。

「えええ? これ、駅前のSAKURAカフェの無料券じゃないっ! しかもっ、期間限定ストロベリースムージー! アタシっ、これ気になってたのっ! 聖弥くんっ、ありがとぉぉぉっ!」

 ニヤリと笑う三条くん。

 チケットをもらってバンザイする小夜ちゃん。

 その、SAKURAカフェで使ってるイチゴ……、たぶんうちのです。

「ジャガイモっ、野球の話はまたあしたっ、悪いわねっ」

「え? いや、俺から頼んだわけじゃねぇし」

 そう言って翔太が後頭部をさすりながらヨロヨロと立ち上がったとき、もう小夜ちゃんはバッグをひったくって教室を駆け出て行ってしまっていた。

 ほんと、忙しい子。

 茫然としている翔太に、廊下から三条くんが声を掛ける。

「吉松、お前、今日から練習に戻るだろ?」 

「え? う、うん。農園のほう、あんたに頼んどくわ」

 あれから、翔太はなんかぎこちない。

 ゴールデンウィークの作業中も、ずっとこんな感じだった。

 三条くんがほんとはひとつ年上で、ひと学年先輩だって知ってしまったから、ちょっと戸惑っているみたい。 

 あたしもあのあと少し戸惑って、「それじゃ、三条さんって呼ばなきゃ」って言ったら、「そしたら俺は日向って呼び捨てにするぞ?」って返された。

 いや、『イチゴ』って呼ばれるより『日向』って呼ばれたほうが気分的にはいいんだけど、そしたらその、あまりにも、なんか、彼氏さんに呼ばれてるみたいで……。

 あ、翔太にも『日向』って呼ばれてるけど、翔太は身内みたいなもんだから。

 まぁ、三条くんから『日向』って呼ばれるのもちょっとアリかなぁなんて思ったけど、それを小夜ちゃんが聞いたら発狂しそうだから、結局、これからも『イチゴ』のままでお願いしますってなった。

 あぁーでも、もし三条くんから『日向』って呼ばれたら、あたしはどう呼んだらいいのかなぁ。

 やっぱり、『聖弥さん』?

 それとも、『聖弥くん』?

 それともそれとも……、『聖弥』なんて、呼び捨てにしてみたりとか。

 うわ、そんなことしたら、それこそ小夜ちゃんが気絶しちゃうかも。

 いやぁ、それに、そんなのそうとう恥ずかしすぎるでしょ! むりむり! あはは。

 おおお? あははじゃないっ! なにを考えているんだっ、あたしはっ!

「おい、なにぼーっとしてんだ。病院行くぞ? イチゴ」

「う、うんっ。え? 三条くんも病院来てくれるのっ?」


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