3-1 あたし、逮捕されちゃうのっ?(1)
「ジャガイモっ、ちょっとあんた、アタシに野球のルールを教えなさいよっ!」
「はぁ? 前にも言わなかったか? 俺はそんなにデコボコしてねぇ」
ゴールデンウィーク中は、ずっと翔太と翔太のお父さんが手伝いに来てくれた。
隣町の直売イベントが開催されていた間は、日中はお母さんの代わりにイベントへ行ってくれて、それが終わったあと、またわざわざ我が家へ来てくれて。
実は……、三条くんもずっと来てくれた。
三条くん、あの日だけかと思っていたら、あれから毎日来てくれて。
翔太たちが居るから大丈夫だよって何度も言ったんだけど、最後は「うるさいっ!」って怒鳴られた。
ううう、ちょっと笑ってくれるようになったから気を抜いていた。やっぱり怖いよぅ。
でもそのうち、手伝いに来てくれるのが当たり前になってしまって、夕ご飯を食べて帰るのも普通になっちゃって……。
弟たちは三条くんが来てくれると、とっても嬉しいみたい。
晃は宿題をみてもらって、陽介はピアノを教えてもらって、光輝は絵本を読んでもらってと、もうほんと、なんてお礼を言ったらいいか分からないくらい。
でも、どうしてそこまでしてくれるのかは謎。
育ちのいい三条くんからしたら、こんな汚れる農園の仕事なんて、まったく面白くないと思うんだけど。
でも、とにかく助かった。
そして、連休明けの今日は、もうヘトヘト。
一日中、眠くて眠くてしょうがなかったんだけど、もしかしたら先生たちは、あたしが気絶しそうに白目丸出しだったのをずっと見逃してくれていたのかも。
やっと放課後。
その眠気をぶっ飛ばすように、教室の前のほうでいつものアニメ声がグイグイと翔太に絡んでる。
小夜ちゃん、ほんと声が大きいよね。
「アタシ、キャッチャーの後ろでイケたポーズする、あの役をやってみたいのよっ!」
「なんだそれ?」
たぶんね、それ、審判のこと言ってると思う。
そして、それがなんの役目をしている人なのか、たぶんまったく分かってないんじゃないかな。
「病院の待合室のテレビで見たのよっ! あれがやりたいのっ!」
小夜ちゃんは、いつもこんな感じで話が噛み合わないし、ドン引きするほど面倒くさいので、クラスのみんなはあまり相手をしない。
でも、意外にも翔太は毎回毎回、嫌々ながらもちゃんと相手をしてあげている。
けっこういいコンビなんじゃないかな。
でも、野菜の名前で呼ばれるのはやっぱりいただけない様子。
「おい、イチゴ」
あら、そういえば彼があたしを呼ぶときも野菜の名前でしたね。もう慣れましたけども。
廊下から響いた、あたしを呼ぶ澄んだ声。
振り向くと、彼が小さく手を挙げていた。
「もう帰るか?」
「あ、三条くん」
うーん、あんまり小夜ちゃんの前で声を掛けないでって言ったのに。
「病院、寄るのか」
「えーっと」
ハッとして横目で教室の前のほうを見た。
やはり。




