2-4 ぜんぶ、ぜんぶ、あたしのせいだ!(3)
去年、山家さんはお父さんが亡くなったその晩から、最盛期が終わるまでずっと手伝いをしてくれた。
でも、また今年も同じように迷惑を掛けるわけにはいかない。
「ありがと。今年も翔太と翔太のお父さんが夕方から来てくれてるから、たぶんなんとか大丈夫。あたしは当分、学校お休みだけどね」
「そうかー。あんまりムリしちゃダメだよ?」
「うんっ」
笑顔だ。
笑顔でいよう。
お母さんのこと心配だけど、あたしが元気を失くしたら弟たちもふさいじゃうし、みんなに心配を掛けちゃう。
山家さんが部屋へ引っ込んだあと、チラリと隣の三条くんの部屋を見た。
カーテンが閉まっている。
もう、学校へ行っている時間。
正直、昨日は三条くんのおかげで正気で居られた。
彼が居てくれたから、弟たちの心配をしないで病院に駆けつけることができた。
また今度、なにかお礼をしないと。
お母さん、検査はゴールデンウィーク明けって言ってたな。
なにか、大変な病気だったらどうしよう。
ううん、きっと大丈夫だもん。
毎日来なくていいってお母さんは言ってたけど、やっぱり心配。
今日はお昼から行こう。
午前中のうちに、ある程度、今日のぶんの収穫をやっとかなきゃ。
あれ? 作業用のオーバーオール、膝のとこがちょっと破けてる。
いつから破れてたんだろう。
三条くんにも見られたかな。
今夜、縫って直しておこう。
直すといえば、壊れた燻蒸器の修理、いつ持って行くって言ってたっけ。
確か、なん台かあったはず。
えっと、納屋の一番手前に……、あった。
ぜんぶで三台。ちゃんとビニールひもで印をつけてある。
お母さん、なんでもきちんきちんとしてるな。すごい。
ハウスの手前のホースも、どこか一か所、ちっちゃな穴が開いてるって翔太が言ってたよね。
テープで応急処置しといたって。
今週は、この列のハウス。
うわ、ちょっと暑い。
屋根ビニールの裾を少し上げといたほうがいいかも。
キレイな色のイチゴたち。
有名な銘柄じゃないけど、あたしたち一家の愛情がいっぱい詰まってる。
そうね。
『ガオカ』の子たちがひと粒いくらで売られる有名銘柄のイチゴだとしたら、この子たちはあたしたちと同じ、平凡でどこにでも居る普通の子。
でも、普通だからこそ、素直で正直で素朴な子で居られる。
摘み取るときの手のひらに転ぶ感触は、とても楽し気でわくわくしている感じ。
でも、あたしはこの子たちが……、この子たちが……。
本当は、大嫌い。
だめだ。
また涙が。
この子たちが居なければ、お父さんは死ななかったのに。
この子たちが居なければ、お母さんは倒れなかったのに。
どうしてあたしは、この子たちをここへ呼んでしまったんだろう。
ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ、あたしのせいだ。
あたしが生まれてこなければ――。
「おい、イチゴ」
突然、後ろから響いた透き通った声。
驚いて振り向く。
「さ、三条くんっ?」




