2-4 ぜんぶ、ぜんぶ、あたしのせいだ!(2)
『イチゴ、安心しろ。母ちゃんは命に別状はないらしい。いまから吉松の親父が迎えに来る。弟たちは俺がみといてやるから、お前は病院へ行ってこい』
怖かった。
また病院へ行って、お母さんの顔に白い布が掛けられていたらどうしようって、それが頭の中をぐるぐる回って肩が震えた。
三条くんがあたしの頭にそっと手を乗せて、『大丈夫だ』って言ってくれた。
お母さんはたぶん、お父さんが亡くなってからずっと今日まで、ぎりぎりいっぱいで頑張って来たんだと思う。
顔には出さないで、あたしたちのためにいつも笑顔で居てくれたお母さん。
あたしは、なんにもできない。
お母さんが少しでも楽になるようにって、ほんの少しお手伝いをすることでしか役に立てない。
病室のお母さんは、何度も『ごめんね。ごめんね』って言って、あたしの手を握った。
でも、これもぜんぶあたしのせいだ。
あたしが生まれてこなかったらお父さんは死ななかったし、お母さんもこんなに辛い思いをしなくて済んだ。
ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ、あたしのせい。
『――もしもし? あ、先生、ごめんなさい。宝満です。昨日、お母さんが入院しちゃって、農園のお仕事とかあって、今日、どうしても学校に行けなくって――』
仕方なく、今日は学校を休んだ。
入院中のお母さんのお世話と、イチゴの収穫。お昼の間に、摘めるだけ摘んどかないと。
そのほかにも、やることはいっぱいある。
ちょうど明日からはゴールデンウィーク。
その期間中はずっと、隣町で行われる二町合同直売イベントに参加して、摘みたてイチゴをたくさん販売する予定だった。
お母さん、楽しみにしてたのにな。
せっかく組合の人がみんなで準備してきたイベントだったし、せめてあたしと晃だけでも代わりに行きたいって翔太のお父さんに話したら、いろいろ考えて、結局、翔太のお父さんが代わりに行ってくれることになった。
とりあえず、今日は通常の収穫と箱詰め。そして、ほかのいろんなお仕事。
「すみません。園長先生、急にお願いして」
「いえ、大丈夫ですよ? すぐそこで別の園児を乗せるんで。お母さん、大変ですね。お大事に。さ、光輝くん、行ってきますしましょ」
陽介はひとりで登校できるけど、光輝はどうしても無理。
晃が登校途中に保育園まで連れて行くって言ってくれたけど、保育園は中学校とはまったく反対方向だし、それに晃の登校時間に合わせたらものすごく早く保育園に着いてしまうし……。
あとで歩いて連れて行きますと保育園に電話したら、お迎えのバスを農園の前で止めてくれるってことになって、ほんと助かった。
「日向ちゃん、お母さんの具合、どう?」
「あ、山家さん」
庭へ戻ると、お隣のアパートの二階から、いつものほんわか顔が見下ろした。
しばらくぶり。
なんか、すっごく大変な仕事を抱えてるって言ってたっけ。
「え? どうして知ってるの?」
「隣の聖弥くんから聞いたよ。昨日、けっこう帰りが遅かったからどうしたのって尋ねたら、宝満家の弟たちの面倒みてたって言うもんで……、ちょっとだけ事情を聞いた」
「そうなんだ。三条くん、いろいろあってたまたまうちに寄ってて。山家さんと三条くん、交流あるんだね」
「お隣さんだからねぇ。たまに彼の部屋にお邪魔して、いろいろ話してるんだよ。お母さんが居ないと、出荷がもっと大変になるね。俺、来週になったら手伝えるから」




