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2-3 あたしのカレー、いっぱい食べて!(5)

 すると、陽介の頭に手を置いた三条くんが、晃の顔を覗き見上げた。

「いや、実はそうでもないぞ? うちのクラスに、なん人かイチゴが可愛いって言ってるやつらがいる。俺の顔にバッグを投げつけたときも、吉松がクラスの男にイチゴを紹介してるときだったんだぜ?」

「え? 翔太兄ちゃんが姉ちゃんを男に紹介っ? それはひどい」

 どういう意味だ。

「あたしのこと可愛いなんていう男の子が居るわけないじゃない」

「いや、イチゴ。ほんとにけっこういるんだぞ? ただ、みんな眼鏡掛けてるけどな」

 チーン。

 とうとう、晃もゲラゲラ笑いだした。

「くははっ、聖弥さん、傑作だ」

「でもなぁ、晃。実は俺もそいつらに同感なんだよ。ちなみに俺はコンタクトだけどな」

 えっ?

「へぇー、聖弥さん、変わってるなぁ。よかったな、姉ちゃん。聖弥さんも姉ちゃんが可愛いってさ」

「もうっ、ふたりしてからかわないでよっ!」

 三条くんが笑っている。

 晃もおなかを押さえて笑っている。

 陽介と光輝も、意味なんて分かってないくせに、一緒になってゲラゲラ笑っている。

 久しぶり。

 夕ご飯のときにみんながこんなに笑ったの、ほんと、いつぶりだろう。

 ちょっと嬉しい。

 まぁ、今日、三条くんを誘ってよかったかな。

 弟たちの、こんなに楽しそうな顔を久々に見られたし。

「んんっ……。三条くん、おかわりは?」

「あはは。あ、すまない。頼む」

 ううう、なんだかめっちゃ恥ずかしい。

 冗談だって分かってるのに、可愛いなんて言われ慣れてないから。

 真っ赤になった顔を片手で押さえながら、三条くんのお皿を受け取る。

 そして、頬から離した手をテーブルに置いて立ち上がろうとした、そのとき。

 突然鳴った、スマホ。

 居間と台所の境、バッグを投げ置いたすぐそばに転がっているあたしのスマホが、けたたましい着信音を響かせた。

 お母さんかな。

 チラッと、壁の時計を見た。

 もう、帰ってきて一時間半以上経っている。

 とうにお母さんも帰って来てないとおかしい時間なのに。

「あ、電話。三条くん、おかわり、ちょっと待ってね」

 お皿を置いて膝立でひょこひょことスマホまで近づくと、画面には『翔太のお父さん』の表示。

 なんだろう。

 ちょっと嫌な予感。

 思わず三条くんを見た。

 彼がきょとんとする。

 あたしは、そっとスマホを取り上げると、すぐにアイコンを押した。

「はい。もしもし?」

『あ、日向ちゃんか? いま、家か?』

「うん。みんな居るよ? どうしたの?」

 みんなが一斉にあたしを見た。

『あのな、落ち着いて聞けよ? お母さんが病院へ運ばれた。突然、倒れたみたいでな。いまから日向ちゃんたちを迎えに――』

「えっ? あのっ、ええぇぇーーっ?」


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