2-3 あたしのカレー、いっぱい食べて!(3)
あたしはすーっと大きく息を吸うと、それから居間へ顔を覗かせて弟ふたりに声を張り上げた。
「陽介っ、光輝っ、ほら、晃お兄ちゃんがお手伝いしてくれてるよっ? 偉いよね」
「あっ、ごめんなさいっ」
「あとであにめのひいてっ」
うんうん。
ふたりともいい子。
なぜか、三条くんはきょとんとしてあたしの顔を見ている。
なによ。
ちっちゃくても、ちゃんとお姉ちゃんなんだから。
元気いっぱいの陽介と光輝が唐揚げの大皿を運んで、まだ真面目な顔をしている晃がスプーンとお箸を並べてくれた。
三条くんは、夕ご飯はいつもお母さんとふたりきりだったって言ってた。
お父さんはいつも仕事で遅くて、一緒にご飯を食べたことがあまりないって。
「いただきまーす」
メニューは、宝満農園特製の野菜カレー。それと、特売品だった鶏モモ肉のゴロゴロ唐揚げ。サラダも作った。
「みんな、いっぱいおかわりしてね」
三条くんが、あたしが作ったカレーと唐揚げを食べてくれている。
よく見ると、彼は少しお箸の持ち方が個性的。先っぽのほうがクロスしちゃって、挟んでつまむのが苦手みたい。ちょっと可愛い。
味はどうだろう?
実を言うと、お料理は小学生のときからやってるけど、味付けにはあまり自信がない。
弟たちはみんな、なにを作っても絶対「美味しい」って言ってくれるから、正直な意見を聞かせてくれる人が居なくて。
どうかな。
三条くんの口に合う味かな。
いやいやいや、なにを考えているんだ、あたしは。
三条くんがすっとあたしのほうを見た。
ちょっとびっくりしたような顔。
「旨い。お前、料理上手なんだな」
「そっ、そう? よかった」
えっ? 美味しいっ?
やったぁ! 嬉しいっ! えへへっ!
うわっ、えへへっじゃないっ。
ついつい、無意識に喜んでしまった。
ダメだ。口元が緩んでしまう。
ググッと奥歯を噛んで土間のほうへ顔を向けると、すごい呆れ顔の晃と目が合った。
慌てて反対を向くと、ニコニコ顔の陽介が、マンガみたいに口の周りにカレーをつけたまま、ちょっと身を乗り出して三条くんを覗き見上げた。
「ねぇ、セイヤ兄ちゃんのなりたいものってなに? ピアノのせんせいじゃないの?」
どうも、さっきの話の続きみたい。
「ん? ピアノの先生にはならないな。うーん、ちょっと説明が難しい……。陽介、お前は大きくなったらなんになりたいんだ?」
「ぼく? ぼくは、おかあさんのおてつだいっ。いっしょにイチゴをつくるのっ」
へぇ、という顔をした三条くん。
すかさず光輝も参戦。
「こうきはぁ、おねえたんのおてつだいっ」
うわ、光輝はあたしのお手伝いなのね。
お姉ちゃん、嬉しいよぉ。
『子は親の道具じゃない』
三条くんのあの言葉。
どんな家庭なのか知らないけど、もしかしたら三条くんって、お父さんお母さんから道具のように扱われて、仕事の手伝いをさせられていたの?
さらに、へぇという顔をした三条くんが、正面に座っている晃に瞳を向ける。
「お前はなんになりたい? お前の夢はなんだ」
「あ?」
すごいしかめっ面の晃。
うわ、まだケンカ腰なのね。




