2-2 もしかしてアンタってマニアなの?(5)
「ただいまー」
「おー、ずいぶん土間が広いな。いかにも古民家って感じだ」
「あ、姉ちゃんおかえ……、え?」
玄関から入ってすぐの土間で、イチゴの箱の組み立てをしてくれていた弟一号機の晃。
あたしの後ろに続いて入って来た三条くんを見て、完全に固まっている。
なによ。その目は。
「男だ……。姉ちゃんが……、男を連れて来た」
「えーっと、そういうんじゃなくて」
いまからイベントの準備を終えて帰るというお母さんは、電話口でこの暴挙に即賛成だった。
『いつか話してた元芸能人? お母さんもいまから帰るから、先に食べてていいよ』
我ながら、どうしてあんなことを言ったのかと、ちょっと理解に苦しむ。
まぁ、どうせお母さんに今日彼に助けてもらったことを話さないといけないし、バッグを投げつけたお詫びも、思いきりビンタしたお詫びもしてないし……。
これは、小夜ちゃんには秘密にしておかないと、いよいよ大変なことに……。
「あのね? この人、お姉ちゃんが何度かすごく迷惑を掛けちゃった人なのよ。今日もとってもお世話になって……。で、ちょっと夕ご飯ご馳走しようと思って誘ったの。お母さんにはさっき電話はしたから」
「イケメンだ……。しかも……、すごいイケメン」
晃、ちゃんと聞いてよ。
そりゃ、いままで男の子って言えば、翔太くらいしかあたしの周りには居なかったからビックリするのも分かるけど、あたしだってもう高校一年生。
男友達のひとりやふたり……、いえ、ウソです。
見栄張りました。ごめんなさい。
立ち尽くす晃。
その手からポロリと落ちた、組み立てたばかりのイチゴの箱。
うわぁ、そんなマンガみたいな驚き方する?
「晃、あのね? この人は――」
あたしがまた口を開いた瞬間、突然、晃はハッとして三条くんの前までダッシュ!
おっ? と一瞬ひるむ三条くん。
ズバッとキヲツケした晃が、一年に一度見せるかどうかのキリリとした真面目顔になった。
三条くんより晃のほうが頭ひとつ低い。
唖然として見ていると、晃がグギギと三条くんを見上げて思いきり胸を張る。
「姉ちゃん、このイケメンは誰だ? ちゃんと紹介してくれ」
うわぁ、なにそれ。
なんか対抗心むき出しって感じ。
そんなにお姉ちゃんのこと好きだったの?
「えーっと、三条くんは、お姉ちゃんの同級生で、そこの山家さんのお隣の部屋に住んでて――」
そう紹介を始めると、ググッと顔を下げた三条くんが晃を睨みつけた。
晃がグッと肩を上げる。
「お前、イチゴの一番上の弟だな。たまに庭で吉松翔太とキャッチボールしてる」
「ああ? なんでそんなこと知ってんだ。それに、イチゴって……、それ、姉ちゃんのことか?」
「あと、いつも庭でベートーベンを追い回してる中くらいのと、縁側で絵本ばっかり見てるちっちゃいのが居るだろ」
「あぁ? ベートーベンのことまで知ってんのか。あんた、マニアかぁ?」
うわ、三条くんの部屋からそんなとこまで見えるんだ。
そしたら、あたしが縁側から足を踏み外してコケたり、物干しに頭をぶつけたりしているのも見られてたの?
あああ……、それじゃ、干している洗濯物もっ……。
あたしがハッとすると、三条くんがあたしをジロリと見下ろした。
「まぁ、なんとでも言え。洗濯物もよく見えるぞ。まだ姉ちゃんのイチゴ柄パンツにはお目にかかれてないけどな」
「なっ、なっ、なんだこの野郎はぁぁーーーっ!」




