2-2 もしかしてアンタってマニアなの?(4)
「ふん。あの日、保健室を出たあとすぐ、親父に電話したんだ。母親に知れる前に、俺から聞いたからもう連絡は要らないと学校に言ってくれって」
あー……、そういうこと。
仲がいいってわけじゃなさそうだけど、一応、お父さんは三条くんの味方ってことなんだね。
でも、そんなにお母さんに知られたくないなんて、三条くんのお母さんっていったいどんな人なんだろう。
「あ、えっと、そうなんだ。それで、お父さんがあたしのこと知ってたのね。と、とにかく、今日はホントにありがと」
「まぁ、小夜の代わりに掃除することになった埋め合わせだ。それと、こんな大金、学校に持って来るんじゃない」
いやいやいや、それよりもっと大きい額のお金をあなたは持って来ているじゃあーりませんか。そっくりそのままお返しします。
「う、うん。今後は気をつけるね。でも、どうして三条くんはそんなお金を持ってたの?」
「あ? これは独り暮らしの生活費だ。メシ代とか、そのほかもろもろ」
「生活費? そういえば、なんであのアパートで独り暮らししてるの? お家は近いんでしょ?」
「親父の勧めでな。まぁ、実のところ体よく追い出されたって感じだ。俺が居ないほうが、母親が穏やかに暮らせるんでな」
追い出された?
お父さんとは普通に話してたみたいだけど、お母さんと仲が悪いのかな……。
ちょっと、返す言葉がない。
「えっと、その……、そんな大事な生活費で立替えなんてさせちゃって……、ごめんなさい」
「え? お前、なんでもかんでも謝るんだな。気にするな」
なんか、複雑。
軽薄なのか優しいのか、ほんとよく読めない人。
「あああ、あの、ごっ、ご飯はどうしてるの?」
「メシか? 外食はあんまりしないな。買って来たものを食うことが多い。一番食うのは食パンだな」
「そ、そうなんだ」
ううう、ムズムズする。
これはいかん。あたしのお姉ちゃんモードが……。
待て待て待て。
この人は、あの『パンツ見せろ』の三条聖弥だ。
血迷ってはだめ。
でもでもでも、あたしのためにあんなに一生懸命に……。
「えっと、それならまだ今日の夕ご飯決めてないでしょ? 今日のお礼もしたいし、前のお詫びもしてないし、よかったらうちに夕ご飯食べに来ない?」
「は?」
うわぁぁ!
なにを言っているんだ、あたしはっ!
「今日はカレーと唐揚げなの。朝、下ごしらえして来たから、あとはちょいちょいっと仕上げるだけ」
いやいやいや、あたし、どうかしてるっ!
「お前がメシ作ってんのか。まぁ、それはありがたいが、そんなのお前の母親が賛同しないだろ。俺んちなら大変なことになるぞ?」
「大丈夫。お母さんにはいまから電話するから。たぶん歓迎してくれるよ?」
ちょっと待てっ。
お母さんには「そんなに親しくない」としか言ってないし、まだバッグを投げつけたことも話してないのにっ!
「そうか? お前の母親がほんとにいいのなら、邪魔させてもらうかな」
「うんっ。電話してみるねっ!」
いいい、いったいなにをやってるんだぁっ、あたしっ!




