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1-3 それってなんであたしなのっ?(3)

 あ……、これはちょっとマズい展開。

 三条くんの頭越し、歩道のずっと向こうに見えたのは、見覚えのある特徴的な坊主頭。

 うわ、なんでこのタイミングでっ。

「あ……、やばい。三条くん、ちょっと戻って?」

「は? なんでだ」

「え? なんでって、翔太が――」

 不思議そうに三条くんがこちらへ顔を向けたとき、もうその向こうには、息を切らせながら走って来るあの坊主頭が……。

 思わず声を上げた。

「おおお、おはようっ、翔太っ。あ、朝からランニング、偉いねっ!」

「おうっ、おはよ……って、え? ええっ?」

 三条くんの背中から斜めに顔を出したあたしを見て、ジャージ姿の翔太がギョッとして足を止めた。

「日向? え? コイツはこの前、女に囲まれていた……、ままま、まさかお前ら、イイ感じになったのかっ?」

「なによ、イイ感じってっ! そんなんじゃないっ!」

「それにお前、ケガしてんじゃねぇか! おいっ! 日向になにしやがったんだっ!」

 首に掛けたタオルの両端を引っ張って、大股で三条くんに喰って掛かる翔太。

 三条くんの肩がぎゅっと上がる。

「あ? 俺がなにしたって?」

 どどど、どうしてそうなるのっ?

 ちょっと待ってっ! 

「あのっ、翔太っ、これにはわけがあって――」 

「ごらぁぁーーっ! 日向をよこせぇぇ!」


「だからぁ、わけは話したでしょー?」

「いや、おかしいだろ。ニワトリを追ってよそ様の部屋に窓から入り込むバカがどこに居るんだよ」

 はい。ここに居ます。

 だってぇ、夢中だったんだもん。

 もうすぐ、お昼休みも終わり。

 ずいぶん遅れて学校へ着いたら、やっぱり翔太はものすごく不機嫌だった。

 昼休みの間に、今朝の出来事をちゃんと正直に話したんだけど、まったく信用してくれない。

 あたしの右スネには、ちょっと大げさなキズテープ。

 まぁ、ビックリするよね。

 翔太が一番嫌いな『ガオカのイケメン』に、あたしがガッツリおんぶされてたんだから。

 しかも彼はパジャマだったし。

「お前なぁ、そんな作り話が通用すると思ってんのか? それにその足のケガだってちょっとおかしいだろ。本当はどうやってケガさせられたんだよ!」

「だぁーかぁーらぁ、暗い部屋の中に飛び込んだときに、置いてあったテーブルにぶつかったって言ったじゃない」

「いや、それはバットで叩かれた痕だっ!」

 ベッドはあったけど、バットはありませんでした。

 もしかして、野球部ってそんなことやってるの? まじ、野蛮。

 どうも翔太は、あたしが三条くんとなにかあって、彼からケガさせられたと疑ってるみたい。

 三条くんは、あたしを家まで運んでくれていたのに、どうやったらそんな考えになるんだろう。

 翔太、理解力なさすぎ。

 結局、あのあと、翔太がひったくるようにあたしを三条くんから引き離して、あたしを家まで運んでくれた。

 ちょうど市場から帰って来たお母さんがすごくビックリして、それからそのまま軽トラックで病院へ連れて行かれて。

 結局、弟たちは全員そのまま朝寝坊。

 翔太のお父さんが応援に駆けつけてくれて、弟たちを起こして学校と保育園へ送ってくれたみたい。

 レントゲンを撮ってもらったけど、骨に異常はないって。

「ジャム子っ、音楽室行くわよっ!」

「あ、小夜ちゃん。そうだった。五限目は音楽だったね」

「早くしなさいっ。ほんとトロいんだから」

 いやー、小夜ちゃんよりはなんでもテキパキこなせる自信はあるけど。


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