1-2 なんでアンタがお隣さんっ?(4)
「あたしのファン? あはは、ファンかぁ、嬉しいな。でも、あたしじゃなくて農園のファンね」
三条くんほど熱烈なファンに囲まれているわけじゃないけど、ファンだなんて言われたらやっぱり嬉しい。えへへ。
「さて、そろそろ仕事に戻るかなぁ。取り込みの邪魔してごめん。お母さんに宜しく伝えといて。それと、あんまり無理しちゃだめだよ?」
「あはは。無理なんてしてないもん。お仕事頑張ってね」
グビッと残りのビールを飲んだ山家さんは、いつものようにニコニコ顔で軽く手を上げて、それからピョンとお部屋の中に引っ込んだ。
窓は開いたまま。
いつも開いたままだから、たぶん朝のニワトリの鳴き声がかなりうるさいんじゃないかな。
「あ、今日も点いてる」
山家さんが引っ込んだ、左側の窓。
アパートの二階には、その右にもうひとつ窓がある。
一階は納屋になっていて、お部屋があるのは二階だけ。
確か、右の部屋はずっと前から空き部屋だったはず。
なのに、最近、その右側の部屋にときどき灯りが点いていることに気がついた。
窓のカーテンは空き部屋のときもずっと掛けられたままだったから、新しく誰かが引っ越してきたなんてまったく気がつかなかったな。
それにしても、もしなにも知らずにあの部屋を借りたのなら、ちょっと申し訳ない。
朝になると、それはそれは度肝を抜かれる……、あの声が高らかに響き渡るから。
「姉ちゃん、ご飯よそったぞー。まだー?」
「お姉ちゃぁん、ごはんたべよー」
「おねぇたん、ごはんー」
うおー、可愛い弟たちよ。
いただきますを待ってくれているのね。
こんな可愛い弟たちも、ビニールハウスの中で汗だくになって一生懸命に手伝ってくれる。
あたしも頑張らなきゃ。
「はぁい。お待たせぇ。よいしょっ」
「よし、俺が運んでやる」
「あー、兄ちゃん、ぼくもぉ」
「いっしょにはこぶぅ」
重たいカゴを受け取って、奥へと持って行ってくれた弟たち。
その背中を見ながら縁側にあがったとき、なぜか気になってもう一度アパートのほうを振り返った。
右側の窓。
カーテンのすき間から、ちょっとだけ見えるシーリングの白い光。
さらに、そのずっと向こうに目をやると、そこは目が覚めるような満天の星空。
とっても素敵。
そしてなぜか、三条くんもこの同じ空を見ているのかなぁなんて、そんな考えが一瞬よぎって、なにを考えているんだあたしはと、ちょっと自分に呆れてしまった。
「さ、いただきますしようね」
コッ、コッ、コケーッ、コッコッ……。
あら、もう朝?
なんか最近、朝になるのがすごく早い気がする。
農家の朝は早い。
お母さんはもうとっくに起きて、市場へイチゴを出しに行っているはず。
ううう、まだ眠いけど、あたしはいまから朝ご飯の準備。
昨日の肉じゃががまだ残ってたから、申し訳ないけど朝も食べてもらおう。
横を見ると、小学三年の陽介と、保育園年長さんの光輝のコンビが布団からはみ出して、畳の上で団子になっていた。
ううう、カワユすぎる。
ほんと、この姿は最高に可愛いんだけど、ふたりともなかなか起きてくれないの。




