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序・不羈自由

 不羈自由ふきじゆう

 何者にも縛られず、自由なこと。または、普通よりもすぐれていた性質のために束縛することができないこと。

「不羈」は繋ぎ止めることができず、自由なこと。



 そういう存在に、少なからず昔憧れるなんて、誰しもある。

 大人になるにつれ、そんなものは無理であることに気づく。

 元の世界は、束縛が多い。その点で言えば、危険は多いがここは自由であるかもしれない。

 それならば、鬼才の弟弟子の様になれるかもと考え、珍しく胸を踊らせたのは、来て3日後ぐらいだ。

 元の世界では、本職は翻訳家で、趣味のように退魔師をしていた。

 ――――本業にするには、自己犠牲が趣味のような師匠にも、少しでも愛したら恐ろしく執着する兄弟子にもなれない。だが、弟弟子が副業にしようとしていたから、翻訳家になった。

 自分にとって、彼はその体現者で、今もなお変わらない。

 どこから書くべきか迷ったが、やはり、時系列にここに来たときの事から今までを書く。

 そして、出来ればゆるしてほしいと思っている。



 …………と、いう、この世界に来た当初の事柄を解決したので、今までの謝罪文を書いたと六法全書並の分厚い紙束をこうして相棒から貰って、あまりの分厚さにドン引きしているがどうにか気持ちを奮い立たせ、一枚目の冒頭を読んでいるわけだが、そもそも、こちらも謝らなければいけないことがあるので、お互い様だと断わりたかった。のだが――――

「――――大方知ってんだよなぁ…………」

 彼の弟弟子は、本当におそろしく有能で、異世界転移当日の夜に、己の夢に出て来て、彼の事を大体語って、

『ここに居ても犠牲になって、ヤツの暴走が悪化するので、面倒見てやってください。

 保険を渡したいところですが、彼にバレると私が面倒くさいので出来ませんが、何かあれば、私の名で手紙を書いて適当に置いたら数分後には届くように、連絡用の式だけはそちらに送ってあります。

 くれぐれも、私のこと、彼に言わないでください。何故か神聖化して、毎日毎日崇めたアイドルの推しへの長文メールみたいなもの兄弟子に送られる気持ちわかります?

 理解していただけますね』

 げんなりと、項垂れる相手が可哀想すぎるが、そもそも、なんだかんだ心配でこうやって現れるからそうなったのではと、自業自得だとも思う。

 後、漆黒の長髪を軽く後ろで結わえ、涼やかな目元の知的美人で、高身長に加えて、細身に見えて程よく筋肉のついた相手は、最早芸術の域と言っても差し支えないのではと思うレベルであり、神聖化しても仕方ないのではと納得するのだが。

「あー…………仕方がないか…………」

 頼まれたとはいえ彼のことを言わなかった事もそうだが、相手の深そうな事情をあったばかりの奴が知っているのもあまりいい気はしないのではないかと、あえて深入りした会話をしなかったツケがこの分厚さなのだろう。

 いい機会だし、今までを振り返りながら読むことにしようと、分厚すぎる謝罪文の続きに目を向けた。

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