(1)
新作に取りかかったものの仕事が忙しく、かなりのんびりペースでの投稿となります。1週間に1話くらい……?
気長にお付き合いいただけると嬉しいです。
半人の世界は神の手でつくられた。
天変地異により人類が死を迎えた日、神は最期まで祈りを捧げた一人の女性を救い上げ、新しい地へ送り出した。
リンゴの木が立つ丘で女性は動物たちと言葉をかわし、心を通わせ、もいだ実をともにかじった。まもなく女性は身ごもると、次々に半人を産んでいった。
以来『始まりの母』の体には、リンゴが宿っているという。
さわやかな風が、肩のあたりで波打つ青い髪に口づけ、揺らしていく。リンゴの花と葉を意匠とした校章を胸につけ、オストレアは銀色の瞳をきらめかせながら校門の開かれた先を見つめた。
(ついに来たんだわ……)
半人世界の中心にあるここメソス・スコラは、十六歳になる年から上限なく通うことができる教育機関である。
この日のために必死で歩く練習をした。使い慣れない足での歩行はつらく、何度もくじけそうになったが、今こうして立ってみると感慨深さにめまいすらしてくる。
「それじゃあ、お嬢さん。しっかり励めよ」
「ありがとうございました」
ここまで人力車を引いてきてくれた半牛族の壮年の男と別れ、続々と校門をくぐる新入生の流れにやや遅れながら、一歩ずつ地面を確かめるように踏んでいく。まもなく校舎を前に、受付を待つ生徒の長い列が見えた。
最後尾と思しきところに並ぼうとしたオストレアは、詰めようとして何かにボンッとぶつかった。油断していたので勢いに負けて尻をついてしまう。驚いてあたりをきょろきょろしていると、目の前がゆらりとゆがんで人の姿が現れた。
「ごめん、大丈夫?」
手を差し出してきたのは、緑色の髪に薄青色の瞳の少年だった。
「ぼうっとしてたら、つい溶け込んじゃって」
「……あなた、半避役族?」
手を借りて立ち上がったオストレアの問いに、「そうだよ」と相手がにこりと笑う。物静かな雰囲気の少年はカシェと名乗った。
「私はオストレア。半魚族よ」
そのまま握手をして自己紹介したオストレアに、カシェが目をみはる。
「声で力を発揮する唯一の種族だね。やっぱり歌は得意?」
「けっこう自信はあるほうだけど、どうかなあ。でも歌うのは大好きよ」
それにしても見事な体色変化だ。半避役族は隠密を得手とする種族だが、ここまできれいに姿を消されると本当にわからない。
聞けば同い年だった。落ち着いた容貌としゃべり方のせいか、とても話しやすくて、受付の順番を待つ間オストレアはカシェと雑談して過ごした。
「カシェは何科が希望なの?」
「僕はどこでもかまわないよ。オストレアは?」
「私は絶対に知識科がいい」
水の中で生きる半魚族は紙ではなく石板に文字を彫り、また口承でさまざまなことを受け継いでいる。そのため耳で覚える力は優れているが、オストレアは紙の書物にあこがれてメソス・スコラへの入学を決めたのだ。
初めて入学する場合は適性検査により所属する科が決まるが、四年後に修了証をもらえば、その後は他の科に自由に再入学できる。同じ科でさらに学びたい場合は研究生として在籍することも可能だった。
父は知識科、母は芸術科を卒業している。自分の両耳につけている貝の耳飾りも母が作成したと言うと、カシェは「細工が細かくてきれいだね」と感心した顔つきになった。
いよいよカシェに適性検査の番がまわってきた。入学書類を渡し、受付に置かれた石板に右手を置くと、石板が赤く輝いた。
「戦闘科」
職員が書類に科名を書いてカシェに返す。見た目にそぐわない科だったので、オストレアは意外に思った。
カシェも少し驚いた表情を浮かべたものの、こだわりがないのは確かなようであっさり受け入れた。
次は自分だ。何となく視線を感じてふり返ると、後ろに並んでいた黒い眼鏡をかけた男の子が口元をほころばせたので、つられてにこりとしてから、オストレアは受付に半魚族だけが使う石版書類を差し出した。
一度深呼吸をし、はやる気持ちを抑えながら適性検査の石板にそっと右手を当てる。
「――えっ……!?」
緑色に光ると期待していた石板の色は、赤だった。
「戦闘科」
「ちょ、ちょっと待ってくださいっ」
記入しようとした職員をとめ、オストレアはもう一回お願いしますと頼んだ。
右手を服でこすって石板に手を置く。しかし今度も赤く反応した。
「う、嘘……待って、もう一回!」
「何度やっても同じだと思うけどね」
職員があきれ顔でため息をつく。オストレアは左手で確かめた。
結果、やはり石板の色は赤だった。
「な、なんで……」
「戦闘――」
「嫌、だめっ、もう一回!」
しつこく食い下がるオストレアに、後ろの生徒たちから「早くしろよ」と文句が上がる。
「オストレア、行こうよ」とカシェも誘ったが、オストレアは涙目でかぶりを振った。
自分はここで図書館通いを満喫したいのだ。そもそも、戦うなんて無理だ。
「ねえ、君」
再挑戦しようとしたとき、赤いベストを着た半馬族の男子生徒が話しかけてきた。ふり返ると、他にも半馬が数人寄ってきている。
「よかったら――」
そこへ新たに蹄の音が聞こえた。周囲がざわつき、逃げるように場をあける。突進してきたのはまたもや半馬だ。
なぜこんなに半馬族が集まってくるのか。自分は彼らに何かしただろうか。
目をみはったままおびえるオストレアを踏みつぶすこともなく、相手はあざやかに停止した。
「受付業務を妨害している奴というのは、お前か」
白金色の髪が陽光にきらめいている。少し日焼けした色の肌の上に赤いベストを着たその生徒は、金色の双眸を細めた。
職員がオストレアの持参した石版に戦闘科と記す。一番にそれを受け取った男子生徒は「行くぞ」と言うなりオストレアを片手で抱き上げ、自身の背中に放り投げた。
突然のことに悲鳴すら出せなかったオストレアは、いきなり疾走を始めた男子生徒に惑乱した。
「――やっ、待って、待って!」
いったい何が起きているのかわからない。
「カシェ!」
せめて親しくなった生徒と一緒にという願いもむなしく、唖然と見送るカシェと他の半馬たちからどんどん遠ざかる。おまけにスカートの裾がめくれて太腿までがあらわになった。
「スカートが! お願い、スカートが……!」
とまってくれと必死に訴えるオストレアに、男子生徒は吐き捨てた。
「いちいち騒ぐな。お前の股に食いつくのは同族くらいだ」
「げっ、下品だわっ」
あまりな言い方にオストレアは真っ赤になって怒ったが、男子生徒はあやまりもしない。腹が立ってさらに抗議しようとしたところで、いきなり男子生徒が跳ねた。慌てて相手の胴にしがみついたオストレアが斜め下を見やると、地面がもこもこと日陰のほうへ移動しながら盛り上がり、もぐらが顔を出した。半鼢族だ。
もぐらにけつまずくのを寸前で回避した半馬にうっかり感心しかけ、いやいやと頭を振る。そもそもこの状況自体がおかしいのだ。
なぜこんなことになってしまったのか。どこに向かっているのかすら聞けず、オストレアはただ落ちないようにするだけで精一杯だった。
まもなく男子生徒は校舎内に入った。階段を一気に駆け上がってから、一室の前でようやく脚をとめる。その頃には、オストレアはすっかり疲弊してしまっていた。
「降りろ」
「……無理」
ぐったりと寄りかかるように抱き着いたままオストレアがぼそりとつぶやくと、男子生徒が舌打ちした。馬体から人の姿に変わり、普通におんぶしている状態で男子生徒がしゃがんだので、オストレアはどうにか降りることができた。
床に足をついたものの、ふらりとよろめく。崩れるように座り込みかけたところで腕をつかまれた。男子生徒はそのまま扉をたたきもせずに開け、オストレアを引きずるようにして入室した。
「ご苦労様」
奥の大机の前に座っているのは、艷やかな黒髪を肩より少し上で切りそろえた女性だった。口元はゆるく上向きに弧を描いているが、濃い赤紫色の瞳は冷静というより冷徹な印象を受ける。その傍らには長剣をはいた深緋色の髪の若い男性が姿勢よく立ち、また机の両脇にさまざまな種族の生徒が並んでいた。
「オストレア!」
その中の一人がぱっと走り寄ってきた。二つに分けてくくった白緑色の長い髪が毛先だけ波打っている女生徒は同族だ。
「モラ姉さん!」
幼い頃によく遊んでもらった二歳年上の幼馴染と、オストレアはしっかり抱き合った。
「大丈夫? 何だかとても疲れてるみたい」
モラはオストレアの髪を優しくなでて顔をのぞき込み、半馬の男子生徒をきっとにらんだ。
「ちょっとタキュス、雑に扱わないでって言ったでしょ」
「普通に乗せただけだが」
黒髪の女性にオストレアの石版を提出しながら不本意げに眉をひそめる男子生徒に、オストレアはどこがと口をとがらせた。
「あんなに待ってくれって頼んだのに全然聞いてくれなかったじゃない。しかもいきなり背中に放り投げて勝手に乗せて!」
「覆らない結果にしつこく再検査を求めるお前のほうが、よほど問題だと思うがな」
厳しい指摘にぐっと言葉に詰まる。悔しさを我慢して震えるオストレアの肩を抱き、モラが反論した。
「この子は知識科に入りたくて歩行を頑張ってたのよ。それに戦闘科は……つらいと思うわ」
「深刻な訳有りかい?」
甘やかな声で尋ねたのは、襟足の長い赤い髪に青緑色の瞳の男子生徒だった。背中に大きな赤い翼が生えているので、半鳥族だ。
モラの気づかう視線に、オストレアは唇をかんだ。
「小さい頃にバルバルス・オースに襲われて、目の前でたくさんの友達が呑まれたの。助けに来たこの子のお母さんも……行方不明で」
だからバルバルス・オースなんて見たくもないはずよというモラの話に、室内が痛ましげな空気に染まった。
「それならなおのこと、戦うすべを身につけたほうがいいと思うわ」
唯一座っている黒髪の女性が、机の上で指を組んだ。
「バルバルス・オースは逃がした獲物を執念深く探すから、いずれあなたを見つける。同じ目に遭いたくなければ、あなた自身があれを倒すしかない」
オストレアはぞくりとした。バルバルス・オースは一度認識した獲物を決して忘れないと言われている。
「なあ、行方不明って? 食われたわけじゃないのか?」
青い眼鏡をかけた少年が首をかしげる。色付き眼鏡は半鼢族の証だ。
「タオヘン」
追及するなとモラがいさめる。しかし黒髪の女性はまっすぐにオストレアを見据えた。
「総母だったのね?」
断言に近い問いに、場がざわりと揺れた。
『始まりの母』――通称『総母』。普通は同じ種族間でしか子孫を残せないが、この女性はすべての種族の子を産むことができる。それは忌み嫌われるバルバルス・オースにもあてはまる。
最後に母を見たのは、自分たちを助けるために囮になり、バルバルス・オースに捕まった姿だった。
母は戻ってこなかった。食われたか、あるいは……。
食われたほうがましかもしれない。おぞましいバルバルス・オースの子をなすくらいなら――自分だったら死を選ぶ。
「なるほど。どうりで」と黒髪の女性がオストレアの書類を指でたたき、卓上の石板に視線を滑らせた。
「めったにお目にかかれないほどの歌力量よ。すごい逸材が来たと思ったら何度も適性検査をやり直すから、タキュスに迎えに行かせたんだけど」
石板は受付とつながっていて、結果が表示されるという。自分が無駄な抵抗をしていたのが丸わかりだったことに、オストレアは赤面してうつむいた。
あらゆる種族を引きつける魅力を備えた総母の子は、優秀な素質をもって生まれてくることが多い。どうせなら戦いに必要な歌力ではなく知力が欲しかったと落ち込みかけたオストレアは、黒髪の女性の次の言葉にかたまった。
「訓練が進んだら、あなたはタキュスと組んでもらうわ」
「組むって、どういうことですか?」
「半魚族は水の中では速いけど、陸ではどうしても遅れをとるから、半馬族に乗って移動するのよ」
「ええーっ……」
露骨に渋面したオストレアに、半鳥の男子生徒が意外そうに目をみはった。
「珍しいな。タキュスに乗りたがる女の子はすごく多いのに」
確かに顔立ちは凛々しく整っているが、性格に難がある。
「だって、すごく失礼なことを言うし……」
「あー」と皆が納得顔でうなずく。
「ここに無理やり連れてこられたときも、スカートがめくれるから待ってってお願いしたのに、お前のま……股なんか、同族以外見向きもしないんだからいちいち騒ぐなって」
股という言葉すら口にするのが恥ずかしい。むくれるオストレアに、しかし一同はどっと笑った。
「タキュス、お前はもう少し婉曲的な言い方を覚えないとだめだぞ」
涙目で腹をかかえて笑いながら半鳥の男子生徒が注意する。
「事実だろうが。そもそも戦闘科なのにスカートを履いているほうが悪い」
「私は知識科に入るつもりだったの!」
どれだけ抗議しても、半馬の男子生徒には響いていないらしい。
「それだけ遠慮なく言えるなら大丈夫ね」
黒髪の女性が瞳をやわらげた。
「まあ、ここまでたどり着けた時点で、ほぼ決まりだったんだけど」
首を傾けるオストレアに、半鳥の男子生徒が教えた。
「君がタキュスに振り落とされなかったからだよ」
えっ、とオストレアは青ざめた。この半馬は横柄なだけでなく、乗せた相手が転げ落ちたら置き去りにするのか。それどころか、勝手に乗せておいて気に入らなければ払いのけるつもりだったとは。
「半馬族は、直感的に信用できない相手は乗せないのよ。背中を預けるから」
一方的に想いを寄せてくる相手はもちろん、何となく好きになれそうにない相手にしがみつかれると寒気がするのだと。
「あなたをこの戦闘班に加えるかどうかの試験でもあったの。タキュスが平気なら問題ないわね」
大ありですとのどまで出かかったが、ちらと見上げると半馬と目が合い、オストレアはどきりとした。
顔はいいのだ。本当に、顔だけは。
(……そうだ!)
「好きだ好きだとわざと連呼して嫌気がさすように仕向ければいいとか、くだらないことを考えているだろう」
まさにそのままずばり言い当てられ、オストレアは両手で頬をはさんだ。
「何で………!?」
「そんな馬鹿馬鹿しい策を思いつくような頭で知識科に入りたいなどと、よく言えたものだ」
白金の髪をかき上げながらタキュスがため息をつく。
「馬鹿馬鹿しいとは何よ? こっちは切実なのよっ」
オストレアがタキュスにかみついたところで、扉をたたく音がした。入ってきたのはカシェと、白金色の髪に黄赤色の瞳の女生徒だった。
「そろったわね」
黒髪の女性の呼びかけに、オストレアとカシェ以外の生徒がさっと二列に並んだ。急な展開にとまどうオストレアの隣に来たカシェが、周囲にならって黒髪の女性のほうを向いて立ったので、オストレアも慌ててまねる。
「カエルラ・マールム、新入生二名を新たに加え、計八名にて任務に励みます」
カシェとともに現れた女生徒が宣言する。黒髪の女性がうなずいたので、女生徒はオストレアたちをふり返った。
「ようこそ、私たちの班へ。あなたたちを歓迎するわ」
女生徒が微笑する。長い白金色の髪を後ろで一つに編んでいる背の高い彼女を正面から見て、オストレアは思わず半馬族の男子生徒に視線を投げた。
「自己紹介はまだね? 私はカエルラ・マールムの班長、半馬族のソンリッサよ。リサと呼んでね。それからあなたの隣にいるのは私の弟で、タキュスというの」
ああやはりとオストレアは思った。髪の色だけでなく、面立ちも似ていたのだ。
次に半鳥族の男子生徒が一歩前へ出て、胸に手を当てて軽くお辞儀をした。
「副班長のエグルだ。見てのとおり半鳥族だよ。かわいい後輩を迎えられて嬉しいよ」
エグルは容貌も声も甘く、タキュスとはまた違った魅力があった。
「私はモラ。半魚族で唱法担当よ。オストレア、一緒に頑張ろうね」
オストレアはためらいがちにうなずいた。所属する科はともかく、家が隣同士で仲良くしてくれたモラがいるのは心強い。
「俺は半熊族のマスィーフだ。力仕事は任せてくれ」
こげ茶色の短髪に暗緑色の瞳のマスィーフは、一番大柄で声も太く迫力があったが、口調は穏やかだった。
「俺はタオヘン。半鼢族だ。よろしく、後輩」
半鼢族の特徴である色付き眼鏡を指でちょいちょいと揺らし、タオヘンがにかっと笑う。茶色い髪の彼はどことなくお調子者風だった。今まで一番年下だったからか、今回自分より若い新入生が加わったことを誰よりも喜んでいるように見える。
先輩たちの挨拶を受け、オストレアとカシェは顔を見合わせた。
「半避役族のカシェです。少しでも早くお役に立てるよう、努力します」
落ち着いたさまでカシェが堂々と名乗る。
「半魚族のオストレアです……よろしくお願いします」
もう覚悟を決めるよりない。カシェに続き、オストレアも皆に向かって頭を下げた。班全員の顔合わせが済み、最後に黒髪の女性が言った。
「私は戦闘科長のオペラツィオーネ。半狼族です。こちらは私の補佐をしている半犬族のフィデルマン」
「よろしくお願いします」
フィデルマンが灰青色の瞳を細めて静かに微笑む。
オストレアとカシェは戦闘科の訓練の流れと戦闘班の活動についての説明を受け、この場はひとまず解散となった。明日からいよいよ本格的に授業が始まる。知識科にはたっぷりすぎるほど未練があるが、修了証が手に入れば行けるからと、気持ちを切り替えることにした。
「オストレア、寮に案内するわ。あなたは私の隣部屋よ」
戦闘科は入学初日に戦闘班が決まり、新入生は同じ班の先輩に生活面の面倒を見てもらう。顔なじみのモラと部屋が近いと聞き、オストレアはほっとした。カシェの世話はタオヘンが引き受けるという。
先にメソス・スコラに送られていた荷物を取りに行こうとモラに誘われたところで、オストレアはオペラツィオーネに呼びとめられた。
「もしかして、あなた……」
すべてを見透かすような深い赤紫色の双眸に凝視され、オストレアは息を詰めた。
「……いいわ。行きなさい」
詳しく聞かれなかったことに、オストレアは密かに胸をなでおろした。できるだけ顔に出さないようにしたかったが、昔から考えていることがわかりやすいとよく言われていたので、やはり緊張した。
退室し、そっと耳飾りに触れる。父からは好きに生きていいと言われたが、メソス・スコラで平凡にひたむきに勉学に集中するためにも、母が残してくれたこれだけは失くさないようにしなければと、オストレアは改めて思った。