第99話到着しますか?
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瞬間移動というのは、体験してみると夢から覚めた時に近しい。
クロノの力。あるいは淡くも神々しい光と呼ぶべきものが袈刃音の肉体を包み、少年はその朝日のような眩しさに一瞬だけ瞼を閉じる。
すると、次に瞼を持ち上げた時には、そこはもうさっきまでと完全に違う場所となっている。
そしてそれまで認識していた世界が泡のように消え、新たに押し寄せて来た大量の視覚情報に脳が混乱を引き起こすのだ。
理解を欲した焦げ茶色の瞳が左右を素早く往復する。
「ここって……」
袈刃音が送られたのはとあるビルの入り口前だった。
転移は藍刃愛羅の携帯のGPS情報を元に行われたが、彼女の正確な位置までは分からない。
クロノの裁量で近い場所へ放り込まれたのだろう。
――違和感を覚えたのは、その直後だった。
ここには何もないのだ。
情報が確かならば旭達を襲ったのは多分トゥラヌアだろう。
だが、奴が暴れたというにはあの荒々しい斬撃の形跡がどこにもない。
「あぁ、やっぱり来てくれた……袈刃音君」
「ッ!?」
振り向くと愛羅がいた。
「藍刃さん?」
「えへへ、来てくれたぁ!来てくれたぁ!やっぱり、私には袈刃音君しか……」
何か、様子がおかしかった。
呼び掛けに応じないのもそうだが、それ以前の根本的な所で何かが。
「ねぇ袈刃音君、来てよ。こっちに、私の所に。お願い、触れて、満たして、愛して?」
咄嗟に言葉では言い表せない。
だが、彼女が纏う底知れない危うさは本物で、
「そう、来てくれないんだ……。でもいいの、だって私、今はダメでも最後には一緒になれるって知ってるから」
だから、その嫌な予感は間を置かずして的中する事となった。
「きっと一緒に、ずっと一緒に。けど、待ちきれないから――それまでは鬼ごっこ、しよ?」
最初は一体。物陰から現れたゾンビが視界の端に映った。
そして、また一体。また一体。
ゆらり、ゆらり。
ゆらり、ゆらり、ゆらり。
ゆらり、ゆらり、ゆらり、ゆらり。
奴等はわらわらと、至る場所から音もなく姿を現した。
「ッ!?そ、そんな、何でこんな序盤に藍刃さん、その力……!」
袈刃音は目を見開いた。
だってそれは、その現象を起こせる力は、現状一つしか有り得なかったからだ。
「【死霊術】ッ」
少年を囲む形で佇む生ける屍共。
亡者を統べる少女は右手をゆっくりと眼前に突き出し、口の端をニヤリと吊り上げた。
文月です、何とか年末最後に投稿が出来ました。
ホントはもう1話投稿したかったのですが、それは来年のお楽しみという事で。
それでは皆様、良いお年を!
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《完了》
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