第96話伝えますか?
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「待てよ、瑠璃」
不意に声が聞こえたかと思うと、廊下の曲がり角から人影が現れ、瑠璃は立ち止った。
「れ、恋?何でここに」
「別に。出掛ける理由もねぇし……いたら悪いかよ」
ここからでは死角になっていて見えないが、角を曲がった先には一階へ続く階段がある。
恐らく壁に隠れて、瑠璃との今までのやり取りを聞いていたのだろう。
恋は、はぐらかすように言葉を返した。
「……それより、どこ行くつもりだよ。外はゾンビだらけだってのに」
「聞いてたんなら分かるでしょ、響を捜しによ」
「あっそ。じゃあ、あの手のかかる年下組の面倒見るのは誰だよ。満実お母さん、動けないんだろ。一番の年長者が勝手にいなくなってどうすんだ」
「み、三浦君がいるじゃない!それに、その、千華ちゃんとか、真白さんとか……。一日くらい大丈夫に決まって――」
「ゾンビ」
「へ?」
「俺はこの前、外に出て数時間もしない内にゾンビになりかけた。で、袈刃音が助けに来なきゃ本当になってた。……今一人で出て行ったら、多分、一日どころか半日もしない内に死ぬぞ」
「っ。けど……」
「それに、だ。袈刃音だって響を助けるつもりがないとか、一回も言ってないだろ。違うか?」
「え」
突然、恋に水を向けられ、袈刃音は間の抜けた声を漏らした。
瑠璃が振り返って、半信半疑といった視線を向けて来る。
少年は慌てて返事を返す。
「そ、それはその……うん、助けたいよ俺だって。勿論。ただ、今は無闇に動けないってだけで。状況もはっきりしないし。それに多分、響も俺にそうやって動いて欲しいはずだから。だから」
詳しくは言えなかった。
響がどう失踪したのかも、どんな脅威に晒されているのかも、自分達が彼女を助けに向かえない理由すら。
瑠璃には、こんな曖昧な説明で納得してもらうしかなかった。
「また、「分かって」なんだ。……いいよ、一旦分かってあげる。でも、今回だけだから。…………アタシちょっと、下の子達見て来る」
曇った表情は消えないまま、しかし、そう言って彼女は大人しく去って行った。
静かになった廊下には、袈刃音と恋だけが残っていた。
恋のお陰で何とか瑠璃を止められた、その事に少年は小さく安堵する。
だが、どうしてだろう?
彼は、葉山恋は、袈刃音を嫌っているはずなのに。
「響が、お前を見ろって言ったから」
「え?」
「あ、いや、だから……。その、お前を助けたんじゃないからな!あれは響がそう言ったからで……そ、それより、瑠璃にさっき言った事忘れんなよっ。俺はまだ、お前を信じてなんかないんだから」
「あっ、ちょ――」
吐き捨てるようにそれだけ言って、恋はその場から走り去っていった。
「何、だったんだ……?」
しかし、袈刃音にはそんな些細な問題を考えている時間はなかった。
今は【守護者】が何をして来るか分からない状況なのだ。
やれるだけの準備をしなければならない。
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《完了》
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