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第95話どう解決しますか?

 NNNNNNN●w L●ad◆nG…













 ――ERROR発生――


 再読み込みを開始します




 Now Loading…










「クソ、やられた!やられた、またッ。何で……」


 袈刃音は拳を自らの膝に叩き付け、悪態をついた。


 右手で前髪を掻き上げて天井を見上げる。

 消えた蛍光灯の明かり。代わりに、窓の外から陽の光が部屋を照らしている。

「さくらい」の一室であるこの空間は、時間が止まったかのようだった。


 しかし、今この瞬間にも時は一秒、また一秒と過ぎ去りつつある。


 響と自身の立ち位置が入れ替わるという現象に見舞われてから数分。

 近くに居合わせた瑠璃には、まだこの事実を伝えていない。制服についた真新しい血の染みも、当然誤魔化して。

 他の仲間や子ども達については、言うまでもない。


 この拠点において、事態を関知しているのは自分ともう一人、正面のソファに腰掛ける美麗な女神のみだった。


「恐らく、遊戯神の【守護者】・テラじゃな。かような真似をさも当然の如くやってのけるのは」


 クロノは静かに瞼を開き、こちらへ視線を向けつつ言った。


「テラって確か、数日前に俺と響を結界で閉じ込めた……」


「如何にも、あ奴の事じゃ。何と言ったか……そう、【吟世詠遊(わーるど・てらー)】だったかの?他の神の【守護者】が持つ能力になど興味はないが、あれは妾も知っておる。運命を歪曲させ、都合の良いように作り変える力じゃ」


「どういう事だ」


「あれに世界の法は通じんのじゃ。突如火の雨降らせる事も出来れば、ここら一帯を凍えるような氷結の大地に変える事も出来る。無論、人間二人の位置を逆転させるのもなぁ」


「なッ……!?反則だろ、そんなの」


 確かに、これが【守護者】の仕業であるのは想像していた。

 しかし、あまりにも出鱈目な能力だ。


 ……いや、もしかすると、心のどこかで自惚れていたのかもしれない。

 過去の虐められていた弱い自分と決別し、立ちはだかる壁を打ち壊すだけの力を手に入れたと、神の遣いとの実戦を経た事で得意になっていたのだ。


 思い出してみろ。ここまで辿り着くのに、自分は何度間違い、そしてやり直して来ただろう。

 あるいは、眼前の女神の手助けなしに、そもそも神への抵抗は叶っただろうか。


 間違ってはいけない。

 これこそが、この理不尽こそが、神とその【守護者】を敵に回すという事の本来の意味なのだ。


「クソッ」


「待て。袈刃音よ、どこへ行くつもりじゃ。まさか、自分と入れ替わる形で消えた仲間を探すつもりか?ふん、見つけ出した頃には、腐敗しながら道を彷徨う肉の塊になっておるだろうよ」


「クロノ!お前、響が死んだって言うのか!?」


「逆に訊くが、そうでなければ、あの小娘は今頃どうなっておる?袈刃音よ、其方(そなた)は己がそれ程頭の回る質ではないのを自覚しておるだろう?大勢を束ねるだけの器と人望がない事も。敵は聡いぞ、特に遊戯神はなぁ。其方等の司令塔があの小娘――響であるのを見て来ておるはずじゃ。それで、どうして敵が響を殺さんと言える?根拠は?確信は?」


「分かってる!けど、今動かないで――」

「では、妾と交わした契約はどうなる?」


「……ッ」


「勘違いするでないぞ、三浦袈刃音。其方の最優先事項は、この遊戯が終わるその時まで時花を守り抜く事であって、己の思うままに動く事ではない。それは其方が果たすべき最低限の役目を果たしてこそ、初めて許される贅沢に過ぎん。既に妾達は敵の術中なのだぞ?計画もなく動いて時花を無防備にし、(あまつさ)え死なせるつもりか?返答次第では、文字通り()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。気を付けて言葉を返せ」


「くっ……」


 凄みのあるクロノの視線に、袈刃音は気圧された。

 その言葉にも。


 女神の冷徹な紫紺の瞳が突き刺さる中、少年は小さく溜息を零す。

 そうして、出口の方へ歩いて行き、ドアノブに力なく手を掛けた。


「其方、話を聞いて……」


「分かってる、ちょっと外に出て頭を冷やしたいだけだ」


 悔しいが、今回はクロノが正しかった。


 ここで感情的になって動けば動く程、暗闇に潜む蜘蛛の巣のような敵の罠に絡め捕られ、更に身動きが取れなくなって行く気がした。

 少なくとも、今は【守護者】・テラが仕掛けた罠の全容を掴めていない。


 袈刃音には一度冷静になる時間が必要だった。

 そして、この後の事をどうするか考える時間も……。


「分かってる、分かってんだよ、俺だって……」


 何も出来ない自分が腹立たしく思いながら、袈刃音はドアノブを捻って手前に引いた。


「ぁっ」


「えっ、青木さん?」


 扉を開けると、そこには青木瑠璃がいた。

 彼女は携えていた救急箱を咄嗟に抱き寄せ、小さく身を引いた。


 それは、ドア一枚隔てた場所で、傷を手当てするはずだった者の会話を盗み聞きしていたのがバレたからなのか。

 あるいは、単に驚いただけなのか。


 答えは直ぐに分かった。


「……ねぇ、どういう事?三浦君……響、いなくなったって?」


 やはり、聞かれていたのだ。

 袈刃音は自分の顔が一気に強張るのを感じた。


「ね、ねぇ。探さないって、そんなの嘘だよね?だって、そんなの有り得ないもん」


「そ、それは……」


 袈刃音は言葉に詰まった。


「あったんでしょ、何かが。だったら、探すよね?聞き間違いだよね?さっき外で、三浦君が服の血を誤魔化したのも、全部何かの勘違いだよね?………………違うの?」


 破れる気配を見せない沈黙。


 その理由を知った瑠璃は一歩、二歩、と後退って行く。

 理解出来ない存在に抱く恐怖や嫌悪といった感情を、顔に浮かべながら。


「意味……分かんない、何で…………。ッ」


 不味い、と思った時には、彼女は走り出そうとしていた。

 袈刃音はすぐさま少女の腕を掴んだ。


「待って、青木さん!」


「放して!早く、早く響を探さないとッ」


「ダメだ!今外に出たら……ッ」


「じゃあ、いつ探せって言うの!?……どうせ、どうせ三浦君は響を見捨てるつもりなんでしょ!」


「ッ……」


 違う、とは断言出来なかった。


 響は助けたい。

 だが、この状況でその選択を取らないという事。

 それはつまり……。


 袈刃音の態度に、瑠璃の瞳から淡い期待の色が完全に消え失せる。


 彼女は、少年の手の拘束を振り解いた。


「最っ低……そんな人だって、思ってなかった!」


「あっ、ちょ――」


 瑠璃の背中が遠ざかって行く。

 けれど、袈刃音にはそれを止める術がなかった。


 駄目だ、全部が悪い方向へ進みつつある。

 自分の言動全てが裏目に出てしまっていて、収拾がつかない。


 一体、どうすれば……。


 ――その時だった。




「待てよ、瑠璃」











文月です。

申し訳ございません、久しぶりの投稿になりました。

遊んでた訳じゃないんです(わりと遊んでた)。


一応、その間に、突然思いついたホラー作品を書きました。

良ければ御覧下さい。

『鬼の根城』という作品です。


では、次回を……と行きたいのですが、来週の投稿は間に合うか分かりません。

ちょっと時間がかかるかもしれませんので、ご容赦を。


それでは。


【・ご案内】

 下の★★★★★の部分は、読後、ぜひ本作の評価にお使いください。

 ブックマーク、感想などもよければ。


 作者のモチベーションとなります。


 《完了》





【次の話へ進みますか?】

【→はい/いいえ】

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