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第91話……見ーつけたぁ♡

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 額から流れた汗が袈刃音の頬を伝い、顎の先に集まって零れ落ちた。

 熱気に包まれた青空の下で、また一つ、また一つ。ゆっくりと。


 世界が遠くにあるようだった。


 肌に感じる汗や熱の感覚は確かなはずなのに、今見ている景色には現実感がまるでない。


「なんで、何で、俺が「さくらい」に……?」


 正面に見える施設の門、右斜め前のジャングルジム、左手に設けられた滑り台と砂場。

 どれも「さくらい」にある物ばかりだ。


「そうだ、桜井さんは……!」


 だが、探しても見当たらない。

 一体何がどうなって――


「おーい、響ちょっと。って、あれ?三浦君、何でここに」


 背後から声が聞こえて振り向くと、青木瑠璃が玄関の奥から出て来た。


「響?……響が、どうかした?」


 尋ねながら、何か嫌な予感がした。

 自分の(あずか)り知らぬ所で、事態が悪化しつつあるのではないか。――そんな嫌な予感が。


 漠然とした焦燥感がジワジワと存在感を増し始める。

 肺が委縮したかのような閉塞感に見舞われながら、袈刃音の頼りない眼差しが瑠璃を見つめた。


「あぁ、いや、ちょっと用事を思い出してね。大した事じゃないんだけど。……あっれぇ、おっかしいな、外に出るって言ってから直ぐ追いかけたのに。どこに消えたんだろ?」


「――ッ!?」


 その言葉が袈刃音を凍り付かせた。


 大きく見開く瞳。

 強張る頬。


 震えて上手く塞がらない口を、袈刃音は顎の力で無理矢理に押し付け、唇で閉じる。

 その裏で、少年の歯が小さく軋んだ音を立てた。


 ――不味い……。


 響のいたはずの場所に、今、自分が立っている。

 だとすれば、姿を消した彼女はどこにいるのか。


 薙沙を追って入った、あの百貨店の入り口近く。

 そう、背後には【守護者】トゥラヌアが、前方ではゾンビが待ち構えているはずの――あの死地だ。


 ◆◇◆◇◆


「ここは……」


 響は呆然と立ち尽くしたまま呟いた。


 視界の両端に見える街路樹、その先に見える道路。

 正面の横断歩道を渡った先には飲食店や背の低いビルが立ち並んでいる。

 視界に映るのは街の景色だった。


 だが、唐突に、そんな困惑を吹き飛ばすような声が聞こえた。


「よし、追い付いたか!早く行くぞ、って――は?……おい響、お前、何でここにいやがる!?」


「えっ。ナ、ナギ姉?」


 声のした斜め右方向を見ると、そこに薙沙がいた。

 沈黙の中、二人は心底驚いたような顔で互いに見つめ合う。


 一体何が起きているのか、響の理解が追い付く前に、薙沙が何かを思い出したように再び声を上げた。それも酷く焦った様子で。


「ッ!そうだ、今はそれどころじゃねぇ。逃げるぞ、(ひび)――」

「スパーン♪っと」


 薙沙が言い切る前に、背後でガラスの砕け散る音がした。


 咄嗟に振り向いた時には既に遅かった。

 凄まじい勢いで、細く光る何かが地面を走り、響の目前まで迫って来ていた。


「えっ」


「響ッ!」


 間に合わない、そう直感した少女の体を薙沙が抱き、思い切り横に跳んだ。

 そうして寸前の所で危機を回避した直後、地面に転がり、起き上がった響は目を大きく見開いた。


「な、何これ……」


 数舜前まで自分の立っていた場所が、巨大なドリルが突き抜けて行った後のように、その後方まで直線状に(えぐ)り取られていた。

 いや、違う。切り刻まれているのだ。抉られたコンクリートの近くに、幾つか鋭い傷が伸びている。


「えーっと?確かぁ、「逃げるミウラ・カバネを追って建物の外へ向かうと、そこには緑の髪の少女がいた」だっけぇ?」


 不意に声が右手にある百貨店の方から聞こえた。

 そちらへ視線を走らせると、入口の薄闇から少女が現れた。


 赤紫色のウェーブヘアの少女は、右手に長剣を握っていた。

 そして、その周囲には、同じような剣が幾つも宙に浮かんでいる。


【守護者】、その単語が響の脳裏を過った。


 ――不味いっ。


 強烈な緊張が一瞬にして背中を駆け上がるも、事態は既に、どうしようもない程に進展してしまっていた。


「緑の髪、緑、緑……っと。――ん?あれ?あれれ?」


 辺りを見渡しながら、悠然と歩みを進めて来る【守護者】の目がこちらに向いた。

 そうして何故か、響を見つけた直後、少女は思い切りにやけ顔を浮かべてこう言った。











「あはっ……見ーつけたぁ♡」


















文月です。

今週2回目の投稿です。


ペースおかしくね?という感じですが、普通に時間に余裕があって、話もある程度固まっていたからです。

モチベーションも上がっていますし。


とはいえ、多分、今週だけの発作みたいなものだと思います。


こらそこ、「毎回このペースで書けたらいいのに」とか言わない!


【・ご案内】

 下の★★★★★の部分は、読後、ぜひ本作の評価にお使いください。

 ブックマーク、感想などもよければ。


 作者のモチベーションとなります。


 《完了》





【次の話へ進みますか?】

【→はい/いいえ】

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