第83話治療を行いますか?
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【守護者】の撃破、という大きな目標を掲げた袈刃音達だったが、そのためだけに動けるという訳ではなかった。
ここはただ広くて立派な建物ではない。
「さくらい」は児童養護施設である。子どもが多いのは当然で、その面倒は誰かが見なければならない。
生きていくための食事、睡眠、その他家事の時間も確保しつつだ。
ましてや、今は神のゲームの真っ最中である。どこで増え、いつ襲って来るか分からないゾンビから、この拠点を守らなければならない。
それを考えれば、この一週間で袈刃音達に蓄積したダメージは決して無視出来るものではなかった。
「くっ……」
袈刃音は肩口から腕、指先に向かって丁寧に包帯を巻いて行く。
シャーエイドロードとの戦いで負傷したのは響だけではない。
彼と命懸けの攻防を繰り広げた袈刃音の傷もまた、相当の物だった。
神出鬼没、変形自在の剣を正面から生身で受け止めたその両腕には、至る所に大小様々な傷が刻まれていた。
ただ、やはり一番問題だったのは腹の刺し傷である。
白い布で巻かれて保護された腹が強い痛みを訴え、少年は小さく声を漏らす。
既に交換し終え、床へ無造作に放置されている包帯は、赤黒い血で汚れていた。
立ち上がり、袈刃音は制服に袖を通す。
白かった制服も、この一週間ですっかり血が染み込み、焦げた跡や破れている部分も目立つようになってしまった。
「……あとで、外で新しいの探すか」
袈刃音は指で眉間を揉みつつ言った。
目の下には、薄っすらと隈が出来ている。
拠点に帰還を果たしてから、もうほとんど休んでいない気がした。
勢いを増すゾンビへの対処に加え、子ども達の事にも注意を払っていなければならなかったのだから、当然といえば当然の話だった。
これは母屋満実の不在による所が大きい。
響の話を全て信じるとするなら、彼女一人いれば、施設内の仕事はゼロに等しかったという。
だが、満実はゾンビに噛まれ、クロノの力により何とか一命を取り留めたものの、失血により昏睡状態に陥っていた。
「響、満実さんの調子は?」
寝室に向かうと、袈刃音は響に声を掛けた。
彼女の近くのベッドでは満実が眠っている。
こちらを向いた響は微笑みを浮かべながら答えた。
「ん、問題ないよ。段々と血色が良くなって来てるし、実は昨日の夜、一回だけ目が覚めたんだ。……直ぐに眠っちゃったんだけどね」
「そっか」
「ゾンビ化も、【基地システム】の効力が続いている間は止められるって」
ならば安心だ、と袈刃音も僅かに頬を緩ませる。
本来であれば、満実は命を落としゾンビとなる運命だったのだ。
【基地システム】を起動し、クロノの時空神としての力を一部開放させる事で、彼女の肉体の時を巻き戻せたのは不幸中の幸いだろう。
もっとも、体に纏わり付いた遊戯神の呪いともいうべき『アンデッド・ゲーム』のルール、それが発動した事実まではなかった事には出来なかったらしい。
一日に一度、満実は時空神の力を使ってゾンビ化を抑制しなければならなくなった。
今日もそのためにクロノが彼女の部屋へ訪れていたようで、響の隣に椅子を持って来てそこに腰を下ろし、治療を行っていた。
無論、時花も連れてだ。
と、それまで響に抱かれながら静かにしていた時花が、不思議そうな顔で彼女を見上げて疑問を口にした。
「響お姉様、ずっとお聞きしたかったのですが、その【基地システム】というのはどういうものなのですか?」
「あっ、そっか。時花ちゃんは知らなくて当然だよね。……アレは、時間を巻き戻す前の世界――未来の世界での禁じ手なんだ」
文月です。
予定より半日遅れました、申し訳ございませんっ。
ただ、この感じだと来週の投稿も問題なく行えそうです。
という事で、次回もお楽しみに!
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【追記・2024/8/4(日)】
すみません、ちょっと執筆作業が遅れています。
頑張って今日の夜22時に投稿したいと思います。
無理なら、明日の朝8時頃にします。
《完了》
【次の話へ進みますか?】
【→はい/いいえ】




