表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

77/112

第77話帰還しますか?

 Now Loading…


 やられた。

 ――完全に()()()()()()


 まさか、遊戯神の【守護者】の結界によって、二日も建物内に閉じ込められていたなんて。


「はぁっ……はぁっ……はぁっ」


 自分の息遣いが激しくなり始めているのに気付きながら、それでも響はひた走る。


 依然として「さくらい」の屋根は見えぬまま。

 けれど、あれからもう二十分以上が経過していた。


 日の傾きつつある茜色の空の下、微かに下がり始めた気温を肌で感じ、彼女は危機感を更に募らせた。


 迫り来る大量のゾンビを先頭の袈刃音が蹴散らす。

 それでもこちらを襲う連中は、最後尾の響が【コマンドバトル】の能力で足止めを。


「くっ……」


 あの場で生き残っていた全員を守りつつ、「さくらい」へ辿り着くにはそれが最善で最速だ。

 けれど、全速力で向かえる状況ではなかった。


 それが酷く歯痒い。


 よりにもよって、夕暮れ時のこの視界が悪くなっていくタイミングで、というのも最悪だった。

 今度こそ皆を救うと誓っておきながら、なんて様だ。

 ……一体、どこで間違えたのだろう、何を間違えたのだろう。


 そんな考えばかりが頭の中を埋め尽くしていく。


 最中、目の前に古びたマンションが見えた。

 いよいよ「さくらい」が近いのだと、響は(はや)る気持ちを抑えて袈刃音達の後ろに続く。


「なっ!?……うそ、だ」


 下り坂前まで辿り着いた瞬間、響は呆然とした。


 そこは本来、車二台が余裕ですれ違えるくらいの、適度に広い一本道だった。

 特段面白みもない景色が広がるばかりで、建物といえば坂の途中に建つ「さくらい」だけだ。


 だが、その坂道を、大量のゾンビが埋め尽くしていた。


「……あ、あぁ」

 

 ここから見渡せるはずの施設の全体像も、死体達の影によってその一部を遮られている。


 ――そう、門の付近にゾンビが群がり、中へと侵入を始めているのだ。

 しかも、その騒ぎに引き寄せられるようにして、一帯に跋扈(ばっこ)する不死者達が更に門の方へと集まろうとしている。



「そんな、マミ姉!」

「――【想焔】」


「!?」


 思わず前に出ようとして、響の耳が袈刃音の声を拾った。


 直後、勢いよく放たれた暗い焔が波のようにゾンビの群衆を飲み込んで行った。

 荒ぶる火炎の中で消し炭となっていく死体を前に、袈刃音は拳を握り、その両手に焔を灯す。

 そうして、鋭い眼光でこちらを一瞥すると、彼はゾンビ達の下へと一人駆け出した。


「……皆、もっと固まって。ついて来て、ただし、絶対に私より前に出ないように」


 響は喉を締め付けられるような感覚を覚えながらも、全員に指示を出す。


 携帯の画面をタップすると、大音量でアラーム音を鳴らした。

 道を切り開くべく暴れる袈刃音へと襲い掛かろうとしていたゾンビの一部が、その甲高い音の方へ――響の方へ流れ始めた。


「ッ。一撃目(ファースト)――」


 堪えろ。

 まだあの不死者共は、完全に「さくらい」の中を蹂躙し尽くしていない。

 何かが起こったわけではないはずだ。


三撃目(サード)――」


 堪えろ。

 ここで諦めなければ、まだ間に合うはずなのだ。


二撃目(セカンド)――」


 堪えろ。

 今は少しで先に進まなければならないから、だから、


五撃目(ラスト)!――袈刃音、あとお願いッ」


 門の入り口付近で大立ち回りを演じる袈刃音に追い付くと、すれ違い様、響は連れて来た十数人を彼に預けて一人塀を飛び越えた。


 空中にて、「さくらい」の敷地内で戦う千華と真白を見つけた。

 大勢のゾンビを相手に追い詰められ、絶体絶命の状況。

 着地の直後、駆け出したのは槍を構える千華の方。


 疲労の所為か、肩で息をしながら戦う動きは精彩を欠いている。

 その背後に迫る不死者の影。


「ッ。やばっ……!」


 遅れて千華が気付き、咄嗟に後退ろうとするが間に合わない。

 けれど、そこで敵の体が凍ったように固まり、


「――一撃目(ファースト)!」


 赤い閃光が走ると同時、ゾンビの体が軽く吹き飛んだ。


「……こ、湖窓さん!?って事は、やっぱりさっきの黒い焔、袈刃音が!」


「話はあと、まずはこいつらを片付ける」


 言うや否や、響は再び駆け出し、敷地内のゾンビの殲滅に動き始めた。


 上着を巻き付けて腰に差していた薙刀の柄を右手に握る。

 シャーエイドロードに両断されてしまって、薙刀としては扱えず、刀の要領でその刃を振るう。


「はぁッ!」


 先の戦いで肉離れを起こした左腕が、ずっと痛みを訴え続けている。

 けれど、気にしていられなかった。


 この状況は、神の【守護者】・テラによって仕組まれたもの。

 何か、何か途轍もなく嫌な予感がして、それが施設に辿り着いた今でも払拭出来ないのだ。

 胸の騒めきが、一秒ごとに激しさを増していく。


 ――マミ姉……。


 自分達のために無茶をし過ぎる彼女が心配だった。

 どうしようもないくらい、心配だったのだ。


 そうでなければ、()()()の後も、きっと響の世界は――。














【・ご案内】

 下の★★★★★の部分は、読後、ぜひ本作の評価にお使いください。

 ブックマーク、感想などもよければ。


 作者のモチベーションとなります。


 《完了》





【次の話へ進みますか?】

【→はい/いいえ】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ