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第71話不穏ですか?

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 二階の部屋の扉をそっと開くと、そこにクロノの姿があった。


 夏らしい涼し気な格好だが、服を押し上げる胸や瑞々しい太ももが強調されており、その美貌も相まって同性でも少々目のやり場に困る。

 そこまで交流がある訳でもないし、口調も冷ややかで少し怖い。


 千華にとっては、どこか近付き難い存在だ。

 しかし、今は彼女の助けが必要な時である。


 若干の緊張を隠して千華はクロノに尋ねた。

 すると、クロノがこちらを振り向いて紫紺の視線を送った。


「外ではなく、拠点内の仕掛けの事か?案ずるな、既に全て準備済みじゃ」


「そっか。じゃあ、後で玄関の前にバリケードを置いとくね」


(わらわ)も状況に応じて援護する。が、基本は其方(そなた)等二人であの連中を足止めせよ。ただし、無理はせずに、危険だと判断したならば迷わず引け」


「えぇ……難しい注文つけないでよぉ」


阿呆(あほう)、逃げる時間くらい稼いでやるわ」


 ぎこちないながらも、軽口を交えてこの後の動きの確認まで終えた。

 すると突然、クロノが千華に尋ねて来た。


「それで?そのような分かり切った話をするためだけに、ここまで来たのではないのじゃろう?」


「えっ」


 千華は驚いたような顔を向け、微かに声を漏らす。

 眼前の美女は紫紺の瞳で静かこちらを見据え、一口も発さない。


 まるで、心を見透かされているような感覚を覚えた。


 実際、そうなのだろう。

 一瞬だけ躊躇って言葉に詰まって、しかし、千華は決心して尋ねた。


「……その、袈刃音は。袈刃音達は、帰って来るよね?」


 きっと大丈夫。

 不安そうな真白の手前、そうは言ったが、袈刃音や響達がいつ帰って来るかなど千華には分からなかった。

 いや、それ以前に無事なのか探る術すらない。


 無論、それは誰であっても同じだ。

 それでも、クロノならば何か知っているのではないかという期待があったのだ。


 クロノは難しい顔をして、口を一文字に引き結ぶ。

 驚いた気配はない。

 ただ、予想はしていたものの、未だ答えを言葉に出来ないでいるといった様子だ。


 数秒が経過した頃、彼女はゆっくりと瞬きして小さく溜息を零した。


「あ奴等が戻らなくなって二日程。居場所も分からず、いつ帰って来るかも分からん。まぁ、案ずるなという方が無理な話よな。が、(わらわ)とて知っていれば、既に其方等に教えておる」


「そっか。そう、だよね……」


「うむ、すまんがなぁ。ただ――あの二人は帰って来る。それが消えた二人の子等を連れてなのか、そうでないのかは知らぬが。しかし、それだけは確実に言える」


 落胆の表情が霧散し、千華は俯いていた顔を上げ、女神の美貌を見つめた。

 すると、クロノはどこか勝ち誇ったような笑みを浮かべて言ったのだ。


「何せ人も、不死者も、神の遣いすら袈刃音を殺せる者はいないからな。事実、前回は其方等の下に戻って来た」


「あっ」


「ふん、少しは不安が払拭されたか?ならば、もう行け。待っておれば、あ奴等は必ず帰って来るのじゃ、それまでは妾達は耐えねばならん――ん?」


「っ。どうしたの?」


 ふと窓の外へクロノが意識をちらと向けると、彼女は訝しむように目を細めた。

 釣られて千華も、茜色の世界に目を向ける。


 けれど、ここからではよく分からなくて、数歩前に出ると見えた。


「人が!」


「うむ、またこちらへ追い込まれて来よった連中がいるな」


 外の人間の数は十数人程度か。

 ゾンビの姿は見えないが、あの慌てようからして、クロノの予測通りまず間違いなく彼等の後ろにいる。

 ほら、やはり続々と生ける屍達の影が見え始めた。


「助けに行かないとッ」


「待て、もう間に合わん。それよりも、大事じゃぞこれは。この騒ぎで、あと少しは逸らせていたはずの連中の目が妾達に向くぞ。あの不死者共の、盲目極まる目がな」


「……ッ」


 二人の顔に緊張が走る。

 時間稼ぎが出来なかった上に、ゾンビの数がさらに増えた。

 どこかへ流れていくはずだった敵の数も、相当抑えられてしまっただろう。


 ――もう夜が近いのに……っ。


 一瞬、恐怖と不安の渦が一気に押し寄せ、平衡感覚がおかしくなり始めた。

 足場が崩れ、底の見えない暗闇に落ちていくような感覚だ。

 立っていられなくなる。


 けれど、千華はグッと奥歯を噛み締め、視界を阻む(もや)を掻き消すように首を横に振った。


「私、行くね!」


 返事を聞かないまま、千華は部屋を飛び出して真白の下へと向かったのだった――。








文月です。


色々やっていたら、今週分を書くのを忘れていました。

急いで書きましたね、はい。


そうそう、『アンデッド・ゲームズ・メモリー』の【うらばなし】をまとめたエッセイ?を書きました。

気になる方はどうぞ、読んでみて!


ということで、最後にいつもの――




【・ご案内】

 下の★★★★★の部分は、読後、ぜひ本作の評価にお使いください。

 ブックマーク、感想などもよければ。


 作者のモチベーションとなります。


 《完了》





【次の話へ進みますか?】

【→はい/いいえ】

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