第66話どちらを選びますか?
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本当に想像すらしなかった話を持ち出されると、理解がまるで追い付かなくなってしまう。
だから、袈刃音は最初、何を言われたのか全く分からなかった。
受け取った言葉が、現状とあまりにかけ離れ過ぎて噛み合わない。
「……【守護者】?」
「別に不自然な話ではないでしょう。昨日、ドミエン達を殺した。その時点で既に、アナタは第七【守護者】の席を勝ち得ているのですよ。どうです?こちらとしても、手っ取り早く空席を埋められますし――」
「もういい、やめろ」
けれど、底冷えするような声が次の瞬間、袈刃音自身の口から発せられていた。
意識して出たのではない。
酷く自然に、今抱く感情がありのまま台詞になっただけ。
人を散々弄んで、欺いて、殺そうとしておいて。
その後で今さら「仲間になれ」などと勧誘されても、信用出来ない。
いや、失望している、と言った方が正しいか。
どうせ、袈刃音が神に服従を誓ってもこのゲームは終わらない。
どうせ命令されて、逆に最悪な選択を迫られるかもしれない。
家族を殺せと言われるかもしれない、旭の命をこの手で奪えと命じられるかもしれない。
遊戯神ならば、そうしかねない。
どうせ……なのだ。
だから、聴くに堪えない。
「無駄だろ、この時間」
「ふふっ。【守護者】になれば、それすら良い暇潰しになるのですよ。神に仕える者には、無限の寿命と相応の権限、力が与えられる。アナタにとっても悪い話ではないと思うのですが」
シャーエイドロードが示したメリット。
けれどやはり、袈刃音がそれに興味を見せる事はなかった。
「……そうですか、ザンネンです。とはいえ、よろしいのですか?せっかく見逃してあげようかと思ったのに――下の方々」
「……っ!?」
先程、窓際からチラッと、響達が建物から脱出を始めている姿が見えた。
故に今まで、袈刃音は人気を気にして【想焔】の出力を抑えていた。
しかし、このまま響が、全員を「さくらい」まで避難させてくれればその必要もなくなる。
もう少し、もう少しの間だけ、シャーエイドロードの注意をこちらに引き付けておけばいい。
そう考えて動いていたのに。
――バレてた……ッ。
冷や汗が少年の額に浮かんだ。
「ワタシが勘付いていないとでも?」
「ッ、……」
「ふふ、あくまで平静を装いますか。しかし、選択はして頂くのです。ワタシと共に来るか、それとも意固地になってお仲間を見殺しにするか。……殺すのは、ワタシ得意なのですよ?」
だろうな、というのが袈刃音の心情。
その小さな体躯からは想像出来ない身体能力に、影を操る能力と剣。
加えて、下の階で見たあの凄惨な死体達を思い出せば、それがシャーエイドロードにとって簡単だという事くらい分かる。
ただ、袈刃音の選択は決して揺るがない。それは遊戯神への敗北を認める事と同じ。
……本当に、厄介な状況にしてくれる。
「来るなら、来いよ」
「はは、言うと思ったのですよ。やはりアナタも――。まぁ、仕方ありませんね」
薄闇色のオーラを纏う剣を、【守護者】は眼前に立てる。
その闇が激しさを増した。
「あぁ、そうそう、この剣は受けない方がよろしいかと。きっと防げませんから。――【宝剣・シャルナ】」
それはたった一振りで起きた。
一瞬の、瞬きよりも短い時間で振られた一撃で。
僅かに生まれた静寂。
その次の瞬間、世界が微かにズレた。
ズレは徐々に大きくなり始め、ようやく何が起きたかのかが判明する。
――建物の九階部分が、斜めから斬られたのだ。
そうして、巨大なコンクリートの塊が傾斜面をゆっくりと滑り、落ちゆく先。
それに気付いた袈刃音は、内心で舌打ちした。
このままでは、響達がアレの下敷きになる。
きっとまだ下のゾンビ達の相手に手間取って、逃げきれていないはずだから。
だから、
「っそッ!」
硝子の割れた窓目掛けて、袈刃音は駆け出した。
跳んで身を縮めながら窓の外へ出る。
気持ち悪い浮遊感の中、視界に広がるのはジオラマと化した道路と建造物達。
落下していく体。
「申請――ッ」
【ポイント】を消費する事で、一時的な足場を生み出す。
虚空に浮く地面を思い切り蹴り、袈刃音は真上に跳躍した。
人間の脚力は、腕力の数倍にもなる。
故に、鉄筋コンクリートの床ですら容易く破壊する力よりも、数段上の威力を秘めた蹴り。
跳躍の加速が最高潮に達した瞬間、落ちゆく建物を袈刃音は渾身の力で蹴り上げた。
激しく砕ける硬い壁面。
稲妻のような亀裂も瞬く間に周囲に走るが、もう一押し。
「だらぁぁぁぁぁあッ!」
放たれた【想焔】が高強度の素材を、圧倒的な火力で襲う。
そして、夜空色の炎はヒビの隙間を駆け抜け、内からも破壊を加速させ――砕け散った。
危機は去っていない。
袈刃音という障害が取り払われた今、シャーエイドロードがこの好機を逃すなど有り得ないのだ。
奴がどう動くかは分かっている。
「響ぃッ、影だ!」
だから、その対処を彼女に託す。
何か、めっちゃ久しぶりの投稿やった気がする……。
文月です。
1週間空けての投稿で、感覚が中々戻らず、今日まで引き延ばしてしまいました。
すみませんっ。
普通に忙しくて死にかけてました。
実はまだ、悠長に構えていられない状況ではあるのですが。
とはいえ、時間に余裕が生まれたので投稿頑張っていきたいと思います。
そういえば、「カクヨム」での本作の投稿も終わりました。
多分色々な好条件が重なって、想定したより読んでもらえたと思います。
評価よりフォロー数が嬉しかったです。ちょっと自作では見たことない数字になっていたので。
お知らせですが、今回は特にないかなと。
頑張って捻り出すなら、「一応、今ホラーものを裏でゆっくり書いてます」とだけ。
それでは――
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《完了》
【次の話へ進みますか?】
【→はい/いいえ】




