表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

66/113

第66話どちらを選びますか?

 Now Loading…


 本当に想像すらしなかった話を持ち出されると、理解がまるで追い付かなくなってしまう。

 だから、袈刃音は最初、何を言われたのか全く分からなかった。


 受け取った言葉が、現状とあまりにかけ離れ過ぎて噛み合わない。


「……【守護者】?」


「別に不自然な話ではないでしょう。昨日、ドミエン達を殺した。その時点で既に、アナタは第七【守護者】の席を勝ち得ているのですよ。どうです?こちらとしても、手っ取り早く空席を埋められますし――」


「もういい、やめろ」


 けれど、底冷えするような声が次の瞬間、袈刃音自身の口から発せられていた。


 意識して出たのではない。

 酷く自然に、今抱く感情がありのまま台詞になっただけ。


 人を散々弄んで、欺いて、殺そうとしておいて。

 その後で今さら「仲間になれ」などと勧誘されても、信用出来ない。


 いや、失望している、と言った方が正しいか。


 どうせ、袈刃音が神に服従を誓ってもこのゲームは終わらない。

 どうせ命令されて、逆に最悪な選択を迫られるかもしれない。

 家族を殺せと言われるかもしれない、旭の命をこの手で奪えと命じられるかもしれない。


 遊戯神(アイツ)ならば、そうしかねない。

 どうせ……なのだ。


 だから、聴くに堪えない。


「無駄だろ、この時間」


「ふふっ。【守護者】になれば、それすら良い暇潰しになるのですよ。神に仕える者には、無限の寿命と相応の権限、力が与えられる。アナタにとっても悪い話ではないと思うのですが」


 シャーエイドロードが示したメリット。

 けれどやはり、袈刃音がそれに興味を見せる事はなかった。


「……そうですか、ザンネンです。とはいえ、よろしいのですか?せっかく()()()()()()()()()と思ったのに――(した)の方々」


「……っ!?」


 先程、窓際からチラッと、響達が建物から脱出を始めている姿が見えた。


 故に今まで、袈刃音は人気を気にして【想焔】の出力を抑えていた。

 しかし、このまま響が、全員を「さくらい」まで避難させてくれればその必要もなくなる。


 もう少し、もう少しの間だけ、シャーエイドロードの注意をこちらに引き付けておけばいい。

 そう考えて動いていたのに。


 ――バレてた……ッ。


 冷や汗が少年の額に浮かんだ。


「ワタシが勘付いていないとでも?」


「ッ、……」


「ふふ、あくまで平静を装いますか。しかし、選択はして頂くのです。ワタシと共に来るか、それとも意固地になってお仲間を見殺しにするか。……殺すのは、ワタシ得意なのですよ?」


 だろうな、というのが袈刃音の心情。


 その小さな体躯からは想像出来ない身体能力に、影を操る能力と剣。

 加えて、下の階で見たあの凄惨な死体達を思い出せば、それがシャーエイドロードにとって簡単だという事くらい分かる。


 ただ、袈刃音の選択は決して揺るがない。それは遊戯神への敗北を認める事と同じ。


 ……本当に、厄介な状況にしてくれる。


「来るなら、来いよ」


「はは、言うと思ったのですよ。やはりアナタも――。まぁ、仕方ありませんね」


 薄闇色のオーラを纏う剣を、【守護者】は眼前に立てる。

 その闇が激しさを増した。


「あぁ、そうそう、この剣は受けない方がよろしいかと。きっと防げませんから。――【宝剣・シャルナ】」


 それはたった一振りで起きた。

 一瞬の、瞬きよりも短い時間で振られた一撃で。


 僅かに生まれた静寂。


 その次の瞬間、世界が微かにズレた。

 ズレは徐々に大きくなり始め、ようやく何が起きたかのかが判明する。


 ――建物の九階部分が、()()()()()()()()のだ。

 そうして、巨大なコンクリートの塊が傾斜面をゆっくりと滑り、落ちゆく先。


 それに気付いた袈刃音は、内心で舌打ちした。

 このままでは、響達がアレの下敷きになる。

 きっとまだ下のゾンビ達の相手に手間取って、逃げきれていないはずだから。


 だから、


「っそッ!」


 硝子の割れた窓目掛けて、袈刃音は駆け出した。


 跳んで身を縮めながら窓の外へ出る。

 気持ち悪い浮遊感の中、視界に広がるのはジオラマと化した道路と建造物達。

 落下していく体。


「申請――ッ」


【ポイント】を消費する事で、一時的な足場を生み出す。

 虚空に浮く地面を思い切り蹴り、袈刃音は真上に跳躍した。


 人間の脚力は、腕力の数倍にもなる。

 故に、鉄筋コンクリートの床ですら容易く破壊する力よりも、数段上の威力を秘めた蹴り。


 跳躍の加速が最高潮に達した瞬間、落ちゆく建物を袈刃音は渾身の力で蹴り上げた。


 激しく砕ける硬い壁面。

 稲妻のような亀裂も瞬く間に周囲に走るが、もう一押し。


「だらぁぁぁぁぁあッ!」


 放たれた【想焔】が高強度の素材を、圧倒的な火力で襲う。

 そして、夜空色の炎はヒビの隙間を駆け抜け、内からも破壊を加速させ――砕け散った。


 危機は去っていない。

 袈刃音という障害が取り払われた今、シャーエイドロードがこの好機を逃すなど有り得ないのだ。


 奴がどう動くかは分かっている。


「響ぃッ、影だ!」


 だから、その対処を彼女に託す。







何か、めっちゃ久しぶりの投稿やった気がする……。



文月です。


1週間空けての投稿で、感覚が中々戻らず、今日まで引き延ばしてしまいました。

すみませんっ。

普通に忙しくて死にかけてました。


実はまだ、悠長に構えていられない状況ではあるのですが。

とはいえ、時間に余裕が生まれたので投稿頑張っていきたいと思います。


そういえば、「カクヨム」での本作の投稿も終わりました。

多分色々な好条件が重なって、想定したより読んでもらえたと思います。

評価よりフォロー数が嬉しかったです。ちょっと自作では見たことない数字になっていたので。


お知らせですが、今回は特にないかなと。

頑張って捻り出すなら、「一応、今ホラーものを裏でゆっくり書いてます」とだけ。


それでは――


【・ご案内】

 下の★★★★★の部分は、読後、ぜひ本作の評価にお使いください。

 ブックマーク、感想などもよければ。


 作者のモチベーションとなります。


 《完了》





【次の話へ進みますか?】

【→はい/いいえ】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ