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第64話ボスと殺り合いますか?

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 一瞬、視線を彷徨(さまよ)わせる。


 ビャクヤは直ぐに見つかった。隣には新奈の姿。

 予想しなかった事態に、険しかった袈刃音の顔が驚きに染まる。


 有り得ない、あの二人には下の階へ逃げるよう伝えたはずだ。

 何故、どうしてここにいる?


 ――いや……待てッ。


 混乱と焦燥が脳裏を侵食する中、袈刃音は直感した。

 これは逆にチャンスかもしれない。


「ビャクヤ!恋を、その子を連れて下にッ」


(おろ)かなっ、思い通りに行かせるワケないで「――黙ってろ!」」


 恋へ再び、その刃を向かわせようとするシャーエイドロード。

 それを背後から急接近して来た袈刃音の拳が妨害する。


 大剣の腹で攻撃を受ける神の使徒に、自らの体重も乗せて膠着状態に。


 敵へも意識は向けつつ、少年はビャクヤを見やる。


「……ふむ」


 青年はこんな状況にも関わらず、何故か袈刃音達と恋を交互に見て立ち止まったままでいる。

 不可解にも、その様子に言い知れない不信感を抱いた。

 ビャクヤは味方であるはずなのに。


 どうしてか彼が敵へ寝返りそうな予感がした。


 知らず、袈刃音と青年の間に緊張が生まれる。

 しかし、それも僅か数秒の出来事。


「分かった、俺に任せて」


 どこか頼もしい微笑を浮かべつつ、ビャクヤは言った。


「……っしょっと」


 青年は恋を肩に担ぐとこちらに背を向ける。

 その去り際、隙を見て袈刃音から強引に離れたシャーエイドロードが、彼の足を止めた。


「ほう、ワタシの邪魔をするおつもりで?」


「悪いね、どうも今日はそういう気分らしい」


「……容赦はしないのですよ」


「捕まえてみなよ。さ、行くよニイナ」


 言って、ビャクヤ達は一階へと向かい始めた。


 それを追おうとするシャーエイドロードの前に、袈刃音は【想焔】を走らせる。


「何回も言わせんな、行かせねぇよ」


「いいえ。通らせてもらうのです、よッ!」


 神の【守護者】は、進路を塞いでいた焔の壁を大剣で振り払うが、そこに生まれた隙を見逃す程袈刃音は甘くない。


 シャーエイドロードを攫うように抱え、壁まで猛進。

 そこに敵を叩き付ける。


 激しい衝撃音の後、壁を突き破って転がり込んだのは隣の部屋。

 受け身を取って立ち上がると、見上げた先にシャーエイドロードの姿があった。


 頭上より振り落とされた大剣を回避し、バールを構える。


「では、もっと速く行きましょうか」


「――!?ッッッッッ!」


 次の斬撃が来るまでの間隙を狙い、敵に反撃を仕掛けようとした時だった。

 影を纏うシャーエイドロードの大剣が、瞬く間に形を変える。


 五発。


 長剣となった影の(つるぎ)から、それだけの数の斬撃が一瞬にして放たれた。

 咄嗟に両腕を前に構え防御するも、少年の肉体に決して浅くない傷が刻まれる。


 しかし、この程度で怯む袈刃音ではない。


「るぁあッ!」


 一歩踏み込み、シャーエイドロードへ拳を叩き込む。

 敵が近くの机や椅子を巻き込みながら吹き飛ぶと、袈刃音は息をついて、また緊張の糸を心に張る。


 既に恋達の姿はここにない。


 あとは敵の撃破するだけだが、一筋縄ではいかないだろう。


 右手のバールを見ると、先程の斬撃によって真っ二つになっていた。

 使い物にならなくなった武器を手放して、再び敵を見据える。


 のそりと起き上がった神の【守護者】が、周囲の状況を確認して溜息を零した。


「逃しましたか……。まぁ、よかろうなのですよ。凝った事をせずとも、アナタから現れてくれたのですから。ねぇ?ミウラ・カバネ」


「……遊戯神の【守護者】、だな?」


「えぇ、ワタシはシャーエイドロード。ご察しの通り、アナタを始末しに来たのです」


 シャーエイドロード。


 昨日のドミエン達と同じ神の【守護者】を名乗る者。

 けれど、その幼い体から静かに放たれる威圧感は、何か別の怪物のようなものを見ている気にさせる。


 袈刃音が両手に灯した【想焔】は、攻撃的な色を思わせる赤に染まった。


 直後、床を蹴り、シャーエイドロードの下へ焔を纏った拳を向かわせる。


 今日何度目かの、有り得ない事が起きた。


 水面へ落ちるかのように、【守護者】の幼い体が自らの影へと沈んでいったのだ。

 敵を見失って、袈刃音は周りにその姿を探す。


 隣と同様、カーテンを締め切った薄暗い部屋だが、そこまで広くはないし障害物も少ない。


 ――どこだ?


 その時だった。

 視界の端に白い何かが映った気がして、背後を振り返ると――そこにシャーエイドロードの姿。


「くッ」


 ギリギリで後ろに跳んで回避するが、敵の不敵な笑みは崩れない。


 心に芽生えた嫌な予感は、すぐさま的中した。


 影を纏った長剣が再び形を変え、短剣に。

 そうして、唐突に足元の地面へ――否、自身の影に突き刺した。


 それはきっと、数々の修羅場をくぐった袈刃音故の直感だった。

 咄嗟に大きく後方へ跳ぶ。


 その直ぐ後、少年の影から剣の切っ先が伸びて来て天井を貫いた。


 冷や汗を額に感じつつ着地する、あと少し反応が遅れていたならば串刺しだったと。


 ――【メモリー】……抽出!


【ギフト】の力によって、過去の感情の一部が呼び起こされる。

 強い負の感情が。


「っらぁッ!」


 袈刃音の投げ付けた暗い焔が、シャーエイドロードを直撃する。

 だが、


「今ので無傷かよ」


 最大出力には遠く及ばない一撃だった。

 とはいえ、あの焔を食らって全く動じていないとは。


 それだけの防御力を持つか、あるいは防がれたか。


「ドミエン達とワタシを同じに見ているのなら、それは控えるのが賢明なのですよ」


「?」


「数字がそのまま力関係を示している、というのでも別にないのですがね。向こうは第七【守護者】、ワタシは第四【守護者】――格が違い過ぎます」


「……っ。ぁあ、道理で……」


 袈刃音は苦笑いを浮かべながら、口の中で呟く。


 攻撃を防いだか、受け切ったか、そんな事は正直どうでもいい。


 問題は、あの程度では敵にダメージを負わせられないという事。

 加えてもう一つ、昨日の三人にはなかった、敵の放つ強い威圧感の理由。


 厄介な話だ。

 それが今の言葉で全て説明出来てしまうのだから。


 けれど、問題はない。

 修羅場は何度もくぐり抜けて来た。


 殺し合いならば、望むところだ。






文月です。

久しぶりのガチバトルシーンです。ワクワクすっぞ!


なのですが……すみません、来週の投稿はお休みさせて頂きます。

ちょっとリアルが忙しくなり始めましたので。



【・ご案内】

 下の★★★★★の部分は、読後、ぜひ本作の評価にお使いください。

 ブックマーク、感想などもよければ。


 作者のモチベーションとなります。


 《完了》





【次の話へ進みますか?】

【→はい/いいえ】

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