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第57話調査を進めますか?

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 目的地への侵入は果たした。


「っし、あとは――」


 響が袈刃音を追って、ここまで無事に辿り着くだけ。


 心配はしていない。

 強く振るえば振るうだけ肉体への負担は大きいが、【剛力】の力がある。

 過去の世界で生き抜いて来た経験も。何より、響がゲーム開始以前より培って来た「武」の力。

 無手(むて)はもちろん、薙刀を持った彼女が、正面から襲い来るだけの不死者に後れなど取るはずもない。


 ――トッ。


 携帯を操作し、アラームを止めた響。

 その周囲には、既に多くの不死者の姿が集まりつつあった。

 しかし、


「ッッ!」


 迫り来る亡者達の中心で、響は構え――次の瞬間、薙刀を一閃。

 それだけで前方にいた屍達が吹き飛んだ。


 無理矢理こじ開けた道へ響が飛び出し、ゾンビの隙間を縫うようにして袈刃音の下へと加速した。

 邪魔をする敵と、近くの敵は薙刀で斬る。斬る。


「ふッ!」


 相変わらずの戦闘能力。

【剛力】で筋力が底上げされたとはいえ、急所を的確に狙った一撃で次々にゾンビが倒れていく。


 無論、今の状態では、やはり常人離れした動きに大怪我の可能性は付き纏うけれど。


 ともあれ、


「お待たせ、袈刃音。そっちは?」


「あぁ、大丈夫。敵とかは今んトコロなし」


 予定通り、響が合流した。

 これでやっと中の探索が行える。


「……早速だけど、響――人が死んでる」


 そう。中へ入った時、一番に袈刃音の目に飛び込んで来たのは、既に事切れた男の姿。


「っ。これは……何、この死に方」


 袈刃音と共に遺体へ近づいた響が、思わず顔を(しか)めながら、そう呟いた。


 恐ろしい死に様だった。


 砕けた壁に血の花が咲き、血塗れの体がその下で、まるでガラクタのように転がっている。

 肉体は潰れ、片方の眼球が眼窩(がんか)から、筋肉ごと引き千切られるように床へ飛び出していた。


 それを「恐らく男だろう」と判断出来たのは、大部分が服装のお陰だ。


「誰かがこの人を殺した。けど、人間じゃ普通出来ない、こんな殺し方」


「……それに死体、これ多分、ゾンビになってないね。血痕がここ以外に見当たらない」


「……」


 仮に、男の亡骸が二度死んだ後だというのならば、もっと広い範囲に血が散点しているはず。

 どこかで死んで、もう一度死を迎えたのだから。

 無論、出血の具合は、不死者になる前の死に方による。

 それに、単に袈刃音達が血の跡を見落としているだけ、という線もあるが。


「そうだな、俺も響の言うと通りだと思う」


「でも、だったら余計あり得ない。袈刃音、これって」


「【守護者】――遊戯神の使徒かも、な」


 確証はないが、可能性は十分高い。


「中、調べるぞ」


「うん」


 異様なほどの静けさに警戒しながらも、二人は玄関を後にし、先へ先へと歩を進めていく。


「誰もいねぇな」


「うん、私の耳でもダメ。近くに人がいる感じがしない。さっきの所、あんな大惨事があったっていうのに……」


「でも、死体はある」


 玄関の遺体以外にも、横たわっている死体が一つ。

 今通り過ぎた場所に倒れているのも含めると二つか。


 いずれも、やはり誰かに殺されていて、()()()()()だ。


「……と、思ったけど。いるね、ゾンビ」


 響の言う通り、少し離れた場所の曲がり角から不死者が現れ、こちらに歩いて来た。

 一体だけだ。無論、数十秒もしない内に彼女の薙刀が振るわれ、血飛沫と共に命を散らしたが……。


 ――死んだままの死体と、ゾンビになった死体。どうなってんだ?


 少なくとも言える違いは、前者の遺体の方が損傷が激しいことくらいか。

 そちらは、神の使徒が関わっている可能性が高い。

 では、もう一方は?


 ルール通り不死者になった者は、一体誰が殺したのか。


「――っ。袈刃音、止まって」


「?どうした?」


 考えながら進んでいると、響が静かに、制止の声を放った。


「出て来なよ、そこに隠れてる人。いるのは分かってるから」


 周囲に人の気配は感じられない。

 しかし、響の耳は、その存在を確かに捉えているのだろう。

 彼女の視線が二時の方向へと動く。


 静寂が続いた。ともすれば、このまま何も起こらないのではないか。

 そんな考えが脳裏を僅かに(かす)める。


 だが、その刹那――


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁァァァアアッッ!」


「「ッ」」


 小太りの中年男が突然物陰から現れ、駆けながら袈刃音達に襲い掛かって来た。

 頭上より振り下ろされたのは、植木鉢。

 男の両手で持ったそれが袈刃音を狙った。


 勢い任せの攻撃を(かわ)すのは、酷く容易だった。

 しかし。


「来るなッ、来るなッ、来るなァア!」


「っぶねッ」


 ――何っだ、いきなり!?PK?


 いいや違う、『アンデッド・ゲーム』はまだ始まったばかりだ。

 殺人での【ポイント】獲得を目的に人を襲うなど、まだ誰も考えつかないはず。


 それに、この男の言動。表情もだが……()()()()()


 男が重そうに振り回す凶器を回避しつつ、袈刃音はその事に気付く。

 おかしい事だらけだ。


 だが、まずは、


「ち、近付くなぁぁあ――うッ」


 手で掴んだ植木鉢を、袈刃音の頭に叩き付けようとした瞬間、男の動きが固まった。

 ゆっくり、袈刃音がその鳩尾に沈み込んだ拳を引き戻す。


「あ、がッ……あ、あ、ぁ…………」


 痛みに目を見開いて、男は震えつつ、開いたままの口から酷く苦し気な声を漏らす。

 そうして、ドサっと、恰幅の良い体が床に伏した。

 両腕で腹を抱えながら悶えてはいるものの、怪我はないはずだ。


 ともあれ、これで落ち着いてくれるといいのだが。


「ふぐっ……ぁ、はぁ、はぁ、こ、殺さ、ないで……ッ」


「殺す?」


「しに、死にたくないんだッ。()()()()()()()くださいぃ……」


「?」


 倒れた男の言葉に、袈刃音は困惑する。


「袈刃音、この人何か知ってるね」


「響……。あぁ、みたいだな」


 新たな謎が、また増えた。


 だが、少なくとも、会話くらいは出来るようになった。

 そして、今のやり取りで、何を訊くべきかは分かったのだ。


 このまま続けよう。


「殴ってすみませんでした。けど、ちょっと話させてください。今、ここで何が起きてるんですか?」


「……は?何が、って……ほ、本気で言ってるのか?君達、どっちかが鬼なんじゃあ」


「鬼?」


「ていうか、何でこんな所に子どもが」


「それは今いいです。それより、その鬼って?詳しく」


「あ、あぁ……えっと――」


 彼はポツリ、ポツリ、記憶を掘り返すようにして、今に至る経緯を語り始めた。






文月です。

気付けばもう直ぐ60話。もう15万字。

そして、もう11月中旬。来週の投稿、頑張らねば……。


今回は特に、お知らせはありません。


引き続きお楽しみ頂ければ、と思います。


【・ご案内】

 下の★★★★★の部分は、読後、ぜひ本作の評価にお使いください。

 ブックマーク、感想などもよければ。


 作者のモチベーションとなります。


 《完了》





【次の話へ進みますか?】

【→はい/いいえ】

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