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第56話建物に向かいますか?

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「――っ?あれって……」


「ゾンビ?」


 袈刃音の言葉を引き継ぐようにして、響は不穏なその単語を口にした。

 生前は会社員だったのだろう、涼し気なスーツに身を包んだ若い男のゾンビだった。


 視界に入った瞬間、嫌な予感が二人の胸を駆け巡ったのは、それがどうにもこちらに向かって来ているようだったから。


「朝のゾンビ共、もしかして、向こうの駅の方から?」


「かもね、確証はないけど」


「直接行って確かめるしかねぇ、か……。じゃ、取り敢えずこいつを――」


「ごめん袈刃音、ここは私にやらせて」


 前に出つつ、バールを正面に構えようとした袈刃音。

 しかし、その(そば)を静かに通り過ぎ、響が不死者へ歩を進めつつ言った。


「響?」


 一度立ち止まって薙刀を肩に担ぐと、彼女は翡翠色の瞳を背後の袈刃音に向ける。


「【ポイント】、早く集めて自分の強化しとかなきゃだからさ。ここからは基本、ゾンビは私に任せて」


 許可を得るというよりは、そう宣言するように。

 あるいは、袈刃音がそれを受け入れてくれるのは分かっているという風に、返答を待つ素振りは見せなかった。


 響は不死者を再び見据えると、アスファルトの地面を蹴って加速する。


「――ごめん」


 薙刀を振り下ろす直前、彼女はそう不死者へ言葉を送った。


 その後は語るまでもないだろう。


 人の気配が感じられない道を、袈刃音は響とひたすらに駆けていく。

 ただ、先に進みにつれ、不死者が数を増やしている気がした。

 徐々にだが、その影を見つける間隔が狭まって来ている。


 口には出さないけれど、響も同じ考えをしているはずだ。

 気のせいか、一瞬そう思ったがやはり違う。


 図書館の近く、そこで袈刃音達の足が急に止まった時にそれが分かった。


 ゾンビが付近に密集していた。


「――これって……袈刃音」


「あぁ、ここだ。ここで何か起こってるんだ」


 相当な数だ。

 目算では数十……いや、百を下回るくらいか。


「ん?」


 異常な光景の中に、袈刃音はふと、さらなる異常を見つけた。

 所々に崩壊した壁と、それが積み上がって出来た瓦礫の小山。

 そして何より、上半身を失くした死体の存在だ。


「あの死体、腰から上が消し飛んでねぇか?いや、一体だけじゃなくて、似たような感じのが結構転がってるけど」


 無論、損壊の程度はそれぞれだ。

 胸から上、腹から上、頭だけが欠損しているものもある。

 いずれにしても、上半身だけが消し飛んで動かなくなった死体が、地面にいくつか横たわっている


「ホントだ」


「何かヤな予感がする、それこそ確証なんてねぇけど」


 けれど、こんな真似が出来る人間などいるはずがない。

 少なくとも、ゲーム初期にはほとんど誰も。

 この人間離れした芸当が可能であるとすれば、それはもしかすると――。


「取り敢えず、調べよう」


「調べるって響、どうやって?」


「見て、袈刃音。あの変死体、ここからだとちょっと見えにくいけど、一定の方向に(つら)なって倒れてる。それを手前の方から奥の方に追って行くと……ほら、あそこ」


「っ!?ゾンビが群がってる?」


 図書館近くでまばらに彷徨っているゾンビ達ではない、別の建物の入り口に集まっている屍達だ。

『アンデッド・ゲーム』開始後の話にはなるが、袈刃音もこの辺りの場所は見慣れている。


 あの場所は確か、建設会社ではなかったか。


「怪しいのはそこ。それに恋達も、駅方面に進んだなら、多分これ以上は進めなかったと思う。むしろ」


「巻き込まれた、か」


「うん。もしそうだとすると図書館か、あるいは……どっちかに逃げ込んだと思う」


「だから、調()()()のか」


 袈刃音の目が、隣の響と合う。

 そうして互いに頷き合い、例の建物を再び視界に入れる。


「出入り口を塞いでる数は精々三、四十くらい。残りは、その手前の図書館近くでバラけてる」


「手っ取り早いのは、俺の【想焔】使っての正面突破だな。流石に響も、この数は一人でやるのまだリスクあるだろ?」


「そうでもないよ。もしかして袈刃音、こういう時の常套手段忘れた?」


 そう言いつつ、響はズボンのポケットに忍ばせていた携帯を取り出し、こちらに悪戯っぽい笑みを浮かべた。


 何をするのか、それを見て袈刃音は(おおよ)その見当がついた。


「囮か」


 返答がないという事は、それが正解である証。


 彼女が視線を落とし、画面を慣れた手つきで操作し始める。

 素早い指先の動きの後、最後にもう一度タップ。


 アラーム音が携帯から大音量で流れ始めた。


 ――その甲高い音が、不死者達の耳へ即座に伝わったのは言うまでもない。


「集まって来た。袈刃音は先に行って、中の安全確保よろしく」


「分かった、向こうで待ってるぞ」


「うん、囮は任せて」


 響は頭のヘッドフォンを首に下ろすと、亡者達を誘導するように移動を始めた。

 袈刃音も自身の役割を果たすために動き出す。


 既に不死者達は、彼女の携帯から発せられる音の方へ、吸い寄せられるように歩いて行っている。

 それにより、生ける屍の集団に阻まれていた道に、隙間が生まれる。


 袈刃音は迷う事なく地を強く踏み駆けた。


 速度を増していきながら、少年はバールを握る力を強める。

 響は確かに、ゾンビ達を邪魔な場所から離れるように手を打ってくれた。

 とはいえ、音が届く範囲にも限度がある。


 出入口の方には、まだ最初の半分近くが残っていた。


「っふッ!」


『アンデッド・ゲーム』で袈刃音が獲得した膂力は、時を越える度に陰で引き継がれ、今回の世界で開花した。

 その圧倒的な暴力を――不死者共に向ける。


 一瞬にして薙ぎ払われたゾンビの集団。


 袈刃音は警戒しつつ、建物の中へと入っていく。







文月です。

★評価、ブクマ、いいね、ありがたや~。


投稿に関するお知らせを!

→簡潔に。すみませんっ、再来週の投稿ですが、もしかすると難しいかもしれないです。


(詳細は↓)

文月が書きたくて、閑話だけ書いている連載・『第七魔眼』の方の投稿をしたく、はい。

本当は並行して書きたいんですが、文月の書くスピード的にちょっと厳しいかなぁ……と。

ただ、「もしかすると」です。出来る限り、再来週も投稿したいと考えてますので、頑張ってみようと思います。


長くなりました。

では、引き続き本作をお楽しみ頂ければと思います。


【・ご案内】

 下の★★★★★の部分は、読後、ぜひ本作の評価にお使いください。

 ブックマーク、感想などもよければ。


 作者のモチベーションとなります。


 《完了》





【次の話へ進みますか?】

【→はい/いいえ】

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