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第54話【守護者】のもとへ向かいますか?

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「……はい?しゅご、しゃ?」


 言葉の意味を理解出来ず、眉を寄せてビャクヤに尋ねた新奈。

 すると、ビャクヤはそんな彼女一瞥し、相変わらずにこやかな顔で前の方を指差した。

 ちょんちょん、と虚空をつつくように。


「後ろ。確か、さっき買い物したところより奥にある駅って、人が大勢いるんだっけ。そこでゾンビが増えてこっちに流れて来てる。それは分かるだろ?ニイナも数分前に俺と見たもんね。で、ここからが本題。――()()()()()()()()()()()()()()()()


「ッ!?」


「ニイナの話じゃあ、向こうは人通りが少ないはず。だったら、ゾンビは発生し辛いのにね。変だ」


 ここはショッピングモールを出て直ぐの、なだらかな下り坂が続く歩道だ。

 坂の先の様子は、離れた場所からであっても、新奈の眼鏡のレンズ越しにもはっきりと分かる。

 ――遠くの方で不死者と思われる者達が、人を襲っていた。多分、もう誰も助からない。


 新奈は混乱して、ビャクヤを上目遣いで見つめる。


 ここに来るまでの道すがら、彼からゾンビがどういう風に動き、数を増やしていくのかは聞いた。だからこそ、この状態は異常だ。


「ど、どういう事ですかビャクヤさん!何で……」


「さぁ?まぁ、何かあったんだろうね」


「何かって……そんな曖昧な。知ってる風な感じだったじゃないですか」


「知ってるっていうか、予想。それ以上は分かんないな、今のトコロ」


【守護者】、という単語が気になるが、眼前の青年は何も喋ってくれそうにない。

 そもそもの話、ビャクヤは一体何者なのだろうか。




「じゃっ、取り敢えず見に行ってみよっか。その何かが起こってる場所に」


「はぇ?……えっ、い、行くんですか!?あの向こうに。何でっ」


「気になるじゃんか。ほら、置いてくよニイナ」


「へ?あ、いや、ちょっ、待ってください!ビャクヤさん、私まだ行くって一言も……あの、ちょっと――!」


 結局、新奈がどれだけ言ってもビャクヤが引き返す事はなかった。

 ともすると、この状況を楽しんでいる、というよりは散歩中の寄り道感覚で、彼は先へ進んでいるように新奈には見えた。

 実際、こちらを襲おうとしたゾンビはビャクヤに容易く排除されて、彼女が思う程危険な道のりではなかったが。


 夏の暑さも忘れ、進む度増えるゾンビに嫌な予感を覚えつつ歩く。


 そして、


「あぁ……どうしよう、着いちゃったぁ。絶対ここだよぉ…………」


「そうだね、ゾンビが密集してるし。この建物かな?五、六、七……九階建てか」


 見たところ、どこかの企業の職場となっている場所のようだが、その周辺で百に届く数の不死者がひしめいていた。

 一体、ここで何が起きているというのだろう。


 新奈としては、原因の場所が分かったならば、それで良いではないかとも思う。

 とはいえ、隣の青年はそれで満足などするはずもない。


 にこりと、ビャクヤは新奈に笑みを向けた。


「よし、中に入ろっか?」


「……はぁ、言うと思いましたよ」


 半ば諦めたような新奈の心情など気にした風もなく、ビャクヤは生ける屍達の中を進んだ。

 無論、例によって、新奈はその後をついて行くだけ。


 果たして、二人が目的の建物内へ辿り着いたのはそれから間もなくの事だった。


「ふむ、思ったより静か。というか、静か過ぎるな」


「何か、変ですよね。平日なのに……。それに、明かりも消えててちょっと薄暗いですし」


 何もない、ビャクヤの言う通り、それ自体が既に異常だった。人の影すら見当たらない。

 一応、死体ならば盛大に血を撒き散らして転がっているが。


「うーん……情報が足りないな。もう少しだけ、調べてみるか」



「いえ、その必要はないのですよ」


「「?」」


 不意に、どこからか、少年らしき声が聞こえ、ビャクヤにそう告げた。

 新奈は周囲を見渡す。


 すると、近くの物陰から、見知らぬ少年がおもむろに姿を表した。

 一瞬、ほんの一瞬だが、ビャクヤはポカンと口を小さく開けたまま固まる。

 しかし、次の瞬間には「ふっ」と、両の目蓋は下がり口元が三日月になった。


「はは、なるほど、確かに調べなくても答えは大方分かるな。君か、シャーエイドロード」


 そうして、ビャクヤは静かに、少年――シャーエイドロードを見据えた。


「えぇ。言ってしまえば、全くその通りなのですよ、――」


「おっと、今の俺はビャクヤって仮の名で通ってるんだ。呼ぶならそっちで」


「ふむ、なるほど、分かりました。では、当分はそちらの名で呼ぶことにするのですよ」


「そうしてくれると助かる。……あぁ、それとこっちの新奈()には手を出さないように。俺のお気に入りなんだ」


「そうなのですか?では、そういう事なら、顔を覚えておかないとですね」


 状況を理解出来ないでいる新奈を置き去りに、二人の会話が進んでいく。

 とりあえずは、何だか命拾い?はしたようだが、それ以上は何も分からない。


 けれど、とても話に割り込める空気ではなかった。

 仕方なく、彼女はそのまま彼らのやり取りに耳を傾ける事にした。


「ところで、何故地上に?もしかして、ビャクヤさんも遊戯神様に命令されたとか」


「いや、ドミエン達が【トゥラヌアの短剣】を借りたまま下界に降りて、()られたって聞いたもんだからさ。剣の回収に来ただけ。【守護者】としては、別段何も命令されてないよ」


「そうなのですね。てっきり、ビャクヤさんもミウラ・カバネの抹殺を命じられたのかと……。実はワタシ今、その準備の途中なのですよ」


「準備?」


「この一帯を巻き込んだゲームを、少し考えておりまして。とはいえ、いきなり大規模に行うと失敗するので、この建物で実験して様子見を」


 話の全貌は分からないまでも、新奈は、自分が今何か途轍もなく危険な会話を耳にしているのだと悟った。


 心なしか、夏なのに寒気がした。


 彼女を置き去りに話は進んでいく。


「随分と入念なんだね、シャー」


「相手は【守護者】を殺せる人間ですから」


「ふーん、あんまり気にしてなかったけど、考えてみればそりゃそうか、あのドミエン達を……。ミウラ・カバネ。まぁ、うん、頭の片隅にでも入れとく」


「ちなみに、これからどうするおつもりで?」


「?」


 ふと、シャーエイドロードがビャクヤにそう尋ねた。


「そうだな……もう少しだけここにいるよ」


「よろしいのですか?短剣を回収するのでは」


「それはゆっくり探せばいい。その実験とやらもどんなのか気になるし――それに、君も一人は寂しいだろ?シャー」


「……ふふっ、お優しいですねビャクヤさんは」


「まぁ、ね」


 どこがだろう?と、新奈は思わず、呆れた目でビャクヤを見た。

 相変わらず飄々(ひょうひょう)とした態度で、こちらの意見なんて気にも留めていない。


 そうして、また彼に振り回されるのだろうなと、心の中で嘆きつつ、溜め息だけが彼女の口から漏れたのだった。






文月です。

色々試してみたのですが、PCが治らず。多分寿命(?)なのだと……。


スマホで書くなんていつ振りやろか。


しばらく、不便ですが頑張りますっ。

引き続き応援頂ければと思います。


今回は特にお知らせはありません。

次回も遅れず投稿出来るかと。



【・ご案内】

 下の★★★★★の部分は、読後、ぜひ本作の評価にお使いください。

 ブックマーク、感想などもよければ。


 作者のモチベーションとなります。


 《完了》





【次の話へ進みますか?】

【→はい/いいえ】

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