第53話ビャクヤと行動しますか?
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――同時刻。
「あ、あの……探し物があるんですよね?ビャクヤさんは」
一条新奈は困惑していた。
理由は至って簡単だ。
イチジョウ・ビャクヤ。昨日の夜、ゾンビに襲われた自分を助けた眼前の青年である。
未だに信じられないし、信じたくもない話だが、敢えて言おう。
もうすぐ街が不死者で溢れ返る、らしい……。
そんな中で、彼は探し物があるようで、それに新奈も付き合うことになった。
というより、逆らえば、今度は自分が昨夜のゾンビのように消し飛ばされそうで、そうするしかないだけだ。
故に、渋々ながら道案内をしていたのだが、
「その、何を探してるんですか?」
「んー?うーん。剣、かな。短剣」
「えっと、こんな所にあるんですか。ショッピングモールの洋服売場なんかに」
「ないよ。何で?」
……訂正しよう、一条新奈は今、人生最大の困惑の最中にあった。
何故って、先程からビャクヤは、吊るされた洋服達の前でかがんで、熱心に服なんかを選んでいるのだから。
「うん。これと、これ……かな」
「って、違うでしょ!?刃物探してるのに、何で着る物探してるんですか!遊んでるんですか、私を弄んでからかって楽しんでるんですか!いい加減泣きますからね、ギャン泣きできますからね私ッ」
「はは、駄々っ子みたいだねニイナ」
「キレてるつもりなんですけどね!?アナタの所為でッ!」
朝から、ゾンビと何度か遭遇した。というか、内三回は噛まれかけた。
しかも、しかもだ。襲われてこっちは必死なのに、この男はそれを見て呑気に笑っていやがったのである。
新奈が噛まれるギリギリまで助けが入ることはなかった。
それでも「探し物が終わるまで」と、我慢して、我慢して、ここまで我慢してやって来たらこれだ。
身勝手とマイペースと、あと相変わらず自分の扱いが、あまりにも酷い。
「別に遊んでる訳じゃないけどね。服選びは大事だろ。……ほら、こんな白い外套とか、ここじゃ異質過ぎる」
言いつつ、試着室から出たビャクヤは、外套と元々着ていた衣服を新奈に差し出して見せる。
「目立つのは良くないんだ、服装はこっちに合わせなきゃ」
「た、確かに、さっきより見た目は違和感ないですけど……」
「なら問題ないね、行こっか」
ビャクヤが試着した服のまま歩き始める。
「?あれ、支払いは……。というか、ビャクヤさん、値札外してませんか?」
「ぁあ、あの紙?邪魔だから捨てたけど」
「何やってるんですか!」
「いいじゃん、俺これ着て行くし」
「い、いや、そう言う問題じゃ――」
支払いはどうするつもりなのか、そう聞こうとして新奈は気付いた。
まさか、ビャクヤは、
「盗むつもりですか?それ」
「どうせ、もう直ぐそれどころじゃなくなるんだ。この世界のルールなんて、もう気にしない方がいいよニイナ」
「ッ!」
日常がいよいよ、終わりに向かいつつあるという事だろうか。
彼の言葉と表情は、まるで「諦めてその未来を受け入れろ」と新奈に告げているようだった。
そう、昨日と同じように。
寒気がした。
「さっ、行こ――」
「だ、駄目です」
けれど、
「……は?いや、だから、もうゲームは始まってて」
「分かってます。……分かってますけど、でも――お金は、ちゃんと払わないと。それが本当のルールじゃないですか。その、なので払います、私」
弱々しくも、新奈は決してその意思を譲ろうとしなかった。
沈黙が生まれ、その間にビャクヤは何を思ったのだろうか。
新奈には分からなかったが、ただ、「いいよ、分かった」と彼は目を細めて静かに答えた。
二人はショッピングモールを後にし、駅方面から離れていく。
ゆったりとした足取りで進むビャクヤの後ろを、新奈がついていく。
「――【トゥラヌアの短剣】」
「?」
「俺が探してる短剣の名前だよ、ニイナ。【トゥラヌアの短剣】。半端じゃない性能でね、どんなに硬い物質でも貫き、あるいは切り裂ける」
「何でも、ですか」
「そう、何でも……神以外は。つまり、それを使えば誰だって殺せるし、何だって壊せる。俺の知り合いが、例の短剣を持ち主から借りたんだ。でも、そいつが死んじゃってさ、短剣をこの辺りで落として今もそのままなんだ」
思いもしないタイミングで明かされたビャクヤの目的に、新奈の思考が止まる。
しかし、それも数舜の出来事。
直ぐに頭が回り始め、彼の言葉の意味を理解する。
「えっ、じゃあ、そんな凄い物を誰かが拾ったりしたら……」
「拾った人間にもよるんだけどね、ソイツが独り勝ちして――このゲームのバランスが崩れる。……まぁ貸した方は気にしてないし、遊戯神も放任しているみたいだ。面白ければそれでいいんだろ、多分」
「……」
「けど、それはフェアじゃない。俺は公平なゲームを望んでるからね、ちょっと介入した訳」
どう返していいのか、戸惑った。
いや、そもそも、
「あの、何で今そんな話……」
「?さっき、何探してるのか訊かれたから。返事」
「今ですか?」
「今だね、今したくなった。ニイナには特別に」
こちらに振り返り、ビャクヤが言う。
特別、その言葉の意味が理解出来ず、新奈は首を傾げた。
どういうことか尋ねても、眼前の青年は「さて、どういうコトだろーね」と再び歩き始めたが。
「まぁ、とはいうものの、だ。短剣は今直ぐに、絶対回収しなきゃいけないものでもない。ていうか、砂漠の中から宝石を見つけるような作業で、多分見つかんないから。俺は気長にまったり探すんだけど――ん?」
「どうしたんですか、ビャクヤさん」
「……へぇ、この感じ、この近くに【守護者】がいるのかな」
文月です。
思ったより長くなったので、話は次回に回します。
それと、ちょっとPCの調子が良くないので、これ以上悪化すると次回投稿は少し遅れるかもしれないです。治るといいなぁ。
ちなみに、今後の予定を活動報告の方に載せました。そんなガチのじゃないですが、はい。
少し気になった読者様用ですね、あれは。
【最後に】
50ptやったー!わーい。
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《完了》
【次の話へ進みますか?】
【→はい/いいえ】




