第48話追跡者を炙り出しますか?
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藍刃愛羅。かつてその手で殺めた少女の名を、袈刃音は確信を持った声で呼んだ。
言葉とは裏腹に、返事は返って来ない。
耳に届くのは周囲に潜む虫達の鳴き声だけ。
「ん?藍刃……って、確か前に袈刃音が」
「昼前に、入って来そうなゾンビ共を殺しがてら目立つように動き回ってた。藍刃さんが俺の知ってるままの藍刃さんなら、見つけて絶対に後をつけて来るからな。廃工場まで行くって話は、近くに隠れて聞いてたろうし」
納得して、響は周囲の様子を目を動かして見回すも、愛羅の姿はやはりない。
仕方なく頭にかけたヘッドフォンに指を伸ばす。
だが、
「出て来ない、か。じゃあ私の耳で――」
「いや、いい、自分から出て来てもらう」
「え?」
響の疑問の声を他所に、袈刃音は入り口に立て掛けていたままのバールを掴む。
そうして鋭利な先端を首元の皮膚に軽く押し付けた。
曲がりなりにも、藍刃愛羅が袈刃音に向ける思いは『愛』と呼べるもの。
ならば、彼女を呼び出す方法は至極簡単だ。
「ちょっ、袈刃音――」
「こんな工具でも、力を入れて滑らせれば頸動脈はバッサリいける。三つ数えるうちに藍刃さんが俺を止めるか決めてくれ」
かつて愛羅を終わらせた時のように、袈刃音自らが囮となればいい。
「カウント」
「――ダ、ダメッ!」
数え始めるよりも前に、焦燥に駆られたようなその叫び声が少年の凶行を引き留めた。
近くに直立する一本の樹木に袈刃音と響の視線が向かう。
木の幹に左手を添え、その隣から右半身を覗かせて立っていたのは藍刃愛羅だった。
思ったよりも早かった。
……いや、彼女が自分へ向ける思いの強さ、その認識が甘かったというべきか。
ただ、愛羅の反応を確かめて確信した。
説き伏せるのは容易だ。
その証拠に、ほら――冷静さを取り戻した愛羅は以前と同じ風に慌てている。
「ぁっ、か、袈刃音君。ぇえとっ、その……ッ。袈刃音君をさっき、偶然見つけたから私――」
「嘘付かなくたって知ってるよ、全部」
「え?」
「俺を探して、見つけて、それで後つけて来たのも。霞雅の奴に俺を虐めさせたのも、何でそんなことしたのかも。全部知ってる」
「――ッ!?」
愛羅の呼吸が、一瞬死んだ。
驚愕が激しい動揺へと変わる。
思わず逸らそうとしたその目は、しかし、袈刃音に鋭い眼差しに捕らわれ逃れる術を失った。
「な、何で、バレて……ッ」
後退る愛羅が、掠れた声でやっとそれだけ言葉を絞り出した。
「分かるに決まってるだろ、ずっと前から知ってたんだから」
文月です。
すみません、今回は時間がなくて短くなりました。
書き切れなかった分は次回に回します。
それと、『第七魔眼』のほう。
お読みになられている方いらっしゃいましたら、すみません。
今、閑話書いてますが、次話投稿は少々お待ちを。
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