第47話追跡者をおびき寄せますか?
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【メモリー】の一部を見た響は、あれからしばらく寝込む羽目に陥った。
不死者達との戦いによる疲労の上に、記憶共有に伴う脳への過負荷が重なったのだと思う。
ただ、数時間もすれば目が覚め、問題なく動けるようになっていた。
「本当に、もういいのか?」
昼過ぎ、「さくらい」の庭に出た袈刃音は、隣を歩く響を気遣うように尋ねた。
「ん、もう大丈夫。こんな時に休んでらんないし」
「無理は」
「ちょっとだけしてる」
「だよな……ごめん」
「はは、気にし過ぎ。何回もいいって、大丈夫って言ったじゃん」
響は軽く笑い飛ばそうとしているが、そうもいかない。
あれは袈刃音が事前に予測しておくきだったし、正直、もう響自身が許せば済む問題ではなくなった。
歩を進めながら、袈刃音は溜息交じりに言葉を返す。
「お前の周りは気にしてるだろ、響」
「?私、袈刃音が何かしたって言ってないけど」
「俺も言ってねーよ。けど、だからこそ俺が何かしたんじゃないかって怪しまれてるよ今。恋……だっけ、一番警戒されてる」
もっとも、理由は何となく察している。
響を見るあの少年の態度。さらに、袈刃音に向けた嫉妬の目は霞雅のものと似ていた。
無論、奴と比べれば可愛いものだが、
「そっか……袈刃音が信用されてないのは困るなぁ。これから助け合わないと駄目なのに。分かった、後で大丈夫だって話しとく」
「いや、いい、多分逆効果だから。自分で何とかする。それより今はこれだろ?」
「……だね」
途中で話を切り上げ、二人は「さくらい」の門の前で立ち止まり、敷地の外に視線を向かわせる。
門の手前にゾンビの死体が数体、距離をあけて転がっていた。
体に被った赤い血は、既に水分を感じさせないほどに乾いている。
右手に見える下り坂の方に注意を向ければ、両手で数え切れない数の不死者達。
皆、陽炎が揺らめくアスファルトの地面の上で、神から与えられた仮初の生を終えていた。
「お前が休んでた間にちょっとこの辺り見て来たけど、やっぱかなりいた」
「神の使徒。ゲームの進行が早まってるの、そいつらの所為なんだっけ。これも、その影響ってことかな?」
「分かんねぇ……けど、ここに来るまでは、人通りが多い場所じゃなきゃゾンビに出くわすなんてなかった。ここも、そんなに人が集まる所じゃねぇだろ」
「うん。なら、この数が徘徊してるのって――変だね」
「……今日、もっと遠くの方まで行って見て来るよ」
もしかすると何か分かるかもしれない
一応、日暮れまでには帰る予定だが。
「一人で行くの?じゃあ私も」
「いや、響は残ってた方がいいだろ。もし何かあったら、ここの全員を動かせるのお前だけなんだからさ。俺は……ほら、分かるだろ?」
「ぁあ……はは、それ言われると反論しづらいなぁ」
頬を人差し指で掻いて響は苦笑いを浮かべる。
自覚があるのだろう。実際、これまでの世界では、彼女は十七歳で中規模の集団を数か月間に渡って率いていた実績がある。袈刃音にはない才能だ。
「でも、未来の予測が難しい状況だもんね。分かった」
「助かる」
「ん」
そこで会話が途切れる。
しかし、束の間の沈黙を破ったのも響だった。
「……ねぇ、袈刃音。袈刃音の幼馴染の子、一緒に来てないよね?【メモリー】の内容、飛び飛びだったから分からなくて。ここに連れて来なくて大丈夫だったの?」
「それは……一緒にいる方が危ないと思ったから」
「でも敵は」
「分かってる。増えてるし、正直かなりヤバい状況なのは。実際、今のままじゃ駄目なのはそうだけど」
「けど?」
「協力してくれる奴がもう一人旭に付けば生存率が上がる」
「協力、って……!まさかクロノさんをッ?」
袈刃音は首を横に振って、驚く響の脳裏に過った考えを否定した。
クロノは自分の記憶を共有する数少ない仲間だが、時花を救う事が本懐だ。
元々、過去に袈刃音を送る対価としてそれを手伝うという契約でもある。まだ対価を支払ってもいないのに、クロノが力を貸してくれるとは思えない。
神としての力も制限されているのもある。
だから協力者は、
「協力者はアイツとは別にいる……っていうか、正確には、今からなってもらうんだけどさ」
「え?」
いや、そもそも口で言うほど健全な関係にはなれないだろう。
相手はどこまでも油断ならず、ともすれば、いつ敵へ変貌を遂げても不思議ではない存在だ。
「――ついて来てるんだろ?藍刃さん」
文月です。
やはり投稿は未定にしておくものですね。
まさか今週二度目の投稿が、ギリギリで間に合うとは……。
では、引き続き本作をお楽しみくださいっ!
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